二輪車新聞社便り

2017-01-30

バイクの実車力

バイクは車や自転車と同じく道路を走っている。身近なのか、そうでもないのか、バイクは世間からどういう見られ方をしているのだろうか。

乗る人、乗らない人。乗っていた人、乗れない人。興味ある人、無い人。好きな人、嫌いな人…様々な人がいるだろうが、手に触れられるところにバイクが置いてあったら、人々はどんな関心を示すのだろうか。

最新型ではないが、1000ccのスーパースポーツモデルを所有している。ほぼ持て余しているといっていい性能であり、年に数回しか乗らないのだが、たまに味わうとてつもない動力性能が魅力ゆえに手放せず、車検費用やバッテリー上がりと闘う日々。

先日、知人がフットサルの大会に出場するとのことで、好天だし持って行く荷物もないので軽装で1人観戦に愛車で出かけた。

ほどなく到着。行きなれた施設だったが、ヘルメットを取るまでは、施設関係者にも自分だとはわからなかったようで、脱いだときに「バイク乗るんですね。大きいですね」と言われる。

休憩中だった知人がチームメンバー達と登場、みんな20代から30代。バイクを見て「おぉー、でかい」「ホンダですか。自分の車(四輪)もホンダです」「これ、排気量は?」「またがっていいですか?」など、次々に質問が飛ぶ。排気量は1000ccと答えると、「軽自動車より大きいんですか!」、最高出力はクルマのミニバンと同じくらいと伝えるとさらに驚いていた。

タンデムステップを指して「これは何ですか」。「バイクは、どうやって操作するんですか」と聞かれ、一通り説明すると、若い人はクラッチが良く分からず、そして左のレバーがブレーキでないことが驚きだったようだ。「タイヤすごく太いですね。なんで丸いんですかね」なんて、しゃがんでタイヤをさすりながら質問する人もいた。

今回乗っていったのは「スポーツバイク」。フットサルという「スポーツ」を愛する人が集まる今回の施設。体を使って激しくスポーツする彼らに「バイクもけっこうなスポーツなんだけどね」と話してみても、あまりピンとこないようで、やはり移動の手段としか見ていないようである。四輪も含め、エンジンのある乗り物でスポーツする、または乗ること自体を楽しむという概念が無いようにも感じられた。あくまでスポーツは「自分の体で」であるようで、日本のモータースポーツの現状を見ても、そう捉える人が多いのかもしれない。

バイクで行くだけで、こんなにも人から話しかけられる。大型車ということもあるのだろうが、バイクの実車の「惹き」の力は結構なものだと実感した。

以前、娘を保育園にバイクで連れて行った時、園児の盛り上がりもかなりのものであった。後ろに乗る娘をうらやみ、タイヤやカウルにさわる子供も多数。エンジンをかけると、男の子なんか耳を両手で塞ぎながら、笑いながら飛び跳ねていた。娘の「ドヤ顔」もなんだか微笑ましかった。純粋な子供がこれほど興味を持つのだから、バイクの実車の「惹き」の力というものは相当あるのではないかと思う。

低迷が続く二輪業界であるが、バイク自体の魅力が無くなったわけではなく、乗らない人にとってもバイクは目を引く魅力的な乗り物であると思われる。ただ、バイクが身近でなく、また移動以外の楽しみなど知らないのかもしれない。

バイクに乗る。

書けば短いが免許取得、車両購入、各種装具などの購入、保険の加入、駐輪スペース、人によっては家族の説得と、走り出すまでに相当の金額と手間がかかる。そして「バイク乗り」となってからも、車両の維持費などの負担が待っている。そして、決して安全とは言い切れない側面もある。バイクに乗ることを踏み出させるためには結構なハードルがある。

それらを超えても今度は乗り続けるということが、また難しいともいえる。維持費などの経済的なもの、置く場所がないなどの物理的事情などもあるが、移動の手段だけでない楽しみを求める層にとっては「乗る頻度の低下」、これこそが乗っていたバイクから降りる原因なのではないかと思われる。

バイクを楽しむ時間と場所、車両の性格にもよるだろうが、オフロードモデルやツーリング系などは比較的楽しみやすいといえるが、スーパースポーツモデルなどは、公道では難しいことも多いと思う。また、技量の向上が思うようにいかず、危ない体験をしてバイクを降りる人もいるだろう。

バイクの「惹き」自体には相当な力がある。これは製品の力だ。では、興味のある人を「バイク乗り」に、降りた人を「再び乗せる」ためには、ソフト面での充実が大事だと思われる。楽しみ方や場所の提案、安全面や技術向上のサポートなど、「所有してから」のことが大事だと感じる。

そして、何よりも「バイクに楽しそうに乗っている人が増えること」。これこそが大事なのではないかと思う。魅力的な工業製品というだけでなく、それなりのウエアをまとい「楽しく、カッコ良く乗る」。そんなバイク乗りが持つ「惹き」の力は相当高いと思うからである。

二輪車新聞編集部 記者 猪首俊幸