二輪車新聞社便り

2017-07-10

「亭主、名馬で留守がいい」

我々、人間のような哺乳類などと違って、爬虫類や魚類は死ぬまで成長し、大きくなるそうです。大きいヤツほど高齢ということでしょうか、ずぅーっと成長しつづける魚類や爬虫類ってのは、我々哺乳類からすると、大きいお爺さん、お婆さんという感じでやはり不気味な感じがいたします。

我々人間はある程度で成長も止まり、ピークを超えるといろいろな面で力や機能が衰えていってしまうものであります。だから、自身の肉体で競技するスポーツ選手などは、どんなに優秀な選手でもいずれは引退を迎えてしまう宿命にあるといえます。

しかし、全く衰え知らずのスピード、技量を維持している哺乳類の方が存在する世界があります。何を隠そう、この二輪業界であります。

私、この世界に入って20年が経とうとしておりますが、速い先輩方はずーっと速いのであります。5060代の中にはお孫さんもいるような二輪ジャーナリストの方もいらっしゃいますが、ヘルメットの下の顔の皺なんぞ、全く想像できないような走りであります。

これは、人間の出せる力のなかでやるスポーツと違い、エンジンなどを使うモータースポーツならではの現象だと思われます。モータースポーツも体を酷使するかなりハードなスポーツであります。何より、人間が出せない力やスピードの領域で、それを人間が操るという特殊なものでもあります。レースの世界では通常のスポーツのように引退もあります。しかし、競技の一線から引退しても、速かったり上手だった人が、昔より下手に走るということは、そうそうないでしょう。

逆に経験が活きる世界でもあります。スタミナやスピードの面で勝る“若いやつら”にオートバイでなら、互角以上の勝負が歳をとってからでもある程度できるのでは、と業界の先輩方を見ていると思ってしまいます。これは加齢を嘆く中高年には大きな魅力なのではないでしょうか。

業界の先輩方の走りは強烈であります。衰え知らずなその走りは、ある種不気味ですらあり、例えるならオオトカゲやオオナマズでありましょうか。

レースのライダー達はマシンをセッティングし、狙ったタイムや自分好みの走りを実現するため、車両を自分に近づけていきます。しかし、試乗会などでは、先輩方は全くのノーマル状態でその日初めて乗る車両であの走りであります。乗る人間がその膨大な引き出しと技量を持って車両に対応し、そして、個人的好き嫌いはさておき、テクニックを駆使し、様々なやり方で走らせ、バイクの素性を探り記事、写真で伝えるのであります。

ある方は「俺たちもいろんな経験したし、けっこうな授業料も払ったけどね」、またある方は「バイクを労わったり、タイミングを計ったりしないといけないときがあるかなぁ」などと申されます。

あくまでも過信は禁物ですが、二輪車の特徴の1つとして、体が衰えてきても、若いときに近いフィーリングで楽しめる魅力があるんじゃないかと思います。そして、何歳になっても身体に無理のない範囲で更に走りを高めていく楽しみも残されていると思います。歳をとると、周りのテクノロジーも進化して、優秀な電子制御を積んだ車両や、高性能なタイヤも出てきたりしています。歳をとりながらも、そういう“未来への期待”ができるのも二輪の魅力なのではないかと思います。

でも、中高年が二輪車で事故を起こすと、とたんに「それみたことか」になります。「お父さん、もう辞めて。若くないんだから」なパターンです。「二輪車に年齢は関係ない」と言いたいところですが、歳相応に渋く、落ち着いて、たまに経験を活かしてオオナマズになったりしながら、無事に帰宅がいいんじゃないでしょうか。「無事、これ名馬」。哺乳類らしく名馬で行きましょう。

二輪車新聞編集部 記者 猪首俊幸


和歌山利宏さん6?歳 すでにお孫さんがいらっしゃいます。


宮崎敬一郎さん58歳。たいていバイクを地面にこすり付けるような走りです。(写真=南孝幸)


太田安治さん59歳。還暦目前とは思えない走り、そして体型。(写真=柴田直行)