二輪車新聞社便り

2018-07-30

ライダーはスーパーアスリート ライダーにもっとステイタスを

どの世界でもそうなんでしょうけど、それを一生懸命やっている人や、趣味で楽しんでる人たちの常識は、そうじゃない人からみたら、「知らない…」「そうなの…」ということが多く、二輪車業界なんて、その最たるものという気がします。

日本でも、サッカーのメッシは知っていても、バイクのロッシは知らない人が多いでしょう。

先日、テレビを見ていたら元イタリア代表のサッカー選手、デル・ピエーロが出ていました。世界的に有名なこの、デル・ピエーロが、250ccクラス世界チャンピオンになった故加藤大治郎さんにサインをもらいに来たって話は、二輪車業界では割と有名です。でもこの話は、日本の世間一般にはあまり知られていません。何より、二輪の選手のステイタスが欧州などでとても高いことを、日本の人達はほとんど知らないのです。世界的な二輪車トップメーカー4社がある日本なのに。

私はサッカーも好きで、テレビで海外の試合も見ることもあるのですが、スペインリーグのバルセロナ戦で、ちょうど観戦に来ていた、当時モトGPクラス世界チャンピオンだったJ・ロレンソ選手がカメラに抜かれた時がありました。私は「おおぉロレンソ!」と世界的なサッカーの試合で二輪の選手が抜かれたことに、凄く喜んだのですが、そのときの日本側の解説や実況は「誰でしょうね」みたいな感じでした。

ヨーロッパのTVカメラは、二輪の世界チャンピオンを画面に抜くんですよ。日本でサッカーの天皇杯の決勝を元世界チャンピオンの青山博一さんが見に来ても、日本のTVカメラは果たして抜くのでしょうか。

欧州では二輪ライダーも一流のアスリートとみられているようです。

その昔、トッティやセードルフといった有名なその国の代表経験のあるサッカー選手も自身の名前を入れたレーシングチームを125ccクラスに参戦させたりもしていました。二輪は、有名なサッカー選手も興味を持つ世界なんですよね、向こうでは。日本のサッカーは今でこそ、ワールドカップ出場がほぼ当たり前のレベルとなっていますが、優勝となるとまだ難しいのが現実といえるでしょう。他の競技に目を向けてみても、オリンピックで金メダル=世界一となれば大変な騒ぎです。

そんな中、毎年日本のメーカーが最高峰クラスで世界チャンピオン争いをしているのが二輪です。日本のスポーツとしてもこんなに強いところもないでしょう。

私は埼玉県朝霞市に住んでおりますが、世界を舞台に戦い、その中でほぼ最強ともいえるHRCが市内にあるとは、市民はあまり知らないでしょう。

ヨシムラのライダーの津田拓也選手は、鈴鹿8耐の出場の前に「8時間も走るの? でもバイクだから楽だね」と一般の方に言われたことがあるといいます。レースマシンに乗るために体を鍛えているなんて、一般人には理解できないんでしょうね。

だいたい、ロードレースで時速300キロ超とか、バンク角60度以上でヒジ摺りとかの凄さが伝わらないですよね。私なんざは自分もサーキットを走ったりするので、速い人の走りを間近で体感すると、それをやれてしまう人間の凄さに、驚きます。抜かれながら後ろから見ていて「この風圧と減速Gの中、そんなことが出来るんですね」とアクセルをゆるめながら「私はやめておこう」と思っています。

しかし、単純に凄いし、かっこいいですよね。普通の人が出来ないことをやってのけるって。相当に体を鍛えた者の仕業ですよ。昨年のモトGPクラスチャンピオンのM・マルケス選手なんて、滑って横になったバイクに跨りながら肘を使って車体を立て直してレースに復帰していたりしますからね(しかも、タイトルがかかった昨年の最終戦で!)。

メッシのドリブルや、ネイマールのフェイント、ロナウドの切り替えしと同じで「そんなことが出来るのか!」って思わせてくれます。ロードレースよりトライアルの方がそういうのが伝わるかもしれないですね。

以前、まだスポーツランドSUGOで世界スーパーバイク選手権をやっていたころ、決勝日なのに満員とはいえない観客席をみて、外国のメディアが「今日、日本は他に大変なイベントがあるんだろ(だから今日は客の入りが悪いんだよな)」と日本のメディアに尋ねたといいます。

二輪の凄さ、面白さ、ライダーのトップアスリートっぷりを一般の人達は知らなさ過ぎる。我々、媒体もがんばらないといけません。二輪のレースだけでなく普段バイクに乗って無事に帰ってくるってだけでも、けっこうな特殊技能だと思ったりします。バイクに乗ることのステイタスももっと上げたいなぁなんて、メディアの端くれとしては思うのですが。

二輪車新聞編集部 記者 猪首俊幸 (写真:南孝幸)


昨年の日本GPのマルケス選手の走り。雨でもこのバンク角。肘もつきそうであります


元祖スーパースターのロッシ選手。どのサーキットでも黄色い応援団が声援を送ります。イタリアに行ったとき、普通にスーパーで彼のヘルメットが入れ物になったキャンディとか売っていました


いつも大混戦のモト3クラス。単純に観るスポーツとしても楽しめます


鈴鹿8時間耐久レースのスタートシーン。灼熱の鈴鹿サーキットを8時間も革ツナギ着て熱いバイクに乗って走ります。これは相当な体力がいりますよ。そんな中でレースをするのです。海外には24時間戦うレースもあります。耐久も凄まじいスポーツであります