一字千金

2016-10-31

Vol.13「必要な未来の構築のために、一切の妥協はしない」

奥井俊史/アンクル・アウルコンサルティング代表

私は理念や原則の浸透を目指しながら、現地・現物・現状に合わせて運用の仕方を考え、タイミングを重視して「実践」することに努めてきた。

しかし、現実的には販売店に利益をもたらすとの強い信念から、行動に移した事柄であっても、時の理解力や環境の中で全く理解されず、かえって強い反発に出くわす時もあった。

例えば、各販売店に所有権の移った流通在庫のうち長期在庫になっているバイクで、その時点で販売の可能性がない場合には、他店にそれを求める顧客が出現したら、強制力をもって顧客の現れた店に在庫車を移動できるという強制在庫交換のシステムを導入しようとした時などがそうだ。「三方よし」と考えた。

それにより、長期在庫に苦しむ店の負担の軽減になり、顧客が出現した店の「商談の機会損失」をなくせる。また、メーカーは健全にビジネスが拡大できる。そう考えたが、「俺が金を払って引き取った商品を他人の都合で、なぜ一方的に他人のために持って行かれるのか」という強い苦情が出た。

このシステムのメリットを相互に理解して、しかも利用する関係者が顔をお互いに知っている仲間同士という状況があれば問題はないのだが、タイミングが早すぎた。このようなシステムを導入できる状態にまではなっていなかった。

しかし、理解に時間はかかっても、そうしないと過剰在庫は安易にオークションに流れ、あるいは販売店網以外の他店に業販され、商圏価値は下がり、安値乱売の温床になっているという現状からの脱皮は図れない。だから、このシステムを作り上げるのには、いかに販売店の抵抗が強くとも、理解を求めることに専心して一切妥協をしなかった。

一台の在庫移動に対する理解を得るために、自ら販売店を訪ねて説得したこともあった。こうして約5年もの年月を費やして、オークションで転売されることの最も少ない、理由があり了解を与えた売り先の明確なケースを除く業販もされない、という慣行ができた。モデル末期の在庫が常に過剰にならず、その処分で値崩れを起こすこともなくなった。販売網にとって重要な「未来像の一つ」が構築できた。

プロフィール

奥井俊史氏 (おくい・としふみ)

1942年大阪府生まれ。65年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。75年より東南アジア市場の営業担当し、80年トヨタ北京事務所の初代所長に就任。83年より中近東市場で営業担当。90年にハーレーダビッドソンジャパン入社、91年に同社社長に就任し、19年間に数々の施策を展開し日本での大型二輪市場でトップブランドに育て上げた。09年より現職。