一字千金

2016-12-16

Vol.14「販売とはプレッシャー」

奥井俊史/アンクル・アウルコンサルティング代表

マーケティングの手法が高尚になったのだろうか。「プッシュ型」のマーケティングは時代にそぐわない、人間の心理を理解しない売り方であり、一方、誘引型の「待ち型」の販売がワンステップ高度に進んだマーケティング的な売り方という印象を与えるような主張が主流を占めているかに思えてならない。

本当に買い物をする人の心理には、プッシュ型が良いと考えられるのではないか。どんな品物であっても、購入にあたり「もう少し他のモノと比較したい」と考えたりするなど、「何かしらの確認願望」の心が出るのは常である。

特に購買対象品が高額であれば、なおそうである。高額商品の場合に、客の「背中を押すこと(プッシュ)」、言い換えれば口説き落としの一言や動作の一つで商品の購買が決定されることも多いのではないだろうか。

バイクのように商品に差の出やすい物は、特にそうだろう。「無言」でのショッピングをコンビニでするならともかく、バイクのような趣味の商品を買って頂くためには、各社の持つ技術的な特性や開発の歴史、各社の用意するソフト面での楽しみのプログラムを理解してもらうことが重要だ。売り手は、顧客の背中を押すプレッシャーをかける勇気を持つことが有効である。

顧客は自分で購入モデルの詳細まですべてを来店前に決めておられる方もいるかもしれないが、実際には販売店のスタッフとのフレンドリーな会話を通してモデルを選び、変更して、またオプションの推奨を得て、より楽しめるバイクを手にする人も多い。各メーカーが用意しているクラブ組織のプログラムやレースなどの内容に魅力を感じて、来店前に予定していたバイクから、店で勧められたバイクに変える人が意外に多い。

販売店のスタッフに与えられたプレッシャーがあるからこそ、顧客にとっての楽しみを豊かにするために、考えられた店頭演出がなされ、楽しみのプログラムで顧客の心を揺り動かす誠意のある語りとなり、顧客の満足できるビジネスを完結させることにつながる。

プロフィール

奥井俊史氏 (おくい・としふみ)

1942年大阪府生まれ。65年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。75年より東南アジア市場の営業担当し、80年トヨタ北京事務所の初代所長に就任。83年より中近東市場で営業担当。90年にハーレーダビッドソンジャパン入社、91年に同社社長に就任し、19年間に数々の施策を展開し日本での大型二輪市場でトップブランドに育て上げた。09年より現職。