考えるリーダー/Interview インタビュー

2016-06-03

「最近どう」で社員成長へ

鈴木紳一郎 会長

デイトナでは今年3月下旬、それまで社長だった鈴木紳一郎氏に代わって織田哲司氏が代表取締役社長に就いた。鈴木氏は代表権のある会長に就任したことで、代表権を持つ会長と社長二人による新体制となった。本紙では両氏に、企業運営やこれまでの経験などについて取材、2回にわたりインタビューを掲載する。第1回目は鈴木会長。

――社長を経験して、今思うことは。

44歳から社長に就き約11年務めた。創業者の阿部久夫さんから引き継いだので、それまでのパターンが変わることを意味するが、同じことを行っても駄目だし、大きく変えても駄目だし、すごく難しい状況だった。それまで阿部さんに引っ張ってきてもらったが、引っ張る立場になった。ただ、自分の考えで強烈なリーダーシップで会社を引っ張る社長というよりも、わかりやすく表現すると社長という当番が回ってきたという意識でやってきた。だからこれをやりなさいとかではなく、この会社の在り方や、社会に対するあり方を中心に考え運営した。ここが一番注意したことだ。

当初は社員との関係も苦労した。会社や組織、仕事への取り組みを良くするため、社員を説得する方法で接していたが、何も変わらない。本人が気づき納得しなければ変わらないとわかった。説教をしても事は進まない。それよりも皆で力を合わせ賛同を得て事を進めた方が良いと考えた。

社員との距離を縮めるため、始めは現場の意見を聞き、答えてきたが、社員から結局は社長に言い包められ何も聞いてもらえないと思われてしまった。これではだめだと思った。

それからはとにかく社員の話を聞くことにした。顔を合わせるたびに声をかけてきた。立ち話やエレベーターなどで会った時でも『最近どう?』と尋ねるようにした。社員から困っていることなどの話が聞ける。これに対し『なんで』『どんな方法があるの?』などと質問をすることで、社員自身が解決策を自ら見出すようになってきた。ここ数年は年1回全員が集まって、自由に話し合える合宿も行っている。

だから、商品開発でも私から造れと言ったことは殆どない。日常会話の中で私が一人のライダーとして話したことに対し、社員が自主的に開発している。人は自分で動こうとしなければ動かないものだ。だから動機づけが大事だ。社員の中にも社長ではなく、私を紳さんと呼んでくれる人もいる。社員との距離は近い方が良いと思っている。偉いのが社長ではなく、たまたま社員の中から社長や会長に選ばれ、役割分担しているだけだ」

――社長時代にやり残したことは。

「いっぱいある。100億、200億円と事業を拡大したかったが、成長スピードがちょっと遅かった。2007年までは(業績が)順調に上がったが、08年には落ちて10年まで大変で、何をやっても業績が上がらなかった。そんな時、創業者の阿部さんは、少し離れたところから視ていたのだと思う。私は自分の周りしか視えなかったが『経営権はあんたにあるんだから、もっと広く視ろ』『今のままでいいのか。バイクだけでいいのか』などといわれたこともあった。阿部さんは戦略思考で、戦うことが好きな人だ」

――再構築のリストラと発展のためのイノベーションは同時に行わなければならない。

「そうです。だからもう一度理念に立ち返った。理念の中では『私たちは常にお客様に満足して頂ける独創的な商品を豊かに追求し提供します』を掲げており、量や質の追求だけではないことを確認。当社のカスタマイズなどの強みを活かし、その時の時流に合った商品とサービスを提供することだ」

――会長の責務は。

「社長を11年務め、創業者の阿部さんと話し合い、取締役会長になった。また、取締役会ではいきなり織田さんを社長に指名し、本人も驚いていた。いきなり代表権を渡すのも大変だろうと、当面は私と二人で分担してやることにした。私はインドネシアの子会社PTデイトナ・アジアと、用品店のライダーズ・サポート・カンパニーの2社の経営を見ていく」

――仕事をする上での、人として大切な事柄は。また好きな言葉などは。

「いつも同じではなく、常に成長すること。成長を目指して何でもやることだと思う。人生はずっと成長だ。何でもいいからすぐにやってみることだ。優先順よりも来た順にドンドンやっていかないと追いつかない。社内のプロジェクトでも2分で考え発表することを行っている。来た球はどんどん打ち返さなければ事は進まない。その瞬間を楽しむことも重要だ。

また、好きな言葉は『思ったことは実現する』というもの。だから常に良い想いと、良い言葉を心がけている」

紙面掲載日:201663