業界人/Interview インタビュー

2018-07-27

「バイクの楽しさを若い人に伝えたい」

山中君子さん

東京都足立区の中ほど、環状7号線沿いに、女性店主の山中君子さんが切り盛りする二輪車販売店がある。その名も「オートショップヤマナカ」。1977年に山中さんの夫・一夫さんが創業。国内外の新車・中古車を扱うほか、修理から保険のことまで気軽に相談できる町のオートバイ販売店として親しまれている。

同店を訪れると、昨年の創業40周年記念に作成したTシャツを着用した山中さんが出迎えてくれた。

「実は、嫁いでくるまでオートバイとは無縁の生活を送っていました。結婚した当時、オートバイの仕事はまだまだ男性社会という風潮で、主人からも家のことだけやってくれればいいと言われていました。保険業務の手伝いなどはしていましたが、まさか自分が代表取締役になるとは思っていませんでした」と山中さんは語る。

転機が訪れたのは、約23年前のこと。一夫さんが病を患い、山中さんが店のバトンを受け取った。

当時、長女は中学2年生、長男に至っては小学2年生とまだ幼く、「自分がやらなければいけない」との心境だったという。それからは、販売店の業務や子育て、看病などの合間に整備士の講習に通い、3級整備士、後に2級整備士の資格を取得した。山中さんは「休む暇もありませんでしたね。若かったからできたというのもありますが、いろんな人に助けられたおかげで、ここまで来られたと思っています」と当時を振り返る。

そういった経験からか、他店舗との連携を大切にしていて、人手がなく困っている店舗があれば従業員を派遣。逆に助けてもらうこともあった様子。山中さんは「東京オートバイ協同組合などを通して横のつながりができました。それも私の財産で、やはり人財が大事だなとすごく感じています」と話す。

そんな山中さんにとって忘れられない経験がある。

今でこそ二輪車安全運転特別指導員の資格を持ち、交通安全教育に寄与している山中さんだが、始めの頃は、オートバイの運転に不安があったという。不安を取り除くために練習場に通っていたが、一念発起して限定解除試験に挑戦し、11回目の試験で合格。練習場にはトータルで1年4カ月通ったという。

そのときのことを「生まれて初めて人前で思い切り泣きました。最高に嬉しかった出来事です。自分の人生がこういう風になるとは想像もしていませんでしたが、思いがけずこんなに素晴らしいオートバイと出会えて本当に良かったです」と話す。そうした自身の経験から、二輪免許取得に不安を持つ人を勇気付けたり、オートバイの楽しさを伝えるよう心がけているという。

その手段のひとつとして、同店ではツーリングやオフロード体験走行会、スクールなどを定期的に行っている。山中さんの〝宝物〟だという手製のツーリングやイベントの予定表からも、長年継続されてきたことが伝わってくる。

そうして、創業41年目となる今年、長男の一範さんが店を引き継ぐことになった。

山中さんは「私がバトンを受け取ったときに小学生だった息子が、今度は私からバトンを受け取ってくれることになり、とても嬉しいです。私も息子をサポートしながら、オートバイの楽しさを若い人たちに伝えていけたらと思っています」と話し、穏やかな笑顔をみせた。


夫からのバトンを息子へ。「若者に二輪の楽しさを伝えていきたい」と山中さん


ツーリング予定表は山中さんの手づくり

■プロフィール

山中君子氏

静岡県掛川市に四姉妹の長女として生まれる。モットーは「いつでもプラス思考、前向きに」。最近の癒しは、7歳になった飼い猫。


▼(有)オートショップヤマナカ

東京都足立区梅島3-3913(℡0338862544)▽営業時間10時~20時(土日祝は19時まで)▽定休水曜日、第2・3日曜日

紙面掲載日:2018年7月27