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2018-06-15

Vol.4 経営者のリニューアル 顧客と社長の二重の高齢化に注意

〝お客様は店に付いているのか?それとも社長や店長や社員が呼び寄せているのか?〟

私たち事業承継士は「社長の高齢化による老害」に注意が必要なことを、こんな風に説明します。

30年も通った、なじみの焼鳥屋に「もう来なくていいよ」と言われました。その理由は「年寄りのお客さんで店が埋まると儲からなくなる」から。

店主と顧客が友人のように仲が良いのは悪いことではありません。しかし顧客は、加齢とともに購買力が下がり、来店頻度も落ち、店内の雰囲気も暗くなる。たまに来てなじみ客のようにふるまわれては、新規客がいやがる。

こうした事情は飲食店で顕著なのです。そこで私はいつも「社長が頑張って繁盛店にしたら、15年から20年でオーナーチェンジですね」「良い立地で良い客に恵まれているから、誰が社長になってもやっていけますよ」とアドバイスする。

上手に引退して若手にバトンタッチして、「顧客の若返りを図らなければなりませんよ」と。

そして、新社長になる人には次の条件を出します。

「開店の挨拶状を500通出せますか」と。名簿を作れるかということ。あなたを知っている人が500人いるかということ。簡単に見つかる名簿は小学校からの卒業生名簿。さらに、大人になってからの付き合いで増えた名刺の束。これらの個人情報が新社長の最大の武器になります。

お店には既納客がいます。保険や車検で戻ってくるお客さんもいます。こうした埋蔵金にも似た過去の資産と、新社長の新しい人脈がまじりあうことで、店舗に新しい客が訪れるようになります。

若々しい新社長に、新たな顧客で、店舗のイメージが刷新されます。

旧来の固定客におんぶにだっこの保守的な経営では「顧客と社長の二重の高齢化」が進行します。その結果、店の空気は滞留し、新規客の入りにくい雰囲気を作り出してしまいます。

慣れ親しんだなじみ客と社長の関係は緊張感を欠き、新規客から見ると、接客はぞんざいな印象になります。だからこそ、一定の年月での「経営者のリニューアル」が必要なのです。

ベテランの店員にも課題があります。新しい技術の習得や新製品の知識習得に遅れが出がちになります。すでに獲得した技術と体にしみ込んだ経験という財産に寄りかかり、慢心している場合があります。こういう店員が、新規客には入りにくいムードをもたらしているのです。

店舗は生き物です。

お客様と商品が出会う、ふれあいのチャンスの場所です。その場で意気投合して即日契約を生むこともあれば、大切な見込み客を失うこともあります。店舗リニューアルには熱心なのに、自分が高齢化して老害を生んでいることに気がつかない現社長が多すぎるのです。

老害の一番の課題は、後継者の成長を阻害することです。跡取りさんには小さな失敗をする権利も、そこから立ち直る時間も必要なのですよ!

本当にお客様のことを考えるなら、同じ場所に同じ店が続いていくことが求められているのです!

■教訓

1.業績が良い時こそ譲り時。思い切りよく経営を任せて後方支援に回ろう。

2.譲られる側の意識、肚を決める勇気が必要。

3.店舗に付く客と、個人に付く客のどちらも大切に。

〈筆者紹介〉

内藤博/事業承継センターCEO

1952年横浜生まれ。27年にわたる二輪車関連出版社勤務を経て2003年に独立。事業承継の専門家として1000件を超える経営相談、事業承継の実績を持つ。自身がベンチャー企業取締役として、成長発展から縮小リストラまで経験した強みを生かし、単なる承継問題にとどまらず、時には家族会議への参加や親子間の仲介も行う。著書「これから事業承継に取り組むためのABC」他。

紙面掲載日:2018年6月15