商売の基本はお客様とのコミュニケーションであると言われています。しかし現実は忙しい時間に来られても、じっくり話はできないものですね。それなのに暇なときは誰も来てくれない。商いとは不思議なものです。バイク屋殺すに刃物はいらぬ雨の3日も降ればよい、と言われたのは遥か昔の話ですね。現代ではピンポイントの天気予報を見て、雨雲の移動を予測して来客が集中します。さらに、小売店泣かせなのがネット通販。品物は現物が見たいから、フィット感を確かめたいから、お店に触りに来ます。

カタログが必要だった時代が懐かしいほど、情報はすでに顧客の手元にネットから届いています。表の情報、公式発表はとっくに知っていて、裏情報の口コミや購買客の感想まで調べ尽くしたお客さんにとって、お店とは何なのでしょうか?

ショールーミングなる言葉のように、現物をお店で確かめた後、価格ドットコムを調べて、ネットで最安店から購入する。そんなしたたかなお客様もいます。業者を天びんにかけて、こっちの方が安い、同じ値段まで下がらないかと交渉する者もいます。

こんなスレた客ばかり相手にしていたんじゃ身が持たない。先が思いやられると言ってネット社会に背を向けてホームページも作らない方もいますが、自分から敗北を認めたようなものです。

ここは経営革新に挑戦してはどうでしょうか?すでに何十年もやって来たオヤジではなくて、後継者に未来に向けた会社の在り方を作ってもらいましょう!

政府の統計では代表交代の時期に後継者が若いほど、その後の経営成績が良くなっています。つまり経験年数は意味が無くて、新時代に合わせた新しいフィーリングやIT技術の活用にこそ若さが必要なのだと思います。

こんな小売店の受難時代にも繁盛店はありますし、新規開店も続いています。若さこそが許される特権は、未来があるという手持ち時間の長さなのです。これから長きに渡って顧客と接していかなければならない後継者にとって、自分と同じ感性を持った、同時代を生きる仲間は大切な財産でもあります。

できるだけ接客の時間を取ってやってください。引退する側がいつも店番で、電話の前でお茶引いているんじゃ、新規客は来ませんよ。

徹底的に裏方に回り、コミュニケーションのいらない仕事を探しましょう。表の顔を入れ替えなければ、店のイメージ刷新にはなりません。老夫婦が店を守り後継者が外回り、整備、納車・引き取りに精を出してはいけません。

店の一番陽当たりの良い場所を独占し、居心地の良い席にどっかりと座って、入店客を眺めるのはやめたいものですね。それよりも後継者にとって必要な顧客とのコミュニケーションの場所や空間、設備や内装、商品の展示方法を実現していきましょう。

辞める直前の会社は現社長にとって一番居心地の良い場所になっているはずですから。

■教訓

1.お客様は何を求めて来るのか。

2.求めているものを提供できるのか。

3.新しいやり方に任せてみよう。

〈筆者紹介〉

内藤博/事業承継センターCEO

1952年横浜生まれ。27年にわたる二輪車関連出版社勤務を経て、2003年に独立。事業継承の専門家として1000件を超える経営相談、事業承継の実績を持つ。自身がベンチャー企業取締役として、成長発展から縮小リストラまで経験した強みを生かし、単なる承継問題にとどまらず、時には家族会議への参加や親子間の仲介も行う。著書「これから事業承継に取り組むためのABC」他。

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