台湾・キムコは3月22日東京で、世界市場に向けて電動スクーター(EV車)のプラットフォーム「Ionex」(アイオネックス)を発表した。アレン・コウ会長は24日に本紙の取材に応じ、アイオネックスにおける今後のインフラ構築や販売ネットワークなどについて述べた。

──アイオネックスのコンセプトは。
「次世代電動スクーターという概念を基に、プロジェクト『ネクスト』を立ち上げ、3つの重要課題を提示しました。一つ目は、ユーザーのすべてのニーズを満たすものでなければならないとしました。例えば、車両の充電では様々な方法がありますが、開発でのアイデアはどれも始めから否定をしないようにしました。2つ目はニッチよりもマスマーケットでの利用です。最終的には我々のEV車の人気を高められることを目指しました。3つ目がいかなる都市や状況にいても、適用できるもの(仕組み)を掲げました」

──アイオネックスで提供したいことは。また顧客に何をもたらすのでしょうか。
「アイオネックスの核となるのは、自宅で充電可能であることです。毎朝外出時は満充電のバッテリーで出発でき、自宅での充電が最も重要であることに至りました。この経緯では携帯電話(スマートフォン)とEV自動車テスラの2つの事例から学びました。

15年ほど前の携帯電話のバッテリーは、1回の充電で7日間程度利用できたが、バッテリーの持ち時間は短時間になったにもかかわらず、現在は携帯電話の利便性が勝っていると思われています。現在の携帯電話は以前よりも小さく軽量なバッテリーを搭載することで、コストを抑えかつ利便性を高めることができました。こうしたことで我々は毎日の充電であっても(利便性が勝り)満足できるという、ユーザー意識の部分を学びました。

もう一つのテスラでは、毎日の充電が面倒と思われていたが、実際ユーザーの反応を聞くと毎日充電できることが最も素晴らしい(安心)特徴であると語っています。バッテリーを充電することが日々の生活習慣となっています。

そこでアイオネックスでは、ユーザーが自宅で充電できる仕組みにしました。日々自宅での充電を容易にするため、生活の流れの中で充電できる機構が重要であると考えたわけです。

台湾でのデータですが、1日あたりの平均走行距離は13km。あくまでも平均であり国、市場により異なりますが台湾ではアイオネックススクーターの場合、1つのバッテリーしか持っていなかったとしても、コアバッテリーと合わせて約60kmまで走行可能です。交通状況などいろいろ想定しても約40kmは容易に1つのバッテリーで賄えるので、毎日フル充電で家を出発するならば、台湾での平均13kmは全く問題ありません。

満充電バッテリーでの航続距離が、多くの皆さんの重要なポイントとなっています。昨今、EV車を製造するメーカーへの質問は、航続距離はどれだけか?といった質問から始まります。1回の充電でメーカーでは航続距離を伸ばそうとしていますが、実際に長距離乗れるEV車が売れているのかといえば、そうでもありません。メーカーとしても車両に搭載するバッテリー数が増えるがゆえに、車両価格が高価になってしまい、市場で販売しても容易に売れず負のサイクルに入っているわけです。

我々はバッテリー搭載数を少数にしようと考えました。ただ、長距離を走りたいと思えは、新たにもう1つバッテリーを購入し使用できる仕組みにすることで、アイオネックスススクーターのコストが下げられ、手ごろな価格で販売できEVスクーターが普及する『正』の構図が構築できると考えています。

日常の走行では、バッテリー1つで充分です。しかしユーザーの心理を考えると多くの選択肢を提供したいと考えました。開発では『妥協なきグリーンへの望み』をスローガンとしています。ユーザーが休憩無し

に100~200kmを走行したい時は、これまでのEV車では無理だと考えていました。これは購入を躊躇する要因になるため、この点でユーザーに『安心感』を与えるべく、我々は様々な予備バッテリーを提供できる仕組みや、充電ステーション網、多数の電源設備を用いて出先で充電可能な仕組みを提供することにしました。

もう一つのユーザーの心理の懸念は、突然バッテリー残量がなくなってしまう心配です。携帯電話で経験した人もいるでしょうが、25%残っていた電池表示が瞬時で5%に減少するということもあるので、もし同様な経験をEVスクーターで持ってしまうと、ユーザーは不安になります。

実際には自宅での充電で全く問題がありませんが、ユーザーの心理的にはレンタルバッテリーがあることで、どこでも充電でき、充電ステーションの整備など様々な仕組み、その訴求を行うことでユーザーは全く妥協、心配せずにEV車を楽しんで頂けると考えています。我々はユーザーの心理的な障壁を排除していきたいと思っています」

──充電ステーション構築について、どのようにお考えでしょうか。
「自動販売機のような充電スポットやシェアリングの仕組みはキムコだけで整備することはできますが、充電ステーションとなれば話は違ってきます。どんな大手企業でも単独でできる仕組みではありません。充電ステーションの展開では重要になる組織が2つ挙げられます。

一つは政府です。どこの国の政府も環境にやさしい取り組みを行い、都心部では排気ガスの出ないEV車を普及したいと考えているでしょう。台湾だけでなく世界各国の政府がそうした国家予算を組んでEVスクーターを普及させる努力をしたいと考えていますが、残念ながら今のところ政府が求めているような的確な機会は提供されていません。政府もどのようなソリューションがあるのかを模索しているわけです。

ただ、実際アイオネックスの発表以前より、様々な政府関係者からの問い合わせを受けているのも事実です。特に我々はすでに世界各国にディーラー網を開設していますが、ディーラーから政府がそうしたソリューションを探しているという連絡を受けています。

2つ目のステーション構築は民間企業です。例えば、民間企業本社などの駐車場に充電スポットなどを設置することで、バッテリー交換を可能にすることです。その他にショッピングモールやマンションなどの基礎設備として設置できればと考えています。

台湾の一例ですが、このような受電ステーションの仕組みを整備するにあたっての助成金がすでに組まれています。台湾に限らず世界各国で最も優れたEVスクーターを普及させるソリューションを求めていると言えます」

──輸出先国では、その国の企業のソリューションが優先されがちです。
「発表で披露した充電のための自販機タイプや充電ステーションなどは、デモ用で製作したもので、我々が製造した自販機タイプの機器を輸出していくものではありません。輸出先の地域や用途に合わせ、その国のメーカーなどが製作することができるものとしています」

──アイオネックススクーターとバッテリーの利用料金については。
「今年6月の台湾でのローンチイベントでは、具体的なモデルの仕様や価格帯、インフラ情報などの詳細説明ができると思います」

──アイオネックスを現在の販売網でどのように展開するのか。また新たな販売チャネルの考えは。
「これまでユーザーは、ガソリン車とEV車は全く別物と切り分けて見てきましたが、アイオネックスの到来で、同じものとして見ることができるようになります。ユーザーにとっての違いと言えば搭載される駆動方式、フューチャーが異なるだけと見ています。そうしたことでアイオネックススクーターは従来のガソリン車と同じ位置づけで考えていけるので、今までの販売網を活用していきます。しかし、EV車はガソリン車に比べ、クリーンで臭いや音もないことで従来以外の販売チャネルも充分考えられ、この点は模索していきたいです。

台湾の例では、スマートフォンを介してEVスクーターの販売が実施されています。携帯電話会社で台湾ドコモですが、大変成功していると思います。ドコモ加入ユーザーが月々の通話料と共にEVスクーター料金を支払うビジネスモデルになっています。

この場合、販売ディーラーにとってガソリンかEVかは、駆動方式の違いだけです。ただ、ガソリンの場合はエンジン回りの整備で利益を出せたが、EV車ではモーターの交換作業だけで修理や整備などで利益を上げづらくなり、全体的にはアフターサービスでのビジネスの幅は縮小されるでしょう」

画像: キムコ アレン・コウ 会長/ビジネスモデル模索もEV車プラットフォーム柱に

紙面掲載日:2018年5月11日

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