これに対しては米国メーカーの法人として、販売店自身の意向を最大限に取り入れながら共通のブランドを力強く訴求し、印象づける店舗機能を充実したストアーデザインに基づく店舗・店頭造りを推進し、他社販売店に比べて圧倒的に質な購買環境の実現を推進した。この政策はバイク業界における「店舗革新」の実現を意味した。
バイクの展示だけではなく、当該バイクやブランドが実現するブランドの世界を店頭で縮小、凝縮して実現・展示し、そのために必要なブランド関連の部品用品を、できる限り実際的に具体的に顧客に提示した。
ショールームとともに重視したのは、高い整備力であり、そのためのサービス工場やサービス設備の充実ぶりを「見える化」することであった。もちろん、サービスは建屋・設備だけで実現できるものではなく、これらを使用して充実し、高度な整備を提供する主人公であるメカニックたちの「質の向上」「数の提供」の実現が重要であった。そのために、メーカーとして販売店に支給する修理補償工賃を、業界水準をはるかに超える高額に設定した。
また、顧客に無償修理や定期点検を確実に受けてもらうために、官製はがき1枚ではなく、内容を充実させたシリーズもので、大型2枚折りの特別なDMに変更した。
このような信頼醸成のためのサービスへの取り組みは、他社には見られない。顧客に「楽しんで安全を確保し、安心を醸成してもらえる」方策を講じた。
販売店スタッフの技術レベルを向上させるために、専用の研修設備で1年間ほぼ毎週、何らかのサービス技術研修を実行するようにした。
このようにして「壊れるのが当たり前、部品がないのが当たり前」と言われて久しかったメーカーへの認識、状況から、日本で初めて全国の専売店が「認証工場資格を持った、サービス工場を持つ販売網」の実現を構築した。
※2019年1月1日付け号「一字千金」掲載
プロフィール
奥井俊史氏 (おくい・としふみ)
1942年大阪府生まれ。65年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。75年より東南アジア市場の営業を担当し、80年トヨタ北京事務所の初代所長に就任。83年より中近東市場で営業担当。90年にハーレーダビッドソンジャパン入社、91年に同社社長に就任し、19年間に数々の施策を展開し日本での大型二輪市場でトップブランドに育て上げた。09年より現職。