前回は整備について。規定どおりの整備は正しくても不十分。お客様の体格やスキルなどを見て、許容範囲内で適正なアジャストが必要であることを書きました。これで「製品」が「商品」になります。

そして今回は商品知識について。社長はもちろんスタッフ全員が、バイクのプロフェッショナルとして取扱商品の知識を持つ、この当たり前について。

私のスクール受講生が新型バイクの試乗へ。「このクルーズコントロール機能って速度幅は?」と尋ねたら担当セールスが「?」な顔でモジモジ。

クルマも同じ。クルコンと略すクルーズコントロールシステムは適応する最低速度と最高速度がある。ろくに内容を知らないで高機能をアピールしても店の信用を落とすだけ。

実を言うと、私はバイクのカタログが大好きで、そのコレクターでした。一字一句まで読み漁り、スペックまで覚えてしまうオタクで、出入りのバイク屋さんに「ノーガキ・ライダー」とまで言われていました。今のバイクショップにはそんなお客はいないと思いますが、詳細説明できる販売店スタッフはまだまだ序の口。

実は詳細を知って、ちゃんと口頭で説明できても、まずはお客様の話をよく聞く。

現実的にはバイクの詳細よりも、足つき性やデザインを含めた雰囲気に惚れて購入されるケースが大半。それでも製造メーカー配布の技術資料を把握。商品企画の背景や作り込みの象徴的な特徴を自分の言葉にする。

たとえ速く走れなくても、丁寧に乗って自分のスキルでエンジニアが意図した味付けを体感して惚れる。これが今回のキーワード。

メッセージ力を磨く

バイクはベストセラー車でも全方位完璧は存在しない。なのですべてに惚れる必要はない。デザイン、カラーリング、乗り味。一カ所でいいから惚れるところを見つけてから、お客様と心を交わす。

味方がいれば「購入する勇気」がさらに強まる。その決め手が売り手の「惚れ言葉」ではないか。知識によるセールストークではなく、バイク大好きを一歩進めて=惚れる=それこそがメッセージ力。

お客様がお求めになるバイクが高額な大型バイクでなくても、中古バイクであっても、メッセージ力を感じるバイクショップであってほしい。社長や店長はショップ代表として、メッセージ力の最先端にいるべき。

その昔、人気がなくなかなか売れないバイクがあった。だがあるショップは価格をほとんど下げることなく、社長の肝入でバンバン売った。

車両人気に依存しないセールス。これぞ惚れてナンボのセールス!ですね。

プロフィール

柏秀樹(かしわ・ひでき) 
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員の意識・運転技術改善に役立つノウハウの伝授や情報交換をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。

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