小泉環境大臣「電動二輪車に対しての気運が高まっている」
発表された取り組みは「配送拠点等エネルギーステーション化による地域貢献型脱炭素物流等構築事業」と題し令和2年度から令和6年度まで、地方公共団体や民間事業者などに対し、傘下の執行団体を通じて間接補助事業として定額、あるいは1/2を導入経費の費用として補助するもの。令和2年度予算として10憶円を計上している。
令和2年度は10億円の予算を確保
同事業は3つの政策的ポイントがあるとされる。
①ラストワンマイルの配送用車両の電動化=国土交通省が発表した2018年度の国内の部門別における二酸化炭素排出量は、運輸部門が全体の約2割を占めており、その内の半分を物流部門が占めている。一方で環境省が令和元年度に発表したレポートでは、最終拠点から最終受取人までの配送距離(ラストワンマイル)は電動車両を運用することで、経済性にも成立する可能性が高いと分析。同時に運輸部門の脱炭素化に向けた足掛かりとして、実施していくことを目的としている。
②配送拠点等における防災性向上=近年は大型台風や豪雨など大規模災害が増加傾向にあり、車両の動力源として使われる交換式バッテリーが非常用電源として活用することが期待される。また、同バッテリーを設置する配送センターが、災害時におけるスマートフォンなどの電化製品を充電できるバッテリーステーションとしての利用が期待できる。
③新たなビジネスモデルの構築=車両の普及に向けた課題として▼充電時間▼航続距離▼充電インフラ▼導入コスト──などが挙げられるがバッテリーを交換式にすることで、いつでも短時間で満充電のバッテリーに交換することで、前述の課題は解決されるとし、特に導入コストは事業者が車体のみを購入することが可能になれば、大幅な導入コストの低減が見込めるものと期待できることを挙げている。
以上の政策的ポイントから補助を申請する事業者としては、配送業やフードデリバリー、eコマース事業者など、物流拠点から家庭へラストワンマイルの配送を強化しようとする事業者を想定している。
「政策として重点化するように指示」
支援策を発表した小泉環境大臣は「現在のコロナ禍においてフードデリバリー業などでラストワンマイルの需要が非常に伸びている。そうした中、新たな日常における取り組みの一つとして二輪のEV化による二酸化炭素削減が非常に重要だと考えている。環境省でも今年度から配送車両のEV化に対して支援を開始した。
一方でバッテリーステーションの将来的なイメージは街中に置かれることによって災害時には非常用の防災電源、スマートフォンの充電ステーションとして活用されることを期待している。先月は大阪府内の大学や近隣のコンビニに置いて、交換式バッテリーを搭載した電動二輪車の実証実験(既報)が行われることになった。このようにラストワンマイル配送の分野のみならず、電動二輪車に対しての気運が全国的に高まっている。
先月取りまとめた環境省の選択と集中ではアクションの方向性として、災害時に防災や行政のエネルギーセンターとして利用可能なEV主体の物流システムを社会実装することを盛り込んだ。電動二輪車への取り組みはまさにこの方向性に合致するものであり、来年度は政策として重点化するように事務方に指示した」とコメント。環境省として力強く後押ししていく方針を示した。
電動二輪車の使い勝手を配達員に聞き取り
今回日本橋郵便局で行われた視察は、日本郵便(株)が同事業の令和2年度第一号事業者でもあると同時に、同社が環境に配慮した企業活動の一環で持続可能な郵便・物流事業を推進する取り組みの現場を視察するもの。
日本郵便では現在200台のベンリィ イーが稼働しているが、今年度末までに計2200台の電動二輪車を配備する予定である。
視察の出席者は日本郵便から担当重役のほか、環境省からも担当者が出席。現場で普段ベンリィ イーを利用している配達員も同席し、ホンダからは同車両の開発責任者らも出席した。
大臣は車両のバッテリー交換を体験したほか配達員と談話し、使い勝手などを聞き取り。女性の配達員からは「バッテリーが1つ10㎏は重い。(従来の)スーパーカブよりは乗りやすくて良い」ほか、男性配達員からは「リアタイヤのフェンダーが長くてタイヤが見えづらく日常点検しにくい。コーナーが曲がりやすくて良い」という声に対し、「率直な感想だ」としたうえで、同席した開発責任者へ改良に役立てるように意見した。
紙面掲載日:2020年9月18日