4月に同じ埼玉県さいたま市内から移転し、リニューアルオープンしたKTM埼玉(リベルタスポーツ)。代表の古宅廣年さんはKTMブランドを扱って20年以上のキャリアを持つベテランで、同店は海外ツーリングでも実績のある販売店でもある。直近はコロナ禍で海外への渡航イベントは開催していないが、それでも顧客を楽しませるイベントを仕掛けている。その原動力を聞いてみた。
画像: 左から代表の古宅さん、営業の高澤信吾さん、メカニックの宮本大輝さん

左から代表の古宅さん、営業の高澤信吾さん、メカニックの宮本大輝さん

店舗の場所も変えて、新たにオープンしたことで反響も大きいという。車両も全ジャンルを展示しており、全てが販売好調だがその中でもスモールDUKEと呼ばれる原付二種の『DUKE』は問い合わせが多いそう。「スペースもかなり広くなったねと言われます。あと、初めて来店される若いお客さんが凄く多いです。それも免許取得前に125のDUKEを指名買いされるんですよ」と顔をほころばせる古宅さん。

元々は四輪モータースポーツのトップカテゴリーであるF3000(当時)のレースエンジニアとして活躍。それより以前は輸入四輪メーカーの大手販売店で整備士を勤めていたというから生粋のメカニックである。

KTMに携わるのは2000年頃にレースエンジニアから離れたときにKTMを取り扱っていた知人から紹介を受け、KTM東京で勤務したことで初めて同ブランドに触れることになる。その後、独立し埼玉で店舗を構えたという。

KTMブランドについての印象を聞くと「信頼性が高いと感じます。エンジンを開けるとこんな所に高価な部品を使っているんだと驚きますね。それとKTMはレーススペックというイメージがあり、維持管理にシビアなイメージがあると思いますけど、意外とタフなんですよ。基本メンテナンスを怠らなければ、パフォーマンスを維持できますからね。国産バイクはあんまり触ったことないけど、ズボラなメンテナンスでも高い耐久性があり、問題ないのが国産の特徴だと思います。KTMの場合はそれと比べると手間は掛かりますが、その分高いスペックを維持できます。こっちの方が楽しいと感じますね」と話す。

画像: 機能パーツで人気のPHDS(プログレッシブ・ハンドルバー・ダンピング・システム)。 ハンドルに装着することで微振動を吸収。長距離ツーリングを快適なものにする。車両を乗り換えても移植するオーナーが多いという

機能パーツで人気のPHDS(プログレッシブ・ハンドルバー・ダンピング・システム)。
ハンドルに装着することで微振動を吸収。長距離ツーリングを快適なものにする。車両を乗り換えても移植するオーナーが多いという

KTM埼玉の知名度を高めているオリジナルのイベントがある。海外へのツーリングプランだ。始めたきっかけを聞くと「07年頃にエジプトで開催されたファラオラリーに出場したのですが、そのときの様子をお客さんに話したところ『自分も砂漠を走ってみたい』という要望があり、08年に初めての海外ツーリングとしてサハラ砂漠へのプランを実行しました」と振り返る。ちなみに、過去に出かけたロシアやタイなどのロケハンはグーグルマップで行っているというから驚きだ。「これまで渡航した国は大体これで〝下見〟をしています。400㌔くらいのルートでも全然作れちゃうんですよ」と笑う。

実際に行ってみないと分からないことも多いというが、参加者も一緒に挑戦してみようという人が多いので、チャレンジ精神あふれるルートになっているそう。

一方、参加者にとっても大きな喜びがあるという。「海外の未知の道路を自分のバイクで走るということは特別な事でもなく、自分も手を挙げれば参加できるんだと嬉しくなるんです。特に砂漠を走るのは日本では体験できませんから。ずっと走っていると方向感覚も分からなくなって、砂丘を下るのも高さがあり怖いんですけどアクセルを開けないと前輪が沈んじゃうので開けっぱなしなんですよ」と破顔する。

画像: 08年には初めての海外ツーリングを開催。写真は16年のエジプトの風景

08年には初めての海外ツーリングを開催。写真は16年のエジプトの風景

帰国すると愛車の装備の見直しや消耗品のグレードアップのほか、買い替えや増車するお客さんも多いという。道中で経た不満を解消するための行為だが古宅さんにとっては、まさにそれが狙いだとも。「車両は遊びの道具。徹底して使い込んでもらいます。そうすることで愛着も増しますし、ガレージにしまい込んで大事にするのではなく、走り込んで欲しい。また、そうした機会を提供するのが販売店の役割だと思います」と、強調する。

渡航費用なども含め海外へのプランは費用も莫大かと思いきや、意外とそうでもないという。「一番高い時で一人当たりトータル40万円くらい。安い時だと30万円ちょっと。実は費用の半分以上は航空運賃なんですよ。食事とかも日本と比べると1/3くらいで済みますね。あと、車両の輸送も海上コンテナを使っているのですが、参加台数が多いほど費用を分散できるんです」と話す。

近年はコロナ禍であり海外への渡航は控えているがその分、国内のツーリングを充実。直近では1泊2日の会津ツーリングを開催した。また、最近はスマートフォンのアプリを使ったコミュニケーションを多用しており、集合場所と目的地を一斉配信することで、林道を走破したい人や峠道を走りたい人など、好みに応じたルートを選べるようにしており、参加者を楽しませるイベントとなっている。

一方で、古宅さんがもっとも心がけているのが、初心者がツーリングに参加した時だという。「その人には積極的に声を掛けています。そうすることで『気にしていますよ』と相手に分かってもらえるだけではなく、周囲も自然と声をかける空気が出てきます。その後は仲間意識も高まってきて、今では自分たちでツーリングに出かけたりもしているようですよ。林道とかの最新情報はそうしたお客さんたちから得ているものもあるので、大変ありがたいですね」と述べる。

画像: 5月には1泊2日の会津ツーリングも開催。雪上アタックも大盛況

5月には1泊2日の会津ツーリングも開催。雪上アタックも大盛況

ゴルフや釣りが競合相手 顧客の趣味を二輪車へ誘因

こうしたイベントは他の販売店と一緒に開催していきたいとも言う。「お客さんの休日と予算をいかにバイクに振り向けてもらうか。ゴルフや釣りなど休日にはいろんな楽しみ方がありますが、そうしたレジャーが最大のライバルなんですよね。なので、二輪車の販売店は競合相手ではなく、協業する仲間です」と、打ち明ける。

コロナ禍が収まれば、今度はパプアニューギニアを予定しているとも。「実はコロナ禍になる前、ギリギリ渡航が出来そうだったのですが断念しました。国土も日本の1.25倍くらいあるのですが、グーグルマップでも、走行していない所も多く、現地では未開の原住民が暮らしている地域もあるらしくて……本当に楽しみです」とニンマリ。

それだけでは収まらないのが古宅さん。最終的には世界一周のラリーが目標だという。それも大勢の参加者で一斉に走るのではなく、サポートカーを伴走させながら5~6台の車両を参加者が乗り換えて、繋いでいくという壮大な仕掛けだ。

「参加者の都合が良い日程で参加することで、エリア別に走ることが可能だと思います。車両をみんなで繋ぐことで世界一周が達成できますよね」と熱弁を振るう。古宅さんの〝遊び〟は尽きることがないようだ。

画像: ゴルフや釣りが競合相手 顧客の趣味を二輪車へ誘因

◆KTM埼玉 所在地=埼玉県さいたま市緑区芝原2-13-1
▽営業時間=10時30分~19時30分
▽定休日=月曜日
▽☎048-767-6330
http://www.ktm-saitama.com/

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