二輪車新聞社便り

2019-07-09

ホンダPCX150を購入して、初めてわかったこと

妻と娘に「これなら後ろに乗ってみたい」と言わせた“高性能”

 

非常に個人的なことで恐縮なのですが、ホンダのPCX150を昨年購入させていただきました。職権乱用とも取られるかもですが、各メーカーさんが媒体向けに開催して下さる新型モデルの試乗会というのがありまして、PCX150もホンダさんが開催した試乗会で乗らせていただき、かなり気になるモデルとなったのが購入の発端でした。

 

私はのんびりと乗るよりは、加速感を味わったり、車体を左右に動かしたりすることのほうが好きで、いい年をしていまだに速いライダーに憧れを抱いているおっさんなので、正直、スクーターは、便利だなぁとは思うのですが、乗るために乗るという感じでもなく、あまり興味がありませんでした。

 

中学生になった娘の部活が忙しく、その送迎や発表会の観覧など、他の生徒や家族と合同で動くことなどもあり、家の自動車が空いていないことが増えるようになりました。私は1000ccのスポーツバイク・CBR1000RRも所有していますが、何かの用足しには全く役に立たない乗り物であることを、最近実感しています。

 

物は積めない、人は1人運べるけど辛そう、着いてから脱いだヘルメットの処遇にも困る始末。背中に何か背負うにしても、前傾姿勢のバイクはこれもあまり快適でありません。雨なんて降ろうものなら、外出はあきらめる方向になります。もう一台の四輪の購入もハードルが高いし、と思っていたとき出会ったのがPCX150でした。

 

サイズが原付二種クラスということもあり、あまり大きくないのですが、身長180cmほどの私でも乗車姿勢が楽であり、軽量コンパクトな車体は扱いやすく楽しかったです。125ccでも街中では充分な力を発揮しますが、150ccなのでいざとなったら高速道路もいけてしまうというのも、こしゃくな魅力の1つでした。

 

昔、ホンダのリードに50と100がありましたが、全く同じ車格なのに、かたや最高速度30km/h、二段階右折、一人乗り、かたや2人乗りができて、速度制限も30kmではなく、二段階右折の必要もない。排気量が違うだけで、こうも違うのかと思いました(それなのにどちらもファミリーバイク特約が適用)。

 

今回の150でも原付二種と軽二輪とまるで違う立場になるのに、見た目はほぼ同じというのも、またおもしろいなぁと感じ、実際の高速道路での性能はさておき、「高速道路もいけちゃう」というところがおもしろく感じたのと、「原付車で高速道路を走ってみたい」と、何故か昔から、小さいバイクで広いところを走るのが好きな私にはぐっと来たPCX150なのでありました。

 

LEDの灯火類にDC12Vソケット、低燃費なうえに大型の燃料タンク、アイドルストップ機能、前後長ある大容量シート下収納を持ち、新型はなんとスマートキーを採用。もう、「他にないだろ、こういうの」と、唯一のバイクに思えてしまったのでした。

 

「バイクを売ったお金は、次のバイクの資金にせねばならない」を信条とする私ですが、以前の車両を手放した際のお金を、様々な危機を乗り越えながらキープし、そのお金に毎月、コツコツと貯め、「早くしないとカラーリングが来年型になってしまう」の恐怖と戦いながら、なんとか購入にこぎつけました。近所のドリーム店で購入させてもらったのですが、150ccという排気量もあり、ドリームのオーナーズカードも発行され、レスキューサービス3年もつきました。怖いものなしです。

 

これで、車が無くとも、頼もしい車両ができました。しかし、意外な反応が待っていました。

 

車両の購入を家族に告げると、カタログの写真をみて、妻が「いいじゃん、こんなバイクもあるの。いい色ね。これなら後ろに乗ってみたい」と言い、娘も「私も」となり、すぐに家族3人でヘルメットの被り方講習会が始まったのでした。

 

納車して最初に乗ったのは娘で、スーパースポーツとは違う、低く余裕のある後席と贅沢なステップ、何より“落ち着いて座っていられる”ことに満足なようで「楽しい」と。当時は秋の夜でしたが「気持ちいい」とも言っていました。

 

以降、「私はまだ、乗せてもらってない」と嫁からの攻撃をかわしつつ、ようやく嫁とは買い物に行くことになり、駐車場や近隣の道路が混む大型のショッピングモールに向かったのですが、道中のストレスは無く、安定しておだやかなPCX150には満足だったようです。体が前後なので、顔を見て話すことはないのですが、顔が近いことやアイドリングストップもあって、会話も問題なく、小さいバイクに2人乗りで、“こじんまりとした一体感”で移動していくのは楽しかったです。

 

高い出力や運動性で非日常を体感させてくれるのもバイクの魅力のひとつですが、リラックスした姿勢で、アクセルをひねるだけで走り、見た方向に曲がっていく乗り物で静かに移動していくのも、バイクだなぁと感じるようになりました。

 

新設計のフレームや、サスペンション、特性が改められた駆動系など細かいところまで徹底した開発がなされているのは技術説明で伺いました。怖いとか、ストレスとかを与えないような、走ったあとで「そういえば、あまり不具合はなかったなぁ」と思わせるのも、大きな性能の1つですね。

 

私からすると「これなら後ろに乗ってみたい」と家族に言わせたスタイルは本当に「高性能」だと言わせていただきたいし、その後も「もう乗らない」と言わせなかったのもまさに「高性能」だと思っています。でも、これからは、「車が混むから」「行った先に駐車場がないから」が出掛けるのを断る理由にならなくなってしまったのは、ちょっと心配ですが。

 

駐輪場ではバイクカバーをかけているのですが、スマートキーのアンサーバックボタンを押すと、カバー越しでも「チカ、チカ、」と応えてくれるのは、呼んだら応えてくれるようで、生き物みたいです。でも、ある日押しても反応が無かったのです。バッテリーが上がったのかとおもったのですが、何もせずに10日以上たつとアンサーバックしなくなるそうな。乗らないでいると拗ねるみたいで、そこも生き物みたいで、おもしろいなと感じています。

 

そのちょっと先にちょっと歳のとったCBR1000RRが「こっちも乗ってね。拗ねるよ」と佇んでます。二人乗りした家族には不評なCBRですが、「お前のすごくて楽しいところは、俺だけが知ってるから」と、家族が知らない“非日常”を共有できるのも、またバイクならではだなとも思いました。

 

二輪車新聞編集部 記者 猪首俊幸