一字千金

2018-07-20

Vol.25「車両販売店の「高質化」 実現以上に「維持・改善」は難しい」

奥井俊史/アンクル・アウルコンサルティング代表

現在、我が国の二輪車市場における年間販売総台数からみると、新車の販売店は4000店もあれば十分である。しかし、現状はこの約2倍近くの販売店が存在する。さらなる販売店の淘汰は、まだこの先も進むだろう。

同時にオートバイに求められる社会的な機能として、輸送手段としての実用性の観点では一層弱まり、代わってサービスレジャー・スポーツ面での楽しみの提供の要素が一層重視されるようになっていくだろう。この基本的な変化に対応することができる販売店が生き残っていく。現存する販売店のクオリティは、まだまだ玉石混交である。

現在、二輪車メーカー各社で進められているブランドを訴求する新しい販売チャネル・店舗・店頭造りは、そうした変化する需要構造に対応するものである。

ブランドが想定する顧客を満足させるに足る、顧客にとっての好ましい購買環境創りを追及するものである。ブランドの広告塔と呼ぶにふさわしい、ブランドの世界を表象するに足る店舗造りを強力に展開して、その店頭にブランドの商品群をコーディネイト展示して、今までの店舗でややもすれば軽視されがちだった「高質化」を実現する。

結果的にブランド価値が高められれば顧客の満足度は高まり、値引きの必要性もなくなり、顧客に対する各種のサービスで充実した販売を展開できるようになる。顧客・販売店の双方にとって実質的に「高質化」された店舗が実現する。

店舗、店頭、商品とその展示などのハード面の高質化の実現を基礎として、積極的にソフト面でも「高質化」が可能となる。顧客に提供できるソフト面でのプログラム内容も充実して、店のオーナーやスタッフにとっても、「高質化」が実現した店舗で、顧客満足度の高い働き方が自ずと実践できるようになる。

これは人間の心の常として、ほぼ自動的に実現される。この労働環境の大幅な改善の上に、メーカーの新しいチャネル政策の下、販売店の一層のオペレーションの改善が期待できるし、導入される新しいマーケティング政策に基づくプログラムによって顧客の満足が高まり、販売店の店頭およびスタッフの一層の「高質化」が実現する。

各社の店舗自体のハード面での「高質化」は出揃った感もあるが、オペレーションの高質化まで実現しているところはまだ少ない。現実的にはせっかく先行して実現されていたトータルな店舗・店頭における「高質化」が、時の流れ、時間の経過に伴う経営方針の混乱などによって、大幅に損なわれたブランドもあるようだ。

「高質化」の実現も難しいが、その維持、一層の改善はさらに難しい。だが、忘れてならないこととして「高質化」こそ、持続的成長の基本であるという当たり前のことを改めて提起しておきたい。

プロフィール

奥井俊史氏 (おくい・としふみ)

1942年大阪府生まれ。65年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。75年より東南アジア市場の営業担当し、80年トヨタ北京事務所の初代所長に就任。83年より中近東市場で営業担当。90年にハーレーダビッドソンジャパン入社、91年に同社社長に就任し、19年間に数々の施策を展開し日本での大型二輪市場でトップブランドに育て上げた。09年より現職。