一字千金

2019-10-11

Vol.34「原点回帰の販売店管理②」 在庫管理

奥井俊史/アンクル・アウルコンサルティング代表

新車については、その在庫管理に特に重点を置き、販売店のHD在庫車の一台一台の状態について、販売店と同じデータをHDJでも把握できるようにした。逆にこのシステムや情報を各販売店にも提供し、流通在庫車の情報を共有した。

HDJから出荷後45日(ある時点では60日としていた時期もあった)を経過した車両は、HDJファミリーの標準では「長期在庫」として認定して、全店がその内容をコンピューター上で見られるように「長期在庫リスト」として作成。全ファミリー販売店に内部公開した。

ここまでやっていても、毎年、モデル末期(例年6月~8月)に確認すると、在庫期間2年以上の車両も2~3台は発生した。在庫期間が2年以上の車両は、強制的に販売網売店で自社登録をしてもらうようにして、在庫管理表から抹消したが、それでも強制的に行える事柄ではなかったため、モデルイヤーを持ち越すことがあった。

ともかくファミリーとして、腐った長期在庫の発生を防ぎ、値引きの発生源が生まれないように、細心の注意を払ってトータルの在庫管理を行った。長期在庫は、諸悪の根源であることを肝に銘じていた。

販売台数が多い時でも、年間約1万6000台強の限られた車両を、約130のHD販売店で分け合い、また30モデルの異なった商品に分割してみると、モデルや販売店によっては一台も行き当たらないモデル・カラーの車両もあった。それらの店で在庫を持っていない車両に顧客がついた場合、この長期在庫リストを参照して、在庫を保有する販売店から独自に直接仕入れることができ、ビジネスチャンスを生かすことができるようにした。ファミリー内では、このような融通を重視した。

HDファミリー以外へのいわゆる「転売」は、ファミリーの持つ最大の特典を阻害するものとして、全販売店が厳しい自覚をもって厳格に自粛してもらった。なお、格別の扱いがない場合には、販売データの分析で、不良転売登録の実態は確実に把握できていた。

これらの取り組みの結果、販売店収益の向上に大いに貢献したと考えている。HDJ在籍中の年間1万6000台の販売実績は、公に知られるイベントや販促活動などの表面的な取り組みの裏では、車両メーカーとして販売の原点にある販売店、そして販売店の財務や業務、管理などの分野まで、地道にそして深く関わってきたことは大きいといえるだろう。

プロフィール

奥井俊史氏 (おくい・としふみ)

1942年大阪府生まれ。65年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。75年より東南アジア市場の営業担当し、80年トヨタ北京事務所の初代所長に就任。83年より中近東市場で営業担当。90年にハーレーダビッドソンジャパン入社、91年に同社社長に就任し、19年間に数々の施策を展開し日本での大型二輪市場でトップブランドに育て上げた。09年より現職。