考えるリーダー/Interview インタビュー

2018-10-12

国を挙げ原付の利活用を(下)

大村直幸会長

議連の協力を得ながら

高速道路料金の是正へ

前回のインタビューに続き、全国オートバイ協同組合連合会(AJ)の大村直幸会長に、高速道路ETC二輪車ツーリングプランや、今後のAJの活動について聞いた。

――電動(EV)スクーターなどの法規制も今ひとつ実用的面で明確でない。

「昨年12月に環境省にうかがった時、原付車を含めた環境規制対応があまりにも現実とは異なっていると指摘した。EVは世界的な波になり、大きな中国市場がEV車へ向いている。ただ中国はエンジン技術の面で日本やヨーロッパなどのメーカーに対抗することが難しいため、EVへ向かったと見ることもできる。他国メーカーが無視できないのは、中国13億人が市場としてあるからだ。

ただEV車イコール、エコではない。EV車のエネルギー源である世界の電力は約40%が石炭による火力発電。中国ではその比率が約70%だ(日本では約30%)。EVは四輪車でも環境負荷が大きい。車両の生産、バッテリーなどの処理にもエネルギーを使う。こうした生産から廃車処理までの全体を見た場合で、二輪車でも全面的にEV化が進む未来がくるのかどうか、環境省も半信半疑の状況であろうと感じた。また、現在の原付車の市場のボリュームを減らさずに、EV車に移行できればよいということのようだ。この方向性は経済産業省とも共有できていると認識している。

そのためにはメーカーも、一気にEV車に移行するのではなく、EVの性能や価格が消費者に受け入れられるのか、慎重に検証を進めるべきだ。EVに限らず、二輪車の利活用がエコであり、例えば四輪車から現行のスクーターに乗り換えることで確実に環境負荷が減るということだ。二輪車の利用が増えることでエコが進むというスタンスで、取り組んでもらうことが望ましい。

日本でも、ベンチャー企業がEVスクーターを製造しているが、利用者の安全やメンテナンスを我々がしっかりやらねば大きな問題が発生するため、この点も含め注意が必要だ。

利活用の点では原付(50cc)の法定最高速度30㎞が、もし40㎞になったら、四輪車との速度差が少なくなり、走れるエリアが大きく増えて、原付の利便性が高まる。駐車違反取り締まりの見直しと一緒に緩和されれば、原付車は爆発的に利用が増えるだろう。原付を〝使える乗り物〟にする方法はまだまだある」

――二輪車の高速道路ツーリングプランが実施された。次のステップとしての取り組みは。

「高速道路での軽四輪と二輪車の料金が同額であることは、誰が見てもおかしい。国会議員の先生方も国土交通省(国交省)の方もそのように思っていると思う。

高速道路料金に関する昭和63年の答申でも、『利用者のニーズに対応し、割引制度等適切な対応が重要』とする旨の記載がある。30年間で二輪車の高速道路の利用状況が大きく変わっている。台数や走行距離、頻度も増えているはず。これに対応しないで料金を変えずこれまできた。だからAJとしてはしっかりと値下げを要求していきたいし、そのタイミングが近いうちにあるのではないかと思っている。

ツーリングプランは国交省と各高速道路会社が取り組んでいる。値下げのためではなく、利用状況把握の実証実験というスタンス。そのため昨年実施されたツーリングプランの収支も検証されていない。ユーザーに納得感のある価格設定なら、売り上げが増えるのはどんなサービスでも当然のこと。二輪車の高速料金は軽自動車の8分の5。この価格設定で道路会社の収入が減らなければ、誰にも迷惑はかからない。この仮説を検証することが重要なステップになる。

さらに、二輪車と軽自動車は同じ料金区分であって、二輪車の利用状況は分けて把握できないと言われているが、画像分析技術があるこの時代にそんなはずはないと思う。とはいえ、今年のツーリングプランは、昨年より大幅に拡大し、5カ月以上に渡り、保有台数の多いエリアを網羅したという。非常にありがたい。今までの議論の流れで、現状可能な最大限を引き出して頂いたと感じている。

先の125ccまでの原付免許、高速道路のツーリングプランなど、ある程度の結果がでてきたので、自民、公明両党のオートバイ議連などや自民党二輪車問題対策PTなどと、課題や今後のスタンスについて、今話し合っているところだ。その中でPTの逢沢一郎座長は高速道路料金の問題が『1丁目1番地』といわれており、この問題をグッと進めていくべきだろうと。結果を求めていきたい。その可能性は出てくる時だ」

――二輪車販売店の一経営者として、現状をどう見る。

「約160万台の保有車があり、大型車(小型二輪)は商売になるとか、レジャーユースになり、大型車が商売になると思い込んでいる方もいるが、国民の足は原付車などのスクーターだ。新車販売台数が減っても、保有台数では大多数で原付車が占めている。我々二輪車業界の訴求力はこのユーザーの数に支えられている。従ってスクーターなどの利用が将来的に減少しない状況をつくらねばならない。そうしたベースを失えば、二輪車業界の発言は力を失っていくだろう。大型車が趣味の一部ユーザーの数に対し、国や行政は動けない。そうならぬようにするためには、国民の足として、また利用者が製品の車両価格や性能など含め乗り替えたいと思う存在として、原付車が必要だ。

50ccギア付車が少ないがギア付車が増えれば新たな需要が生まれ、そのユーザーの多くが軽二輪、小型二輪へ移行するだろう。これを種まきといわずに何というのか。一製品毎の収支とは別の話ではないかと思う。我々はメーカーと調整して、ストレートに飛び込んでいきたい。種をまかなければ、刈り取る実は生まれない。先に延ばせば、未来はさらに厳しい時代になるのかもしれない。

保有台数もそうだが、二輪車販売店の約7割は、原付車などで生計を立てている。さらに安全、メンテナンスなどすべてに取り組んでいる。そうした販売店が成り立たなくなり、店舗が減少すれば、多くの利用者の安全も担保できなくなる。大きな問題だ。日本の中小零細企業を守る上でも、しっかり取り組まねば業界にとって大きなダメージだ」

――AJ活動で今後、注力するところは。

「二輪車の復権は、今が最後のチャンスと思っている。利用者、保有者をこれ以上減らすと発言力が失われていく。利用環境を訴えても誰も聞いてくれなくなる。今、改善すれば二輪車の利活用のチャンスは残されている。猶予はない。一方でAJ活動には提携クレジットカード『クラブAJカード』のサービス内容が、ユーザーに受け入れられ、販売店にもメリットがある。その他にも提携する企業の皆様にも支えられて、AJが成り立っている。各組合で今は組合員の若返りも見られ、そうした組合の活動は活発だ。今後の活動にも大いに期待できる」

紙面掲載日:20181012