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2018-10-05

出光イーハトーブトライアル大会 42年の歴史が培ったライダーの理想郷

「第42回出光イーハトーブトライアル大会」(主催=テレビ岩手/出光イーハトーブトライアル大会運営実行団)が8月2526日に岩手で開催された。今年で42回を数えた同大会は、国内で最も歴史があり、最大規模で開催されるトライアルの大会だ。

初級者~ベテラン 約480人が参加

イーハトーブトライアルは、前大会会長の万澤安央氏と前副会長の成田省造氏が、スコットランドで開催されている世界最大規模のトライアル大会SSDTの魅力に触発され、自然環境が良く似た岩手で1977年に開催を始めた大会だ。毎年8月の最終土日に岩手の北緯40度線沿線の11市町村を舞台に開催され、ナンバー付きのトライアルバイクでツーリングをしながら、途中に設けられたセクションに挑むツーリングトライアルの大会として人気があり、今年も全国から約480人が参加した。

イーハトーブトライアルの魅力は、なんといっても北上山地の自然豊かなロケーションだ。この大会のために解放された林道や牧草地を、コースマーカーを頼りに駆け抜け、視界が広がる絶景の中に設けられたセクションがライダーを迎えてくれる。また、競技だけでも6クラスあり、初心者から上級者までが、自分の日程やレベル・体力にあったクラスを選べるもの参加しやすい理由だ。20歳以下の参加費が無料(保険料のみ)で、家族割引、団体割引があるのも、モータースポーツとしては珍しい。

奥中山高原をスタートし、太平洋沿岸の普代村・田野畑村まで走り、翌日に奥中山高原へ戻ってくるイーハトーブ伝統のダイナミックな2日間コース(走行約270km)。安比高原をスタート・ゴールとする気軽に参加できる1日コース(約100km走行)。どちらのコースにも、トライアル初心者・上級者クラスが設定されている。

2016年に、日本のトライアル界を牽引する成田匠氏が大会会長に就任して以降は、「本物志向」が高まり、初級者の参加間口も広がった。去年からはトライアル国際A級以上のみが参加できるクラスが新設され、本物のトライアルの魅力を参加者や観客が間近で観られるようになった。子供や大人のトライアルスクールも複数開催され、元全日本チャンピオンで、現在はヤマハファクトリーの監督でもある木村治男氏や、大会会長自らも講師となり、将来のトライアルライダーの育成に力を注いでいる。さらに今年は、トレイルバイクで初歩的なトライアルセクションに挑戦出来る「トレイルトライアル」が新設された。このクラスは本格的なツーリングトライアルを目指すライダーのための入門クラスで、全日本トライアル選手権IAスーパークラスに参戦する野崎史高選手が引率し、セクションの走り方をレクチャーする人気が高いクラスとなった。

そして大会開催には、地元の理解や協力も欠かせない。また選手たちにとっても、地元の人との交流は楽しみの一つだ。沿道では農作業の手をとめてライダーに手を振る人たちがいて、空き地や民家の軒先では「どうぞ」と誘導され、採れたてのスイカやトマト、飲み物が振る舞われ、いつの間にかライダーたちの休憩ポイントになる。

こうした地元の理解や協力には「実行団」と呼ばれる地元ボランティアスタッフ達の存在も大きく影響している。大会のために特別に走ることができる林道や作業道の手入れは「実行団」たちも行っている。16年に岩手に甚大な被害を出した台風10号の後にも、実行団の有志たちがいち早くトライアルバイクで被災地を訪れボランティア活動を行った。今年、ライダーにフルーツの振る舞いを行った人の中には、「あの時にお世話になったからその恩返し」と笑顔を見せる当時の被災者の方もいた。

地元の人たちも楽しめるように、競技の観戦ポイントは事前に地元へも告知され、セクションにトライするライダーの走りに一喜一憂し、暖かい応援を送る。こうしてライダー達は、この大会が地元に愛され、支持されていることを痛感し、「イーハトーブ」(理想郷)という名の通り、ライダーにとっての理想郷に心から感謝し、また来年も参加したくなるのである。

今年の8月には、「走ろう!東北 MFJ 東北復興応援ツーリング」も開催され、県外からもツーリングで観戦に来たライダーの姿も多く見られた。このようなバイクイベントを通じて、岩手の素晴らしさを体感してもらうことは、観光立県を促進する1つの手段として大きな可能性を秘め、注目されている。出光興産は、地元に密着し貢献している大会趣旨に賛同し、89年から冠協賛をしている。イーハトーブトライアル大会は、また来年の8月最終土日に開催される予定だ。

(文=近藤スパ太郎)


「1日コース」は安比会場がスタート・ゴールとなる


新設された「トレイルトライアルクラス」は皆で助け合う


ライダー育成を目的にした「こどもアドベンチャートライアル」の様子


大会アンバサダーに就任した全日本トライアルレディースの小玉絵里加選手


サインをねだりにやって来た地元の子供達

紙面掲載日:201810月5日