二輪車用品のEコマース最大手「Webike」を運営するリバークレインは、二輪車販売店や取引先向けに各種サービスを提供しているが、その一つが二輪車業界専門の求人情報サイト「JOBIKE」。販売店や二輪車用品メーカーなどの求人をメインに280社以上の企業を掲載し、月平均2万人が訪問するサイトとなっている。企業からは募集を出してすぐに問い合わせが来るレスポンスの早さに驚いたという。実際に利用した企業とJOBIKEの担当者2人に話を聞いた。

「JOBIKEで求人を募ったところ、すぐに応募がきた。レスポンスがこんなに早いのに驚いた」と、目を細めるCFMOTOモーターサイクルジャパン代表の佐藤芳樹氏。同社は2023年から輸入二輪車CFMOTOのインポーターとして活動しており、25年からは社名を改めさらに事業を拡大中で、スタッフ募集は喫緊の課題であった。そこで、JOBIKEで募集をかけたところすぐに応募がきたと振り返る。

JOBIKEを利用した(右)CFMOTOの佐藤代表と応募者の五味氏

同社に応募してきた五味孝輔氏は「CFMOTOという輸入ブランドに興味があり、インターネットでバイク向けの求人を検索して出てきたJOBIKEで、CFMOTOが求人を募集していることを知り、応募しました」という。

五味氏は現在大学に在学中で、26年3月の卒業まではインターン扱いで勤務。25年11月開催のWebikeフェスティバルでも、同社ブースで業務をサポートしていた。卒業後はしっかり働いてもらうと佐藤氏は言う。

同事業を担当する、リバークレインで国内事業の統括マネージャーを務める楠山泰生取締役と二輪車販売店を担当するモトコミュニケーション事業部の甲斐秀俊サブマネージャーに、JOBIKEを立ち上げたきっかけを聞いた。

JOBIKEを担当するリバークレインの(右)楠山取締役と甲斐サブマネージャー

「JOBIKEは14年にスタートしました。当時から販売店や用品メーカーなど、主には当社の取引先の企業様より人材不足が深刻だと打ち明けられており、そうした悩みを解決し二輪車業界に貢献したいという想いで立ち上げています。掲載料金も当時は無料でした。その後、18年に有料化を行い、20年にサイトの大幅リニューアルを実施。求人企業様や応募する人たちに使いやすく見やすいサイトに仕上げました」

「開始初期から基本コンセプトは変えずに、現在もアップデートを続けています。当社はシステムを全て自社で開発しているので、そうした更新を強みとしています」と、楠山氏は振り返る。

JOBIKEのサイトhttps://job.webike.net/

「良質な人材を確保したい企業に評価」楠山氏

スタートして10年以上経過しているが、導入初期から現在も継続して掲載している企業は業務を拡大して人材を採り続けている所が多いという。「良質な人材を確保したいという企業様に評価をいただいております」と、楠山氏は述べる。

有料化へ踏み切ったのもわけがあったという。立ち上げ当初は無料ということもあり、掲載後も求人票を更新せずそのままにしていた企業も多かったが、有料化したことで採用する企業も情報の質を高めることを意識しはじめ、導入企業も増えていったという。

求人情報の掲載数では大手求人サイトやハローワークの方が多いが、JOBIKEは二輪車業界だけに「特化」しているのが特徴になっている。おかげで、求人する企業も応募者にとっても、確度の高い情報が得られるようになっている。

「応募者も一般の人が未経験で飛び込んでくるよりも、自分を成長させてくれる企業へステップアップするというケースが多いですね。応募者にとっては経験をそのまま活かすことができる。そして、企業にとっては経験値の高い人材を獲得することができる。二輪車業界内での転職をしっかりやってもらうためのアシストとして効果が大きいと思っています」と、楠山氏は主張する。

甲斐氏は最近のトレンドとして「勤めていた会社を退職してしばらく二輪車業界から距離を置いていたけど、戻ってくる人材が増えているようです。業界へのリターンですね」と、分析する。また、子どもたちが独立した、あるいは身体が元気で動けるうちに憧れていた二輪車業界へチャレンジしたいという50歳代の応募者も少なくないという。

JOBIKEをより多くの人に見てもらう仕掛けにも積極的に取り組んでいる。「JOBIKE」は、Eコマースサイトである「Webike」内にもバナーを設定しているが、これとは別に“リターゲティング広告”と呼ばれる、ネット上でJOBIKEの記事に対して興味関心度が高いと判断されたユーザーへ広告を配信する方式も別料金のオプションとして用意している。

求人者がネットで二輪車関連の求人を検索するとJOBIKEのバナー広告が他サイトにおいても端末に表示され、広告の設定によっては自宅近くで掲載されている求人がピンポイントに表示されるという配信方法も可能になっている。

さらに、注目度の高いコンテンツにも注力している。求人企業の特集ページを設けて直接企業に出向き、経営者やスタッフへの撮影・取材を行っている。大手企業とは異なり、就職・転職活動にあたっていわゆる「企業研究」の余地がないことが多い販売店の状況を補完するものになっている。

楠山氏は「取材者も二輪車業界を知り尽くしたジャーナリストにお願いしている。企業の歴史や経営者のフィロソフィー、人材育成や設備投資などはもちろん、勤務する人たちの生の声を聞き、お客様とのコミュニケーションの取り方などを掘り下げて取材してくれる。JOBIKEの本当の価値を提供できるコンテンツになっています」と、力を込める。

「入社前に応募する企業の特集ページを見て『社内の雰囲気や社長の考え方がしっかり分かったので、安心して応募ができました』という、声を数多く頂戴しております。募集企業へのアクセスや問い合わせの数といった、数字には表れない部分ですが、そこが評価されていると思います」と、甲斐氏も主張する。

「応募者から安心して応募できたという声も」甲斐氏

「企業様にはストーリーを含めた提案もしております。例えば、ある販売店様はハウスチームが毎年鈴鹿8耐へ参戦しており、日頃はメカニックとして勤務する一方、年に1度耐久レースの現場でレースメカニックとしての活躍の場も得ることができる、というストーリーで提案しました。メカニックの仕事を覚えて生活できるようになって、その延長上での自己実現も可能だと。それで、応募者がきて採用に結びついたと喜んでもらえました」と、破顔する。

最近では、企業への提案も濃密な内容になってきたと甲斐氏は続ける。

「各企業様の事情もありますが、例えば既存社員の待遇改善と新規採用条件のバランスなどにもしっかり向き合っておられる経営者様は、やはり応援したくなります」と述べる。また、経営者が代替わりするタイミングで、人材の育成や制度などに力を入れる経営者が増えており、そうした相談を受ける機会も増えてきたという。

楠山氏はJOBIKEを含めた専門サービスを今後も提供し、強化していくことで「販売店様や取引先の縁の下の力持ちでありたい」と、表明する。