なぜなら、本気でバイクに乗って遊ぶことが、そのままスタッフの顔に滲み出るからです。バイクを売る人が、バイクに乗って元気になることは、商売としてプラスになることはあってもマイナスになることはないと思います。
本題はその先です。ふと入ったカフェ。代金支払い時に、静かだけど聞き取りやすいスピードとボリュームでニコッとしながら「今日はバイクなんですね。お近くですか?」と声をかけてくれました。
実はこの時に彼から「元気」を感じました。その数日前に入った、びっくりするほどの大声で「いらっしゃーい!」を連発する寿司屋よりもはるかに心に届く温かな響きで、とても新鮮でした。
声が大きいだけの通り一遍のあいさつ=形式だけのあいさつ。温もりを感じない一方通行はかえって心が寒くなります。
お客様は一人ひとりすべて異なるから、ほんのわずかでいいので特徴をつかんだ言葉の振りが大事ですね。
名前で呼べば、なおのこと元気が双方に生まれるかもしれません。バイクショップのスタッフはたとえ忙しくても表情は穏やかで、他の誰かが対応していても、軽い会釈と小さなスマイルがあればさらに良いと思います。
温もりのある10%のスピードダウンを
その上で、忙しい時こそ、10%でいいからいつもよりゆっくり動く、ゆっくりと相手のことを思って話しだす──たぶんそれがお客様にとって「敬意を感じる」→「居心地が良い」→「双方が元気になる」のだと思います。
バイクはそもそも楽しむ乗り物ですから、お店では笑顔の対応がスタートライン。忙しいと、ついつい誰でも強張った顔つきになってしまいがちです。作り笑顔まではできるけど、そこをさらに改善したい。その時のヒントは「温もりのある10%のスピードダウン」にあります。
もともと我々日本人は自分を表に出さない人種なのでしょうか。私もバイクレッスンでその点は気を付けているのですが、重要論点のひとつは作り笑顔=接客マナーではないという点です。
そしてお客様に心から末長くバイクを楽しんでいただくためには、まず自分が安全にバイクを楽しむ!という当たり前を忘れない。そして、日常の移動で10%速度を落として走るのと同じように、余裕のある接客。そしてその時の笑顔こそが、お客様を魅了して「元気のいい店」を作っていくのではないかと思います。
プロフィール
柏 秀樹(かしわ・ひでき)
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。