周囲から安心して見てもらえるライダーに
進路変更では早めにウインカー入力する。進路変更後にウインカーを消すのも少し遅めでいい。法規通りでは交通の実態に沿わないことが多いし、すぐにウインカーを消すとドライバーからは「合図をしていない」などと誤解されやすい。周囲を驚かせず、ライダーである自分を安心して見てもらう。これこそがマナーだと思うのです。
たとえば道を譲ってもらった時。ちょっと手を上げるのではなくゆっくり大きく手を挙げる。せわしい交通環境であるほど、あえてゆったりしたわかりやすい仕草が周囲に優しく、しかも自分に平常心があることのチェックになるのです。高速道路ならクイックにレーンチェンジせず、長距離バスのように長めのウインカー入力で確実に行う。
「私はこうします!」と自分の行動を周囲にわかりやすく伝える「旗幟鮮明」こそ、真のマナー。同時に、思いつき運転よりはるかに高品位な運転を生み出します。
トークの現場で私は、後ろに置かれた化粧ボードの継ぎ目をセンターラインに見立てて説明を始めました。
ライダーはどこを走るか。まっすぐ走る時も漠然と走らず、ラインと速度のムラがないまさに軌道をトレースするブレない運転を推奨しました。
具体的には、直線路では道の真ん中あるいはセンターラインから左1メートルあるいは左の白線から1メートルを走行するなど。これは周囲を安心させつつ、自分の安定意識の確認になります。直線走行が不埒なままだと、ワインディングのカーブではセンターラインやガードレールギリギリの走りとなりやすく、周囲はもちろん自分までハラハラします。
アウト・イン・アウトなどのレースまがいの走りは、自分の生存空間が急激に減っていくだけ。速い走りを自分のテクニックと勘違いしていく、不毛な世界へ没入するだけです。
峠道では自分の車線の中央を維持する、CKMことセンター・キープ・メソッド走行を、私はツーリングレッスンの基本形としています。高精度なCKMは意外に難しく、スキルを上げる絶好のチャンスになり、対向のクルマやバイク・自転車との衝突リスクを減らす護身運転にも直結します。
登壇したゲストのお子さんが自転車に乗っている話になった時、フラフラしないブレない運転を!とお願いしました。そのためにバイクも自転車も脱力が不可欠。速さよりはるかに価値ある脱力&高精度運転は安全空間を創造していく大事な習慣になります。漠然とゆっくり走るだけでは漫然運転になりやすいので、ここは厳密に識別すべきです。
お客様の安全があってこそのバイク専門店。怪我や事故のないバイクライフを送っていただく。いくつになってもバイクに乗り続ける…そんな環境作りのサポートも、バイクショップのお仕事だと思います。
プロフィール
柏 秀樹(かしわ・ひでき)
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。