二輪車用品Eコマースの最大手「Webike」を運営するリバークレイン(東京都世田谷区、信濃孝喜代表取締役社長)。Eコマースのシステムはもちろん、二輪車販売店向けの業務支援ソフトも自社で作っており、スマートフォン用のアプリも制作している。同アプリで話題なのが、愛車で走ることでマイルが貯まり、そのマイルをポイントに換えることができるサービス「Webikeモトマイレージ」だ。開発に携わった担当者二人に話を聞いた。

アプリ全般のプロモーションを担当する内山氏

アプリプロダクトディレクターの物部氏

モトマイレージを立ち上げたきっかけは、バイクをもっと長く楽しんでもらうために開発した、と語る内山正昭氏。「せっかくバイクに乗っても手放してしまう人、特に若い世代における離脱率の高さに危機感がありました」と振り返る。内山氏はこれまで二輪車販売店向けの営業を担当していたが、現在は「Webike(ウェビック)」アプリ全般のプロモーションを担当している。

2020年から21年はコロナ禍における緊急事態宣言や外出自粛もあり、密を避ける移動手段として二輪車の新車販売が急増。用品においても販売が伸長するなど、業界全体が盛り上がりを見せた。ただ、その後の勢いは続かず、特に若い世代は二輪車を所有したのは良いが、楽しみ方が分からず、周囲に仲間もいない状況で2~3年後に、愛車を手放す人たちが増えてきたという。

内山氏は「信濃(代表取締役社長)も、バイク文化はツーリングが一番大きな楽しみ方であり、そこを重視していました。初心者にもツーリングが楽しめるような仕掛けが欲しい。ブームを一過性で終わらせてはいけない、という危機感が信濃にはあったと思います。そこで、もっとアプリに力を入れようとしたのが2~3年前でした」と、続ける。

19年から導入したスマホ向けのウェビックアプリも当初は、Eコマースや販売店で利用できるウェビックポイントが貯まるアプリとしてリリースしたが、その後ツーリング向けの機能を拡充。特定のエリアにたどり着くとポイントがもらえる【チェックイン】機能や【走行ログ(軌跡)】を記録する機能を搭載。24年には、走行中に利用しているユーザー同士がすれ違うとあいさつできる【Webikeヤエー】機能を追加。さらに今年3月には1キロ走行するごとに1マイル獲得できる【Webikeモトマイレージ】機能も搭載。獲得したマイルは同社のECサイトでポイントとして交換・利用できるもので、ヤエーも1回につき10マイルを付与するなど、機能を拡充していった。

「Webikeモトマイレージ」のイメージビジュアル

ただ、開発現場では相当な苦労があるようだ。ウェビックアプリのアプリプロダクトディレクターである物部拓也氏は「机上のパソコンと違い、スマホは通信回線が安定しているものではないので、通信が途絶えることを前提に作らなければいけません。接続が復旧しても進めていた操作が戻ることなく、安定して使えなければいけません」と述べる。

システムエンジニア出身の物部氏は、以前は金融機関に籍を置いていたが、自分が作ったモノを多くの人に見てもらいたいという思いから、リバークレインに入社。現在は内山氏と同じグループでアプリ開発の中心を担っている。このほど導入したWebikeヤエーについてもすれ違いを判定するのに苦心したそう。

「バイクなので、お互いが低~中域の速度で走っていることを認識する必要があります。スマホの位置情報を基に一定の範囲でお互いを認識できるようにしています。スマホ同士の通信だとブルートゥースが知られていますが、それだと消費電力の制約や電波の強度、そして速度域によっては適切ではありません。なので、弊社のサーバーですれ違いの判定をするように設定しています」と、説明する。今も日々更新をし続けており、アップデートに余念がないとしている。

内山氏「やることは山ほどある」

モトマイレージを導入したことで嬉しいこともあったという。今春開催の東京モーターサイクルショーで同社はブースを初出展した。ブースへのチェックインでポイントを付与する告知があったのと、モトマイレージをリリースした直後ということもあり、多数の来場者が訪問。最終日には来場者が集中したことで、動作遅延が発生。ポイント付与を急きょステッカーの配布に切り替えるなど大人気だったという。

また、ブースではマンガ・アニメで人気のコンテンツ『終末ツーリング』とのコラボレーション「終末ツーリング×Webikeマイレージ」を実施していることをPR。登場人物の旅の舞台を巡り、全スポットをチェックインすると最大3000ポイントを付与するもので、期間は11月3日まで実施している。

終末ツーリングとのコラボビジュアル(c)2025 さいとー栄/KADOKAWA/「終末ツーリング」製作委員会

現在アプリの利用者は4万人を超え、3月からのモトマイレージ導入以前と比べると10倍以上に伸長。ユーザーも増えたことで1人当たりの走行記録距離も飛躍的に増加。ヘビーユーザーの中には2カ月で8000キロ近く走る猛者もいるという。ただ、通勤や業務で二輪車を使うライダーとしての利用が相応の割合を占めており、ツーリングに使っているユーザーはまだまだ少ないとしている。

物部氏「ライダーの必携アプリに」

モトマイレージはツーリング好きな人たちが作り上げていく機能で、利用者が増えることでバイクユーザーもどんどん増えていくと内山氏は述べる。「将来的にはユーザーから集まってきたデータや写真とコメントなどを一つのマップに出して、エリアごとのツーリングプランナーのようなサービスを提供していきたいです。やりたい事は山ほどあります」

地方自治体からも問い合わせが増えているという。「自治体が町おこしとして訪問者をもっと呼び込みたい狙いがあるようです。あと、今年9月に熊本県大津町で開催のバイク・ラブ・フォーラムで周辺エリアを巡るツーリングラリーを実施するのですが、ウェビックアプリを採用していただくことが決定しております。期間中はぜひ利用していただきたいです」と、続ける。

一方、モトマイレージはユーザーだけでなく、販売店が顧客に向けたツールとして活用してほしいと内山氏は説明する。「全国の販売店様が、自社の顧客に向けたツーリングプランを企画することができると思います。販売店を起点に目的地まで、チェックポイントやスタンプラリー等を設定することで、顧客同士でツーリングが楽しめるプランとして提供することが可能です。販売店のスタッフが付き添いしなくても完結できますし、なにより、ツーリングで得られたポイントは店舗に還元してもらうことで、販売店様にとっても、顧客にとっても、より良いツールになるはずです」。こうした機能についても開発を予定している。

物部氏は「(ウェビックアプリを)ライダーの必携アプリにしたいですね。グーグルマップと同じくらいの利用者を獲得できるように。もちろん今後も品質や機能も充実させていきます」と意気込む。

モトマイレージの導入によって拡がりを見せるウェビックアプリ。ネット通販から、ツーリング先のガイドまで二輪車ライフに欠かせないアプリになりそうだ。