リフレッシュプランはお客の愛車を預かり整備を行い、車両をベストコンディションに維持するサービスで、新たなプロジェクトとなる。これまでにホンダは、二輪車に長く乗り続けてもらいたいとの思いから16年よりNSR250の純正部品再生産などを始め、以降CB750FOUR、CB750Fなどの純正部品再生産も行ってきた。今回RC30のリフレッシュプランにあたり、RC30の部品の再生産も行われ、整備と部品の再販売を同時に行う新たな試みとなる。
ホンダでは四輪のNSXですでにリフレッシュプランを展開しているが、今回対象モデルとなったRC30は当時、鈴鹿8耐や世界耐久選手権などで活躍したレースマシンRVF750の技術をもとに開発され、チタン合金なども採用された高性能スーパースポーツモデル。NSX同様ホンダを象徴するモデルだとしており、熊本製作所内に開設のモーターサイクルリフレッシュセンターで、8月上旬よりお客から預かったRC30のコンディションを高める整備が開始される。NSXリフレッシュセンターでセンター長を務めたリーダーや、当時RC30の開発に携わった人物なども今回のプロジェクトに参加している。
説明会の冒頭、あいさつに立った本田技研工業二輪事業本部事業企画部事業企画課の永井康晃課長は、最後に「ホンダはこれまで以上にモノづくりとコトづくりの両輪で、お客様のバイクライフの幅を広げ、多様な社会、個人の状況に合わせた楽しみ方をサポートできる快適な商品、サービスを強化していきたい」と締めくくった。
受付はホンダドリーム7店舗
87年発売のRC30は発表時には国内での販売台数1000台のところ3倍近い注文を受け、抽選販売となった。海外を含めた総生産台数は4885台。30年以上が経過した現在でも国内において7割が所有され、30周年オーナーズミーティングなども開催されている。
リフレッシュプランは基本メニューを始め選択項目となるプランメニュー、オプションメニューの3つからなる。店舗で7月28日より受け付けるが、受付店はホンダドリームの7店舗でホンダドリーム酒田、高崎、王子、足立、杉並、名古屋西、北九州となる。ここに電話で問い合わせるところからプランはスタートし、車両の状況などを聞き、国内向け販売車両であることや、保安基準への適合、重大事故やレースでの酷使などで、フレームや重要保安部品などに復元不可能な損傷がないことなどの条件が確認されたのち、受付店へ車両を持ち込み、整備士による車両や書類の確認となる。
申し込みに際しては、熊本のリフレッシュセンターから整備士が受付店へ行き、お店のスタッフ、お客との3者で車両を確認しながら整備メニューを協議し、了承の上でお客が申込書に記入し整備申込となる。
その後、リフレッシュセンターへ車両を搬送し、分解確認、追加整備などの必要があれば、お客へ了承確認を行った後に整備を開始。整備後は出荷前完成検査を実施し、実走行でも車両の状態を確認。リフレッシュプラン保証書も作成され、整備箇所に関しては、6カ月か1万の保証が付帯する。整備完了した車両は受付店に搬送されお客への受け渡しとなる。整備の期間中に熊本のリフレッシュセンターを訪れて整備の状況を見学することも可能という。
基本メニュー、プランメニュー、オプションメニューの3つのメニュー
3つのメニューのうち申し込みしたすべての車両が受けるのが基本メニューで、▽エンジン(排気ガス点検、点火タイミング確認、タペット調整、オイル等の交換など)▽ブレーキ(前後ホース交換、シール、フルード交換など)▽クラッチ(クラッチホース、マスターキット交換など)▽燃料・吸気操作系(燃料コック、ホース交換、キャブ同調、各種ケーブル交換など)▽電装(コンタクトベース、ハイテンションコード交換など)の項目で整備が行われ、料金(以下消費税別)は54万9000円。
プランメニューはエンジン系、車体系があり、エンジン系では▽キャブレター(料金19万5000円~)、▽シリンダーヘッドバルブ(キャブレタープラン含む、94万8000円~)▽クラッチ(15万7000円~)に、これらすべてを含む▽エンジンオーバーホール(179万5000円~)がある。
車体系では▽サスペンション(11万9000円~)▽フェアリング(190万7000円~)▽電装(8万5000円~)があり、フェアリングはFRPで再生産され、熊本製作所で塗装されたフェアリングに交換されタンク、ホイールの再塗装が行われる。
オプションメニューはクランクシャフト、コンロッドの交換、フレーム、スイングアームのクリーニング、前後サスペンションオーバーホール、ステムベアリング交換、スプロケット交換、前後ブレーキマスター交換など豊富に用意され、オーナーの要望で追加することが可能となっている。
リフレッシュプランを行うために必要な部品の再生産も決定され、コンロッドやピストン、クランクシャフト、エアクリーナーエレメント、フロントフォーク、ワイヤーハーネス、カウル、スクリーン、シート、マークラベル類など約150点にも及ぶ多くの部品が再生産される。これまでRC30の部品の供給は52%にあたる約650点であったのが、約800点となり65%をカバーするものとなる。
リフレッシュプランのためだけの再生産ではなく、部品単体の購入を希望するお客にも販売が行われ、自分で修理をしたい人や、付き合いのあるお店での修理を希望する人などにも対応する。部品はホンダ全製品の補修部品供給体制に則り、鈴鹿物流センターから全国の二輪車正規取扱店に出荷。全国のホンダコミューター、ホンダドリームで購入が可能となっている。RC30の再生産部品についても150点の中から、コンタクトベースやスピードメーターケーブルなど34点が6月30日より販売が開始されている。
リフレッシュプランで扱うRC30は年間10台を予定。今回はRC30のプランとなるが、今後は、これを手始めに、対応できる車種を増やしていく計画もあるようだ。
熊本に開設のモーターサイクルリフレッシュセンターで整備を行うのは1人で、ホンダサービスセンターで整備士の経験を持ち、浜松、熊本製作所で新機種の品質保証業務を長く経験した吉岡真一氏が担当する。吉岡氏は「主に1人で車両の整備を担当することになるが、作業自体もそうだが、プロジェクトの今後にも関わるので正直、プレッシャーは大きい。オートバイを好きな人は、機種にのめりこんで愛情を持っている人が多いと思うので、そういうところをメーカーとして汲んでいけるようにしていけたらと思っている。車両によって状態はいろいろだと思うが、作業が終了した車両をお客様に、気持ちよく乗れるようになりましたよとお渡しできたらいいなと考えている」と述べていた。