行政・学校・関係団体など 官民連携で安全教育
同講習は、主催者に県教育委員会、共催に県指定自動車教習所協会、後援に県警察本部、県交通安全協会、県二輪車普及安全協会、県高等学校安全教育研究会、県交通安全対策協議会、そして協力には講習会場となる自動車教習所という体制がとられる。今年度も埼玉県を地区分けし、東部、西部、南部、北部を各1回、秩父(2回)の全6回、8月上旬の秩父会場を皮切りに、12月下旬までが計画されている。
講習内容は大きく分け講義(座学)、実技講習、救急救命法の3項目。受講の際には、新型コロナウイルス感染拡大の観点から、指導側、受講側とも検温やアルコール消毒、マスク着用などの対策徹底のもとで行われる。
今年度2回目となる8月6日の講習会場となったのは、加須市内にある埼北自動車学校。今回の講習の受講対象は東部地区の県立高校の生徒で、当日は34名の生徒が受講した。
講習に先立ち屋内教室では開講式が行われ、冒頭、主催者を代表して、埼玉県教育局保健体育課の担当者があいさつ。「この講習をしっかりと受けて交通事故に遭わないよう必要な知識と安全運転技能を身に付けてほしい」、また、「新型コロナウイルス対策でマスクを着用し、距離を保ち配慮して講習に臨んでほしい」旨が述べられた。
実技講習は、埼玉県警女性白バイ隊「SKIP」を含む交通機動隊白バイ隊員が指導の中心になって進められ、埼玉県安協職員、そして埼玉県二普協から派遣された二輪車安全運転指導員らも加わった。
準備体操、車両日常点検、乗車姿勢、運転時の装備(ヘルメット、プロテクター)についての説明が行われた後、SKIPや指導員がブレーキングやコーナリング、バランスなどについての各課題の模範走行を披露。この後、車両に乗車した生徒たちは各課題に臨み、その都度、インストラクターからワンポイントアドバイスが行われた。
座学では、県警交通部交通総務課の担当者による「交通社会の一員としての自覚」をテーマにした交通安全講話を実施。県内の交通事故情勢を踏まえた上で、二輪車の特性として「見せる・見られる運転」「危険予測」「死角と内輪差」「バランスとブレーキ」について説明した。
さらに「交通事故を起こした場合に発生する責任(刑事処分、民事処分、行政処分)」「重大な交通事故を起こして処罰を受けた場合に就けなくなる職業」「交通事故を目撃した時の対応」「交通事故を起こした時の対応」「二輪車事故の特徴」「損傷部位」「被害軽減のためのヘルメットやプロテクターなどの重要性」「交通社会の一員としての自覚(免許制度、命の大切さ)」「交通ルール遵守の重要性」についても説明。交通事故は誰にでも起こりうることで、けがをさせない、しないよう心のブレーキを頭の片隅に置いて安全運転を心がけてほしい旨が語られた。
救急救命法については、会場となった埼北自動車学校の職員による講習を開催。通常の講習はAED(自動体外式除細動器)を使った心肺蘇生(胸部圧迫、人工呼吸)の実技実習だが、新型コロナ予防の観点から、DVD上映を使った講座に切り替えて実施。AEDを使ったことで心停止から命が助かった実際のケースについて放送されたテレビ番組が紹介され、その重要性が示された。
講習スケジュール終了後には閉講式が実施。県警交通総務課の担当者からは「今日教わったことを普段の二輪車運転に役立てて、お手本になるような運転を心がけてほしい」、実技指導にあたった白バイ隊員からは「今日は事故を起こさないためのコツを皆さんに体験してもらった。これは特別なことではなく、二輪車はこういうものだということを理解し、技術的にある程度体得でき、安全運転をしてもらうことである。帰ってからはこれを皆さんの日々の安全運転に活かして、自分の目標に合った人生を歩んでいってほしい」との激励があった。
最後に県教育局保健体育科の担当者から「参加した生徒については、学校に報告した。学校に戻ったら講習を受けたことを担当の先生にしっかりと報告してほしい」旨が述べられた。
高校生の「命守る」「健全教育」目指す
※埼玉県では、高校生による自動二輪車等(原動機付自転車および自動二輪車)の免許取得や車両の購入・乗車を認めない、いわゆる「三ない運動」を1981年から約38年間展開していたが、これを廃止。2019年4月1日から新指導要項「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する指導要項」が施行された。
新指導要項の目的には「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する基本的な事項について定め、高校生の命を守り、充実した高校生活を通じて高校生の健全育成を目指す」を掲げている。
新指導要項の概要は▼県は、生徒が在学中のみならず生涯にわたり交通事故の当事者とならないよう、学校における交通安全指導の充実を図る。学校は生徒および保護者に対し、交通安全指導を実施する▼自動二輪車等の運転免許の取得等を希望する生徒は、保護者の同意のもと、学校に書面で届け出る▼利用しうる交通機関がなく、かつ遠距離の場合などに限り、自動二輪車等での通学を許可(原則、排気量50cc以下の原動機付自転車)する▼学校は、運転免許取得者を把握し、県等が主催する交通安全講習の受講を積極的に促す──としている。