宮城さんは元ホンダワークスライダーで、現在はモトGPの解説者を務め、ツインリンクもてぎにあるコレクションホールの所蔵車両のテストライダーをも務めている。今回、モデル化されたRC213Vにも試乗経験がある。「自分が乗っていたNSR500などのマシンと、現在のモトGPマシンは大きく違う。圧倒的なパワーに、ものすごいグリップのタイヤ。電子制御が占める割合も大きくなってきている。自分のレベルではマルケスのようにタイヤを滑らせることなんてできなかった」とRC213Vの感想を語り、加えてシームレスミッションの説明など、一般には未知の部分のあるワークスマシンの話に来場者は耳を傾けていた。
未知な部分のあるワークスマシンは、ライバルがいる世界だけに明かされない部分も少なくないようで、模型化に際しても一般市販車とは違った苦労があったという。モニターに映し出された写真を見て、宮城さんが「こういう真横からの写真は、チームが嫌がって撮らせないんですよ。ディメンションとかがわかってしまうので。よく撮れましたね」と聞くと、設計の古谷さんは「これはモーターサイクルショーの会場で歪みのない写真を撮るために50メートルほど離れたところから狙って、人の波が切れた瞬間に撮ったものです」と、実車を購入できないワークスマシンならではの苦労を明かした。
プラモデルの作成は、まずこのように実物を取材し資料を集めるところから始まり、それを縮尺に合わせて立体化する作業となる。様々な角度からの写真などをもとにコンピューターにデータを入れていき、現在は3Dプリンターなどで試作を作っていくという。今回のモデルでは1/12にしていけば正確な模型となるのだが、実際に数ミリしかない部品は1/12にするわけにもいかず、模型にすると厚みが出てしまう部品もあるという。そういった場合は最終的にうまく各パーツが収まるよう調整を行うのだが、今回のモデルについてはカウルの裏側を削り、エキゾーストマニホールドが当たる部分の逃げを作るなどしている。また、スクリーンなども薄い部品となるが、先端のみを薄くし実物の感じを出しながら、クリアパーツゆえに接着剤などで汚れてしまわないように、接着剤なしでも取り付けられるよう工夫がされている。
今回のRC213V、実車でもみられる透明のタンクパッドもクリアパーツで再現。凹凸のなかにあるH型の突起までも再現されているという。フレームの溶接痕など実に忠実に再現されたモデルであるが、マルケスのセッティングそのままに幅広に取り付けられたハンドルについては、社内から設計ミスではとの声も出たという。詳細なデカールや塗り分け用のマスキングテープまで同梱される同モデル。今回、フロントのオーリンズサスペンションなどの質感を高める金属パーツや、レプソルの特徴的な蛍光オレンジのスプレー塗料も発売される。
トークの合間にモニターに表示されるRC213Vの写真を見ながら「これ、どっち?実物?」と宮城氏に言わせるタミヤのRC213Vはバイクファン、模型ファンもうならせる完成度を実現しているようだ。
紙面掲載日:2016年4月22日