同フォーラムは、交通安全教育活動に取り組む企業や有識者などに活動発表や講演をしてもらうことで、他の企業や団体、機関などの参考にしてもらおうと、毎年行われている。後援には埼玉県警察本部交通部、埼玉県交通安全対策協議会、埼玉県交通安全協会、埼玉県安全運転管理者協会、日本二輪車普及安全協会、国際交通安全学会が、協賛にはホンダの安全運転普及本部と法人営業部が名を連ねる。
冒頭、あいさつしたレインボーモータースクールの佐竹正規社長は「各自動車メーカーでは自動運転に向けた運転支援システムをさらに進化させていくが、事故撲滅に向けた取り組みの主役はドライバーとライダーの教育だと思う。そしてこの活動は大変緻密である」と述べた。
これに加え、ホンダ創業者・本田宗一郎氏が70年頃に米国のNASAに行き、アポロ13号が奇跡の生還を果たした時のコントロールセンターの司令官と話をしたエピソードを披露。
その司令官から「無事生還できたのは、機械による自動制御に任せるのではなく、要所、要所を人間がコントロールしていたから」という言葉を聞いた本田宗一郎氏が、「機械がいくら進歩しようとも、基本は人間である」と感じ、ホンダの安全運転普及活動についての宣言を行った話が語られた。
佐竹社長は「現代の交通事故発生原因を分析し、ドライバー心理をとらえ、いかに効果的に事故撲滅に向けた安全活動をしていくべきかを、本日の講演の中でヒントを持ち帰ってほしい」と述べた。
続いて来賓を代表して埼玉県警の後藤秀明交通部長があいさつ。「安全は交通に限らず、社会生活を生きていく上での基盤である。皆様方の社内で交通事故を含めて様々な面で安全をしっかりと確保してほしい。これがひいては県内の交通事故防止にもなり、皆様方が目指すところでもあると思う。こうしたフォーラムを契機に、安全とは何なのかをもう一度考える機会にして、より一層安全に努めてほしい」と述べた。
今回のフォーラムは「職場内の安全は、交通・労働・健康のトライアングル」がテーマ。このテーマに沿って、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ総務部の蒲博史氏と本田技術研究所二輪R&Dセンター管理室安全衛生・CGブロックの吉川達也氏の2人が事例発表を、続いて順天堂大学大学院医学研究科(公衆衛生学)の谷川武教授が講演を行った。
ジョンソン・エンド・ジョンソンの蒲氏による発表テーマは「セーフフリート(安全運転)を企業文化に」。セーフフリートを企業文化にしていくため、①TOPのコミットメント②継続かつ徹底した活動③効果的なトレーニング――の3項目を掲げ、業務車両使用者およびマネージャーのセーフフリートガイドライン策定、PDCA(計画、実施、監査、見直し)サイクルに基づいた年間活動計画策定、効果的トレーニングとして直属上司の役割や事故後コーチング、ドライブレコーダーの活用、新卒および中途入社講習、雪道講習、優良運転者表彰などについて発表した。
本田技術研究所二輪R&Dセンターの吉川氏は「心・技・態〟交通安全の取組み」をテーマに発表。二輪R&Dセンターは通勤車両が四輪約1000台、二輪1500台と二輪が多く、二輪通勤者への心(思いやりの心)・技(危険予測の技)・態(模範となる態度)の考えをもとに安全運転教育を推進。レインボー埼玉の全面的協力を得て、オリジナルの二輪車安全運転研修を実施。
二輪車安全運転研修では、感覚スピードやブレーキ特性別体験、法規履行、ヒヤリハット体験、危険への「気づき」を学んでもらい、交通安全総合研修では四輪と二輪の右直危険体験ゾーンや蛇行運転による二輪車のすり抜け危険ゾーンなどを学ぶ内容が紹介。「心に響く研修を行い、ホンダの交通安全基本理念である心・技・態を実践的に体感することで通勤災害を1件でも少なくする取り組みを行うとした。
谷川教授による講演では、「睡眠呼吸障害(SDB)の早期発見・早期治療による安全向上と健康増進」をテーマに、SDBの健康・安全への影響、スクリーニング検査と治療方法、今後の対策について述べ、居眠り運転の一員であるSDBを早期発見し、再発防止を図り、安全性を向上させるべく、眠気などの主観的な判定テストだけでなく、客観的な手法を重視するSAS(睡眠時無呼吸症候群)スクリーニング検査を、特に職域において義務化すべきであるとの考えを示した。
閉会式では交通教育センターレインボー埼玉の中村元樹所長があいさつ。「自動車の安全運転技術が進化し、交通を取り巻く環境整備が進む中で、相変わらずドライバーの意識不足による事故が多い。中でもここ数年は高齢者に起因する事故が大変増加していることが危惧されている。交通参加者となる子供から高齢者まで社会全体で一貫した安全教育、人間教育の必要性を改めて強く感じている」と述べた。
紙面掲載日:2017年2月3日