個性とテクノロジーを強調
「ヌードー」を標準で装備
キムコの台湾本国での支持は圧倒的で、17年連続で新車販売台数1位を誇るだけでなく、昨年の年間販売台数は33万台、シェアは41.4%にも達する。
そのキムコが50年の集大成として作ったのがAK550。フラッグシップモデルの本国での発表というだけあり、会場の台北マリオットホテルには、300人を超える招待客と各国メディアが集まった。
発表会のコンセプトは「心。移動趨勢」。オーケストラの生演奏からスタートしオープニングVTR放映後、300席の客席そのものが移動するというダイナミックな趣向は、会のコンセプトを印象付ける演出のひとつ。
最初にRACING S150とNEW MANY110の紹介がされた。ゲストとして、バドミントン女子シングルス世界ランキング1位の戴資穎選手とプロ囲碁棋士の黒嘉嘉氏が登場し、それぞれが「(バドミントン競技に)スピード感を追求する私のニーズにとても合う」「国際的ブランドでファッショナブル。軽いマシンで女性にも向いている」と語るなど、自身が日常的にキムコに乗るライダーであるとした上での感想が披露された。
また、黒嘉嘉氏は自身のスマートフォンで自分の写真を撮影し、その場で写真をNEW MANY110のメーターパネルに表示させ、ヌードーの楽しさをアピールした。
続く王定義社長のあいさつでは、近年好調なキムコの市場動向の説明があり「今日ここで歴史を作りたい」と今回の発表会の位置づけを強調した。
会の終盤にはステージ上を数台のAK550が走行。その中心ライダーはコウ会長で、革ジャンにデニムというスタイリッシュな出で立ちで登場。「キムコがグローバルブランドとなれたのは、新しい考え方、新しい技術で消費者に満足してもらう製品を作り続けてきた結果だ。今後、二輪車の新しいトレンドを生み出す」と力強く語った。(詳細別掲)
翌日には日本の二輪車専門誌編集長向けに、自社が保有するテストコースでのAK550他マシンの試乗会が開催された。
ユーザー目線で
昨年のスクーターモデル販売台数実績で、ドイツとスペインで1位、イタリアで3位といったように、スクーターに高品質とデザイン性を求めるヨーロッパ市場ですでに高い人気を獲得したキムコだが、日本国内においては、法人設立以前の安売りイメージがマイナス要因となり、ヨーロッパと同レベルの価格帯にもかかわらず販売にブレーキがかかっている面があることは否めない。
また、当初目標としていた販売店100店舗が現在68店舗など、クリアすべき課題もまだ残っている。しかし昨年欧州でAK550を発表して以来、二輪車販売店からのディーラー開設の問い合わせや、ユーザーからの商品に関した質問が多く寄せられるという。
15年春、日本へ本格参入をすべく100%出資の子会社であるキムコジャパン(王彦傑会長)を設立したが、キムコが目指す目標は大きい。「今後、台湾のリーディングカンパニーとしての責務を全うしたい」(コウ会長)の言葉通り、見ているステージはグローバル市場だ。当然、欧州同様目の肥えたライダーが多い日本で、評価を高めたいという思いがある
すでにイタリアで3000台、台湾本国で500台の先行オーダーが入っているという中で、今後AK550の日本のユーザーからの反応に注目が集まる。
また、世界市場でのスクーターカテゴリーにおいてトップシェアを目指すキムコは、これまでにない、「ヌードー」という全く新しいユーザー目線のサービスをスタートさせた。これには「ハードの開発だけでは、グローバルな二輪車市場で先頭に立ち続けられない。走行性能が高く、デザインも洗練されているのは当然。そこに独自の魅力ある〝IoV〟があれば、それがキムコらしさになる。ソフト開発で世界をリードしてきた台湾メーカーならではの強みをそこに出せる」(キムコジャパン広報企画室・伊庭武臣氏)との思いがあるという。
キムコが思い描く二輪車の未来は、自社が提供する「ライダー中心のスクーターライフ」とともに、今後さらに独自の進化を遂げていきそうだ。
コウ会長あいさつ概要 「業界大変革を」
「キムコはこれからの二輪車の新しいトレンドを生み出す決心をした。今までイタリア、アメリカ、日本、ドイツの各地をかけ回った。世界初の新技術であるヌードーもPRもしてきた。そして今、キムコは世界中で注目されて、台湾も国際的な舞台で注目されるようになった。
台湾はキムコの故郷だ。すでにキムコは過去の小さな会社から、大きな企業にまで成長した。地道な活動を続け世界五大陸で活躍しているグローバルブランドとなれたのは、新しい考え方、新しい技術で消費者の心をつかむ製品を作り続けてきた結果だ。
今後、台湾のリーディングカンパニーとしての責務を全うしたい。キムコは常に顧客の求めるものを深く考えている。台湾国内ソフトウエアの実力と連携して、業界大変革の新しい考え方と新技術を発表していく。
今回発表した3つのマシンすべてに、新しいトレンドを搭載している。それはヌードーだ。ヌードーは情熱溢れるシステムだ。自分のスクーターを、スマートな乗り物にしてくれる。秘書の役割もしてくれる。ヌードーを使って、愛車とモバイルライフとを融合させ、ライディングがより楽しくなるような統合を図った。
この発表会のテーマでもある「心。移動趨勢」の通り、キムコはまず第一に消費者を考え、製品を通じて喜びと成果を提供したい。ユーザーに満足を与える──これはキムコのモットーだ。これからもこの信念を貫き、消費者に満足してもらえるマシンを作っていきたい」
質疑応答概要
発表会ではAK550に関して、日本のメディアからコウ会長への質問の場も用意された。質疑応答の概要は以下の通り。
──日本で想定するAK550のユーザーは。
「AK550はスーパーツーリングをキーワードとして、キムコのフラッグシップモデルとして開発した。日本市場では30~40歳台で、すでに車と二輪車を所有する人を想定している。レジャーでの使用を主たる目的として、高い運動性能を体感しつつ渋滞でも快適に旅行を楽しめるだろう」
──台湾本国でも発表に至った今の率直な気持ちは。
「今までで最も力を入れて作ったモデルで、まさにキムコ50年の集大成だ。ヨーロッパでの発表後すでに世界的に話題になり、想像以上に反響が大きく嬉しい」
──シート高が低めに設定されているが。
「低くデザインすることによって重心も低くなり、ライダーに安心感も与える。ヨーロッパ向けにハイシートを設定する予定もない」
──想定するライバル車は。
「価格帯や性能が似ているモデルはあるかもしれないが、AK550を開発するにあたっては、キムコの精神を伝えたい、フラッグシップモデルを作りたい、消費者が一番喜ぶ性能のモデルを作りたいという思いを持って開発した。どのモデルがライバルだとか一切考えていない。AKとヌードーは大きな役割を背負っている。今後AK550を、世界の中でのトップモデルにしていきたい」
──日本のライダーに向けてのメッセージを。
「AKは我々がライダーの立場に立って、ライダーにどのようなライディング体験をしてもらいたいかを考えて作ったモデルだ。スクーターに乗っているのでなく、モーターサイクルに乗っているというフィーリングを体験してほしい。キムコのオリジナリティが入ったテクノロジーとAK550ならではのスリルのあるツーリングを是非体感してほしい。AK550の個性を感じてほしい」
紙面掲載日:2017年6月30日