所属選手ら意気込み語る
今シーズンのメインとなるレース活動については、チーム所属2年目の梶山采千夏選手と、新規加入の田中風如選手を起用し、「CBR250RR ドリームカップ」に参戦することを発表した。同チームは新型のCBR250RRを2台投入して、筑波サーキット大会と鈴鹿サーキット大会に全戦出場する。さらにはグランドチャンピオンシップ大会への出場および優勝をめざすという。
「梶山選手は、昨年はCBR250Rで頑張ってくれたので、2年目の飛躍に期待している。田中選手は、ロードレースデビューを我々のチームで迎える。若い選手を大切に育てていきたい」と、2人のライダーに期待を込める中野監督。
一方、チーム所属3年目となる松山琢磨選手は、昨年より参戦している「アジア・タレント・カップ(ATC)」に継続参戦。練習の際などに56RACINGからマシンが貸与され、同チームからのレース出場も何戦か予定されている。
15年から同チームに所属する埜口遥希選手は、「FIM CEV レプソルMoTo3ジュニア世界選手権(CEVMoTo3)」へ他チームから参戦。また、「レッドブル・ルーキーズ・カップ(ルーキーズ・カップ)」への参戦も決定している。56RACINGからのレース出場はないが、日本での練習時など、引き続きサポートしていく。
中野監督は、海外レースに出場する両選手について「松山選手は、ロードレース界の新人ライダーのなかでも期待できるライダー。ATC参戦2年目、チャンピオンを目指して頑張ってほしい。埜口選手は、CEV レプソル選手権に加えてレッドブル・ルーキーズと、よりMoToGPに近づいているような場で頑張って、MoToGPへの切符をつかんでほしい」とエールを送った。
56RACING各選手インタビュー
◆梶山采千夏(かじやまさちか)選手:16歳◆
昨年から56RACINGに所属。1年目は「CBR250Rドリームカップ Eクラス」に参戦し、筑波サーキットのシリーズ戦では毎回コンスタントに表彰台入り、鈴鹿サンデーロードレースでは初参戦にして優勝するなど、好調なスタートを切った。また、各サーキットのシリーズランキング上位者が出場するグランドチャンピオンシップ大会にも出場を果たし、全体では19位、CBR250R勢では6位と健闘した。
「以前はレースでなかなか結果が出せなかったけど、56RACINGに加入してから急に良くなった。やり方が変わったこともあるし、バイクが合ってたというのもあると思う」と梶山選手。レースの前には緊張をしがちだというが、「チームの人たちや応援してくれる人たちが肩の力を抜くようにと元気付けてくれる」と話す。また、レースでは競り合いが好きで、人数が多ければ多いほど楽しいようだ。ライバルとなるのは女性ライダーではなく、チームの後輩にあたる田中選手だという。田中選手に対しては「負けたくない」と闘争心をみせる一方で、才能には一目置いている様子。「教えられることがあればできる限り教えたい」と、先輩としての一面を覗かせた。今年はCBR250Rドリームカップのステップアップクラスに位置付けられる「CBR250RRドリームカップ」へ挑戦するが、「CBR250RRでもグランドチャンピオンシップに出て、次は全国優勝することができればと思う」と目標を掲げた。
◆田中風如(たなかふうご)選手:14歳◆
今年56RACINGに加入し、ロードレースデビューとなる田中選手。9歳でポケバイレースを始め、17年には「NSF100HRCトロフィー」のジュニアチャンピオンシップクラスで優勝するなど、すでに頭角を現している。
「レースで楽しいのは、後ろから抜かして抜き返されずに放していくこと。勝つことに意識が入って、気づいたら1番前でゴールしたりとかすると最高」と田中選手。
昨年は「MFJロードレースアカデミー」に参加して、サーキットを走るテクニックを磨いた。56RACINGの練習ではすでに250ccマシンに乗り、アカデミーで乗り方の癖を矯正してきたことで、150ccからの乗り換えがスムーズに進みそうだと実感している様子。
そんな田中選手はスタートが苦手のようで、「グリッドに並んでエンジンをかけると緊張で身体がガチガチになって、いつもウィリーしてしまっていた」と話す。一方で、序盤で失敗したときは結果が良いときも多く、「意識の外で緊張がほぐれて、普通の状態で走れているのかもしれない」と分析している。今後は、そういったメンタル面を克服することが課題だとのこと。
今年の目標は「筑波と鈴鹿でしっかりと優勝をつかむ」こと。将来は、世界に行くことを目標のひとつに掲げているが、「日本国内でも活躍したいし、色々な道があると思う」と視野を広げている。
◆松山拓磨(まつやまたくま)選手:14歳◆
昨年は、アジア&オセアニア地域の若手ライダーを育成するプロジェクト、アジア・タレント・カップ(ATC)に初挑戦。序盤では、怪我によるレース欠場など苦戦を強いられたが、MoToGPとの併催で行われた第5戦日本大会では、母国ファンの前でレース1、2とも勝利を挙げた。
松山選手は「自分の中では1番いいレースだった。知ってる人がいっぱい見てくれてるのでとても緊張したけど、そういうなかで優勝できたのはすごく嬉しい。この先のことを考えてもいい経験だったし、自信にもつながった」と振り返る。
初めての海外で特に苦労したことは、言語の違いだったという。
「英語での会話ができなかったんで、マシンの新しいセッティングには苦労した。今年は英語でちゃんとマシンの状態とかを話したい」と松山選手。また、トレーニングに関しては、言われたことをこなす以外に、自主的に考えて実践しているとのこと。
今年の目標については「去年はチャンピオンを逃がしたので、ATCでチャンピオンをとりたい」と述べる。
将来は、CEVMoTo3やルーキーズ・カップへのステップアップを経て、MoToGPライダーをめざす。そのためには、もっと体力を高めていく必要があると感じている様子。
松山選手は「いつかMoToGPでチャンピオンを取って、日本にもっとバイクを広めていきたい」と展望を力強く語った。
◆埜口遥希(のぐちはるき)選手:17歳◆
今年、MoTo3の登竜門と言われるCEVMoTo3やルーキーズ・カップへの参戦が決まり、MoToGPライダーになるという夢に前進した埜口選手。
海外でのレース活動は今年で3年目。昨年、一昨年とATCに参戦し、昨年は開幕戦カタール大会で早くも1勝、続く第2戦タイ大会ではダブルウィンを果たす。この第2戦では全てのセッションでトップに立ち、自身も昨年のベストレースに挙げている。惜しくも年間タイトルは逃がしたが、2年連続で、日本人最上位の2位となる。
埜口選手はこの2年間の海外経験について「経験豊富な人たちと各国を回らせていただいて、得るものばかりだった。日本だと先回りして助けてもらえる部分も多いけど、自分がこうしたいときにはこう言わなきゃ伝わらないっていうことも含めて、色々考えさせられた2年だった」と話す。
体力面については自信があるほうだという埜口選手だが、ATC1年目は気候や環境が変わり、きつかったという。そこで、わざと暑い昼間の時間帯に走り込むなど、率先して体力づくりを行ってきた模様。
目標としてきた2つの海外レースへ参戦することについては、「ここで頑張ることでMoTo3に行けるかもしれないってところまで一歩進んだので、今まで以上にトレーニングをしていかないといけない。行ってみないと分からないことは多いけど、シーズン前に対策できるところはしたい」と話し、中野監督とも話し合っているという。
今後の目標については「まずはMoTo3に行くこと。でも、今は先を考えるより今年どうしようかなと考えて、1つ1つのレースに集中していきたい」とし、「まずは今年、開幕から良い結果を残せるよう頑張っていきたい」と意気込みを述べた。
紙面掲載日:2019年3月15日