「NGK MoToDX」発表
加速性・耐久性・耐汚損性・燃費・始動性向上
外側電極に新形状「D-Shape」、
中心電極に二輪初の「ルテニウム」採用
二輪専用で開発した「NGK MoToDX」は、混合気の流れや火炎の拡がりを阻害しにくい「D-Shape外側電極」を使用することにより、自社従来品(一般プラグおよびイリジウムIXプラグ)と比較して効率よく火花ギャップ(火花放電が起きる中心電極と外側電極の間隙)に混合気を導くことが可能になり、さらに球状に近い理想的な燃焼を実現したという。
その大きな特長の一つに挙げられる、新素材採用D-Shape外側電極と、二輪初のルテニウム配合中心電極。D-Shape外側電極は、文字どおりアルファベット「D」の形状をした断面になっており、その特長として▼混合気の流れを阻害しにくい電極形状で、効率よく火花ギャップに混合気を導き、吸気時の効率が向上▼火炎の拡がりを阻害しにくい電極形状で、より球状に近い理想的な燃焼を実現し、着火時の効率が向上──となっている。
自社製の一般プラグ(自社製品ニッケルプラグ)・イリジウムプラグ(自社製品イリジウムIXプラグ)に比べると▼レスポンスに優れた加速性=抜群の着火性能により加速時のスロットルレスポンスが向上。低回転域から高回転域までストレスなくエンジンの性能を引き出し、優れた着火性を実現。テストでは加速性が自社製一般プラグに比べ0.2秒アップを実現▼燃費効率の向上により燃費を改善=信号待ちや渋滞でのアイドリング状態でも効果を発揮。アイドル燃費テストでも自社製一般プラグに比べガソリン消費量が2.3%少なかった──という。同製品では、絶縁体先端部のサーモクリアランスを自社製一般プラグよりも拡大。これにより火花リークを防ぎ、優れた着火性を常に保つという。
新素材を採用したD-Shape外側電極とルテニウム配合中心電極により、ロングライフも実現。NGKイリジウムIXプラグや自社製一般プラグが3000~5000kmなのに対し、NGK MoToDXプラグは8000~1万kmで約2倍と、飛躍的に向上した。
MoToDXトークショー
二輪専用設計への熱い想いを語る
発表会では「NGK MoToDX」スパークプラグの性能などについて語るトークショーが行われ、日本特殊陶業からは松井徹・取締役常務執行役員と鈴木徹志・自動車営業本部市販技術サービス部部長が、そしてゲストとして元ロードレースライダーの宮城光氏が加わっての熱いトークが展開された。
中・大型二輪向けに
松井常務は、このタイミングで二輪車に特化した製品を開発した経緯について、「日本の二輪車保有台数はピーク時の1800万台から、今では1000万台を少し超えるぐらいにまで減少してきている。しかし大幅に減っているのは50ccの原付一種で、126cc以上の中型から大型までのクラスは増えている。ユーザーも40歳以上の中高年が多く、ここから推測されるのは、テクニックもあり、違いが分かり、酸いも甘いもかみ分けているようなライダーがツーリングやカスタマイズなどバイクライフを楽しんでいると理解している。そうした方々に、より良い走りを楽しんで頂こうということで開発した」と狙いを語った。
また、「二輪のプラグに関しては、世界のマーケットの7割シェアを獲得しており、世界中の方々にご利用頂いていると認識している。一方で『二輪用の新しいプラグは無いのか』などといった要望もいろいろあった」と語る。
MoToDXの開発にあたっては、日本特殊陶業の若い社員が中心となっているという。松井常務は「営業マンの中の20代~30代前半の若い人たちが集まってこのプロジェクトを自ら立ち上げ、技術部門や広告宣伝を巻き込んで今回の発売に至っている。このプラグが成功することが彼らにとっても喜びでもあるし、ぜひ成功させてあげたい」と、若い人の発想力に期待を寄せる。また、「MoToDX」の名前を付けた理由については「『MoTo』は二輪の最高峰レース『MoToGP』から、『D』は外側電極のD-Shapeの『D』の部分からとってDXとした」と明かした。
特長は電極部に集約
技術面については、鈴木部長が「MoToDXの特長はすべて電極部に集約されている。スパークプラグは外側電極と中心電極があるが、この2つの電極の形状、材質によってスパークプラグに最も重要な着火性、耐久性が決まってくる」と説明。
外側電極には「新素材を使うとともに、新しい形状のD-Shapeを採用。スパークプラグの外側電極の形状は従来の長方形だと、取り付け位置によっては混合気の流れを乱してしまい、理想的とは言えない形状だった。しかし、D-Shapeはラウンド形状になっており、混合気の流れを乱さず、さらに電極間に混合気を導きやすい」。
さらに「D-Shapeにすると同時に断面積を小さくした。スパークプラグは電極を小さくすると耐久性が落ちるため、新素材を用いることで消耗を抑えるようにした。すなわち耐久性が上がるということになる」。
一方、中心電極に関しては「四輪用のブランドとして既に実績のある『RXプラグ』に使っている高耐久性をもったルテニウムを採用。電極自体もRXプラグで使われているものとは違い、中心電極の設計自体も見直し、特にサーモクリアランス(絶縁体の先端部の内径と中心電極の外径の隙間)の設計の見直しも行い、二輪専用プラグとしている。具体的には、従来のサーモクリアランスと比べかなり大きくとっている。これにより、例えば絶縁体にカーボンが付着しても電極間での火花を確保しやす
い」という。このプラグは排気量126cc以上の中・大型排気量のバイクを狙ったプラグで、「そうしたバイクユーザーから『今のエンジンレイアウト上、なかなかスパークプラグの交換がしにくい。もう少しと長寿命のものはできないか』といった要望を以前から頂いていた。従来の一般のニッケルタイプやイリジウムIXプラグは3000~5000kmで交換を推奨してきた。『MoToDX』に関しては8000~1万kmでの推奨となる」と、飛躍的な伸びに自信をみせた。
「見えない部分」重要
宮城氏は「MoToDXを愛車に装着し、今後ホームページや誌面などで発信していきたい。街乗りからサーキット走行、ツーリング、高速道路まで様々なエンジン回転領域でどのように着火するかを体感し、皆さんに伝えたい」と語った。そして二輪ユーザーに向けて「自分の愛車なら、外見だけでなく、見えない所にも手をかけてあげて、良いものを使って皆さんのバイクライフをより一層豊かにしてほしい」と呼びかけた。
技術の粋集めた
鈴木部長は「二輪専用で初めて開発した、大変自信を持ったプラグになる。ぜひ使ってほしい」。最後に松井常務が「満を持して技術の粋を集めて優秀な若手が一生懸命企画して立ち上げたプラグなので、皆さんのバイクでぜひ使ってほしい」と締めくくった。
紙面掲載日:2019年4月12日