楽しかったです。
東京モーターショーでベールが剥がされたときは、「Z1だろ」と思わせ、そこからジーッと見ていると、細かいところが最新の装備であって、「走ったらどんななんだろ」ととても乗りたくなったモデルでしたが、意外にも早い時期に乗ることができました。カワサキさん、素晴らしい機会をありがとうございました。
乗った感想の最初は「扱いやすくて乗りやすい。でも、見た目や排気音などで重厚感も感じられる」ってところでしょうか。ビッグバイクの押し出しは十分なのに、いわゆるビッグバイクらしさのために、ちょっと辛い思いをするような面が少ないと言いましょうか。車重やハンドリング、パワーも無理なく扱える感じでした。
コースは大分県のオートポリスだったのですが、初めて走ったコースでした。気温も低く、装備を持って飛行機で試乗会入りというのも初で、いろいろと不安要素も多かったのですが、杞憂に終わりました。
ネイキッドモデルで、サーキット走行でしたがすごく楽しめましたし、何よりスーパースポーツにあるような「飛ばしてなんぼ」な感じでなく、自分のペースで満足が得られるという感じでした。
ちょっと広めのあのハンドルのリラックスしたポジションで、アウト側の膝をティアドロップタンクに押し付けて、イン側のゼブラゾーンに向けてコーナリングしていくのは楽しかったですね。立ち上がりで開けていくときのトルクや音なんかも気持ち良かったです。ここは中型免許ユーザーが乗ったりしたら「大型ってこういうことなんですねー」って思い切り感じる場面だと思います。
最近、丸形なのにLEDなヘッドライト多いですよね。このZ900RSもそうですけど、個人的にはやはり1灯は丸型がしっくりきます。そしてあのタンクの造形、シートからテールへの流れ、Z1というよりは誰もが「バイクらしい」と感じるスタイルだと思います。
初代Z1には乗ったことはありませんが、これから何十年も経った時に、旧車の部類でこのZ900RSが堂々と、それこそ今のZ1のように君臨しているのではないかと思ってしまいます。
中身は最新のバイクでした。でも、高いスポーツ性や出力、軽さなどの追求一辺倒でなく、急かす感じがなく、乗ってみて「いいね」と感じる要素を突き詰めてきた感じがすごくしました。今の若い人たちはどう感じるのかわかりませんけど、伝統とか関係なく、乗ってもらって楽しんでもらって「なんかいい感じなんで、買っちゃいました」と、新規の若者たちも取り込んでくれそうな、そんな期待もしたいモデルでありました。
当時としては凄まじいまでの性能を発揮したのであろう初代のZ1。車両の維持管理や乗りこなすのには、相当の労力がいったのかもしれません。手強くなければバイクじゃないと感じている方もいるかもしれません。しかし、新時代のZはとても扱いやすく、それでいて懐も深くていろんな要求にも応えてくれるモデルに思えました。
そして、このスタイル。人に「このバイクに乗ってるんです。」と紹介した時に、バイクに興味のない人でもすんなりと「あ、バイクですね」と受け入れられそうな気がします。
最近、アマゾンのCMで、孫の後ろで楽しそうにタンデムで笑顔を見せるおばあちゃんが話題になりましたが、あの車両はカワサキのW800(650?)だそうですが、もしあれがスーパースポーツだったらどうでしょう、すんごい車高のアドベンチャーだったら、小さな原付2種スクーターだったら、どうでしょう。あのCMのような展開にはならないと思われます。どれもバイクですが、いろんな用途、見た目があり、外の世界からみたらそれなりに印象が違うのだと思われます。
でもこのZ900RSはおばあちゃんを乗せてもさまになり、一人で走っても、道端にとめておいても目を引くモデルだと思います。そういうのから来る所有感も大事なんだと思います。
バイクはスポーツ用品だけでもなく、移動の道具だけでもない。ただ乗るだけで気持ちが楽しくなるってところも大事な要素でしょう。それには「バイクらしくて、カッコ良く見える」も必要だと思われます。
Z900RSはビキニカウル付きの「Z900RS CAFE」も発売予定だそうです。これもカッコ良かったです。
二輪車新聞編集部記者 猪首俊幸 (写真:赤松孝、南孝幸)