2020年6月期に販売台数2062台を記録したトライアンフモーターサイクルズジャパン。21年6月期は2840台と38%増を達成し、22年6月期は3000台を見据える。

「コロナ禍による3密回避のトレンドだけでなく、以前から進めてきたブランド認知向上策と新製品攻勢が結実している」と、21年2月に就任した大貫陽介社長は語る。

その施策はグローバル市場でも効果が証明されており、21年9月末時点では前年比21%増の成長を遂げている(過去12カ月)。けん引役となっているのは、入門モデルとして投入されたトライデント660。日本では20年11月予約開始、21年1月発売となったが、他の国・地域にはない効果も生んでいるという。

「トライデント660をご覧になろうと来店されたお客様が、上位モデルであるストリートトリプルやスピードトリプルにご関心を持たれ、購入されるというパターンもあるようだ」

喜ばしいことと笑顔を見せる大貫社長は、自身もスラクストンR、ボンネビルT120と乗り継いでいるトライアンフ愛好家だ。

そのボンネビルに代表される2気筒エンジン搭載のモダンクラシックモデルから、先述の通り、3気筒エンジンを搭載したロードスターへと人気の幅も広がってきているトライアンフ。やはり次はアドベンチャーも伸ばしていきたい考えだ。

既存のタイガー1200シリーズ/900シリーズ/800シリーズに加え、21年2月にはタイガー850スポーツを発売。同10月にはタイガースポーツ660を発表した。

「グローバルの販売戦略に沿いつつも、日本独自の色も出していきたい」と、大貫社長は意欲を見せる。トライアンフ・アドベンチャー・エクスペリエンスなど、コロナ禍以前からカテゴリーごとに行っていたイベントも収束後は再開したい。その上で「せっかくなら新たなお客様に広めていけるよう、レンタル車両を増やすなどしていく」という。

そして顧客接点の要であるディーラー施策については、コーポレートアイデンティティ(CI)をブルー基調からブラック基調に変更中。22年6月までには国内ディーラー24店舗すべて完了したいとし、その店舗数拡大も進めていく。

「それぞれ収益を上げていかなければならないので飽和しないようコントロールしつつ、専売店を増やしていく。まだディーラーのない地方に販売網を巡らせる。目標としては23年6月期に30店舗を達成し、24年6月期には更に拡大していきたい」。認知度の向上を背景に加速させる構えだ。

そしてもうひとつ強化したい領域が、デジタルマーケティングだ。同社は21年10月、シニアマーケティングマネージャーとして山本学氏を招へい。広告代理店からリーバイス、アシックスへと転じ、直近ではドクターマーチンで6年半、歴史あるブランドの新たな顧客創出に携わってきた人物だ。

画像: アパレル業界出身の山本氏

アパレル業界出身の山本氏

「凝り固まったイメージにとどまらず、新たなファンを取り込んでいきたい。日本人は元来、英国文化に格別の思い入れがある。ドクターマーチンのように、トライアンフでも若いファン層の獲得を目指す。靴とは価格帯こそ異なるが、若い方がバイクを購入するとき『選択肢に入る』ように環境を作っていく取り組みには共通する部分がある。そうした雰囲気作りが必要なステージにトライアンフは来ている」と、山本氏は意欲を見せる。

新しいアプロ―チができるだろうと大貫社長の期待も大きく、今後デジタルを用いていかに新たな顧客層を獲得していくか注目される。

2022年1月1日発行・二輪車新聞新年特別号「輸入車/2021年実績と22年抱負」掲載

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