関東大震災から100年 震災への意識を再認識
「防災の日」は、今年よりちょうど100年前の1923年(大正12年)、関東大震災が発生した9月1日にちなんで制定。この日を含む8月30日から9月5日までを「防災週間」とし、自治体ごとに適切な日を判断し実施、防災に関する様々な関連行事が全国で活発に行われている。
このうち、日本総人口の約4分の1に相当する人口を擁し、政治・経済等の中枢機関が集積している南関東九都県市(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県の一都三県と横浜市・川崎市・千葉市・さいたま市・相模原市の五政令指定都市)では、「首都直下地震」や「東海地震」の発生が懸念されている。
このためこの九都県市では、甚大な被害が予想される大地震の被害を最小限に食い止めるため、この大規模な防災訓練を連携して毎年合同実施している。当初は六都県市で80年に第1回が開催。92年(第13回)には千葉市、03年(第15回)にはさいたま市、10年(第31回)には相模原市が加わり、現在の九都県市体制となっている。
九都県市合同防災訓練は幹事都県市(中心会場)が輪番制となっており、中心会場(今年は相模原市)は防災の日に、他の都市は防災週間を考慮した適切な日を設定しそれぞれ実施する。首都直下型地震および東海地震、さらに相模トラフ沿いの地震や房総半島沖の地震も想定したものとなっており、地元の行政機関や公共機関をはじめ、警察や消防、自衛隊、医療機関、学校、団体、ボランティア組織、NPO法人、住民らが毎年多数参加。官民を挙げた大規模な総ぐるみ訓練として定着をみている。
実施都県市の開催日と会場は▼埼玉県(8月27日)=志木市役所、いろは親水公園等▼千葉県(9月2日)=川村学園女子大学、川村学園女子大学グラウンド▼東京都(9月3日ほか)=東村山市役所周辺▼神奈川県(10月15日)=未病バレー「ビオトピア」ほか▼横浜市(8月27日)=新横浜公園(日産スタジアム)第一駐車場▼川崎市(9月3日)=川崎市多摩区内(菅多目的広場、市立南菅中学校)▼千葉市(8月27日ほか)=千葉市役所(主会場訓練)、市内指定避難所施設(避難所開設・運営訓練)▼さいたま市(10月15日)=岩槻文化公園▼相模原市(9月1日)=相模総合補給廠一部返還地および相模原スポーツ・レクリエーションパークほか──が計画された。
このうち埼玉県は今年、志木市との共催で訓練を実施。8月27日に「令和5年埼玉県・志木市民総合防災訓練」の名称のもと、志木市役所(メイン会場)と「いろは親水公園」(サブ会場)等で、埼玉県南西部消防局の協力、内閣府政策統括官(防災担当)の後援を得て行われた。
好天のもと実施されたこの日の訓練では、「東京湾北部を震源とするマグニチュード7・3の地震が発生し、県南部を中心に甚大な被害が発生している。志木市内でも最大震度6弱の揺れを観測した」と想定。
9時からスタートした訓練は、災害対策本部設置・運営訓練、住民による初期消火訓練、はしご車による救助訓練、斜めブリッジ救助訓練、水難救助訓練、ヘリによる救助訓練、交通規制訓練(減灯信号機復旧訓練)などが大規模に展開。約80機関・団体の職員が訓練に臨んだ。
このうち二輪車は、航空機やドローン、ヘリとともに、埼玉県警察本部交通部交通機動隊と陸上自衛隊第1師団第32普通科隊のオフロードバイク隊員が、被害状況の情報収集訓練に参加。車両侵入の妨げになる障害物や放置車両の確認など、侵入困難な区域の情報を収集する訓練を行った。
二輪車は、四輪車では走行できない被災地等の道路等状況下でも、その機動力を生かし、日頃からの訓練と相まってより一層、災害救援活動の範囲がひろがる可能性が高く、これまでにも▽阪神・淡路大震災(95年1月17日)▽新潟県中越地震(04年10月23日)▽東日本大震災(11年3月11日)──など、様々な被災地でその機動性を生かし、情報収集や医療物資等運搬などで被災地救援支援に大きく貢献。今回の訓練も、社会的意義の大きさを再認識してもらう機会になったといえる。
訓練終了後には閉会式が行われ、主催者を代表して、埼玉県の大野元裕知事と志木市の香川武文市長があいさつ。
大野知事は参加機関・団体をねぎらうとともに、「日本では災害が激甚化、頻発化している。私たちはいつ、どこでも大きな災害が起きることを想定しなければならない。災害で重要なことは、私は『想像』と『準備』だと思っている。そのための訓練が今日行われた。私たちは県民の皆さんの負託を受け、その信頼にしっかり応えていく必要がある」などと述べ、参加機関・団体により一層の協力を求めた。
香川市長は「関東大震災から100年を迎えた今、改めて震災に対する意識を醸成し、一人ひとりができることを、この訓練を機会に、確認しながら明日からの備え、糧にしていきたい。皆様の心強い訓練に心から感謝申し上げる」などと述べた。