20歳に満たない友人の息子さんは、1980年代後期の日本製250ccバイクに入れ込んでいます。それも「ちょっと好き」という次元ではなく「もはや職人か!」というほど毎日のように整備に明け暮れています。

あくまでもキャブレター式が好きで、最新の電子燃料噴射式・インジェクション式の車両にはあまり興味がないらしいのです。その理由は、キャブレター式はバラバラにできる範囲が広く、乗り味はスキル次第でどうにでもできるからだと言います。

空冷単気筒エンジンだけでなく、水冷DOHC4気筒の250ccスーパースポーツでも、キャブレター式ならという理由で整備を始めた彼は、走り方もハイスピード派ではなく、ちゃんと整備して、納得できる運転を模索しています。

レースのシビアな世界と同じように、彼はプロが持つ感性を身につけ始めているようにも見えます。

好みのバイクデザインについて聞いたら、ティアドロップ型の燃料タンクのバイクだとストレートに入ってくるようで、例えばインジェクション式の最新型でも、ティアドロップ型タンクならあまり抵抗がないらしいのです。

マイペースで“バイクライフ”が楽しめるバイク

昭和のヒット曲が好きな、平成生まれの子どもたちが意外に多いといいます。シンプルなメロディで、歌詞にストーリーがある──ティアドロップ型スタイルの古典的なデザインとどこか被ってしまいます。

ことレトロ系スタイルについては、大半のバイク好きなら、否、バイクのことがわからない人でも、ティアドロップ型燃料タンクのレトロ系バイクなら、好意的に受け入れてくれる可能性が高いように思います。

ではレトロ系スタイルのその先の可能性を探るとしたら、従来からのエンジンをベースにするものと、電気モーターで走るものが大別できると思います。すでに10年近く前のミラノショーでも、クラシックなスタイルのスクーターに電動モーターという図式や、非常にスタイリッシュな電動自転車も出品されていました。

近年の日本国内で見かける電動自転車よりも、はるかに流麗で気品が感じられるものでした。ハイテク感を強く出さず、ほどよいレトロ感を持つデザインと電気式の駆動力の融合も可能性を感じるものでした。

最新エンジンを搭載した小型レトロ系バイク&スクーターこそ、もっと普及すべきと考えます。大型の高性能・高額バイクもいいですが、マイペースでバイクライフを楽しめるサイズ感や価格こそが大事ではないでしょうか。

時間と場所を共有し、和気ワイワイと仲間が集えるキャラクター。いじる、磨く、走らせるという手間が楽しさになっていくバイク。具体的には、洗練されたレトロスタイルの原付車両こそが生まれてくるべきだと思っています。

例えば、これから125ccクラスが普通車の免許証で乗れる、「原付バイク新時代」になってきます。従来からの安価な原付ではなく、レトロ系スタイルで、スピードよりも所有欲を満たす外観の原付バイク。そこに二輪車業界の新たな可能性がある気がしてならないのです。

プロフィール

柏 秀樹(かしわ・ひでき) 
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。

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