新型のビッグネイキッドを買った友人の納車シーンに、付き合ってみました。友人は運転スキルも高いベテランなので、バイクに関する説明は割愛してもらいたいところでしょうが、机上の説明を聞き終え、実車を前に操作説明までじっくりと受けていました。

新車を前にすると、誰でもワクワク、1秒でも早く乗りたいもの。ですから、ちゃんと説明を聞いていないお客様もいるようですが、販売スタッフの説明は落ち着いていて、わかりやすいものでした。

そしていよいよ、お店から走り出す時間が来ました。走り出す前に私もスタッフにあいさつをしました。すると「大変お待たせしてしまいました。説明が長い!と思われたかもしれませんが妥協はしません。コンビニでパンを売るのとはわけが違って、バイクは安全第一ですので」とキッパリ。二人とも笑顔でお店を後にしました。

バイクとセットで、心に残る温かなアドバイスを

販売側の効率重視はわかりますが、説明を端折ってしまうと、結局はお客様がトラブルを起こしやすくなります。結果的にそれはお店のロスになることが多々あります。

キルスイッチがオフの状態やガス欠状態でエンジンが始動せず、お客様が勝手にイライラする例が今でもあります。

秋冬の寒い時期になると、高性能スーパースポーツ車は、納車時だけでなく新品タイヤ交換後に悲惨な結果になることが少なくないです。

以前より温度依存性の低くなったハイグリップ系タイヤでも、いきなり滑るのはよくあること。反応速度1000分の2秒という最先端技術を持ってしても、ABSやトラコンが作動する前にタイヤは見事に滑るのです。

これを防ぐ適切な案内は非常に難しい。アクセルをゆっくり開ける、優しくブレーキをかける、最小のバンク角で曲がる…と言っても個人差は非常に大きく、プロでもハイグリップタイヤは気を遣います。それでも、ショップとしてはタイヤへの配慮を2度も3度も口にすれば、自己責任であることを実感してもらえるからです。

一方で、中古車を買われるお客様も実にいろいろ。通販で購入したバイクは程度が上々と信じて買ったものの、いざ現車を見ると相当な追加コストと時間がかかる事例もあります。特に1980~90年代の古いバイクは、部品の欠品もよくあること。もしも、他から購入したバイクの面倒を見てもいいよと返事をするなら、事前に相応の費用や苦労があることを伝えておくべきです。

手元にバイクが来ると平常心を忘れて舞い上がってしまうお客様に、常に温かくも冷静に最適なアドバイスをする。この当たり前の蓄積こそが、お店の信用を築いていく重要なことだと思います。
 新車でも中古車でも、納車時にバイクとセットで、心に残るアドバイスを納めたいものです。

プロフィール

柏 秀樹(かしわ・ひでき) 
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。

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