「為せば成る為さねば成らぬ何事も、成さぬは人の為さぬなりけり」

いわずと知れた、上杉鷹山(うえすぎようざん)の名言だ。その真意を分かっていながら「為せない」のが凡人たるわが身だとつくづく思う。

鷹山は2007年に読売新聞が全国の自治体の首長に対して行ったアンケートで理想のリーダー第一位に選ばれている。我々にとっても学ぶべき価値のあるリーダーだ。以前、中小企業診断士の方が学位論文に鷹山を取り上げ、その論文に学ばせてもらった。また、アメリカのケネディー大統領やクリントン大統領達も日本で最も尊敬する人物だと語っている。鷹山の実績を語ることがここでの目的ではないのでそのことは置くとする。

鷹山から約250年前に活躍した武田信玄が、似て非なる名言を残している。「為せば成る為さねば成らぬ成る業を成さぬと捨つる人のはかなさ」だ。信玄は「組織はまず管理者が自分を管理せよ」ともいっている。信玄の視点が個人重視的であるのに対して、鷹山は広く一般化した発言になっている。したがって私には鷹山の方が入りやすかった。

二輪車業界ではどうか。誰か個人のせいではもちろんないが、80年代初頭の最盛期以来「為せば成ったかもしれないことを、賢すぎる人達が多過ぎて、また為さねばならぬことが多すぎたこともあり、為すべきことを絞り込めず、結果として何事も成せなかったかの如く」一貫いて継続凋落する状態に、ずるずる落ち込んでいった。今では最盛期の8分の1にまで市場が縮んでしまった。

信玄公のいう如く「成らぬと捨つるはかなき人」が多数を占めたのか。上杉鷹山は「一村は、互いに助け合い、互いに救い合う頼もしきこと、朋友の如くなるべし」ともいっている。遅すぎることはない。私は二輪車業界の「一村」が頼もしく再生することを念じてやまない。

プロフィール

奥井俊史氏 (おくい・としふみ)
1942年大阪府生まれ。65年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。75年より東南アジア市場の営業を担当し、80年トヨタ北京事務所の初代所長に就任。83年より中近東市場で営業担当。90年にハーレーダビッドソンジャパン入社、91年に同社社長に就任し、19年間に数々の施策を展開し日本での大型二輪市場でトップブランドに育て上げた。09年より現職。

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