二輪車販売が長期低落する中、カワサキモータースジャパン(KMJ)は将来への大きな決断に踏み切った。新たな販売チャネル「新専門店販売網」(以降新販売網)計画を打ち出した。本紙では同社の寺西猛社長をはじめ各担当部長に、現在の二輪車販売における環境や中期計画、新販売網構築に向けた考えや取り組みなどを聞いた。

──現在の二輪車販売の環境、消費やユーザーの購買行動をどのように受け止めているか。

「販売環境としては、法的規制への適応が広く求められている。本年1月の騒音規制、4月には軽自動車税の増税があり、ほかにも近接騒音検査の強化、今年10月には排ガス規制が控えるなど、車両の技術的な対応は厳しいものになっている。

また、市場については、16年の需要見通しは40万台を切った。昨年の出荷台数でも特に原付一種が厳しいが、一方で原付二種以上のクラスは微増にある。我々の製品は原付二種以上なので、市場としては悪いわけではない。二輪車だけではなく異業種でも比較的に高価なものが売れ、本当にユーザーが欲しいと思うものは買っている傾向にある。登録数値で見ても比較的に値が張る輸入車は売れている。我々と販売店がしっかりとユーザーへのアプローチに取り組んで行けば需要確保ができる」

──若者など新規顧客創造の取り組みは。

「29歳以下を対象にした『カワサキU29ミーティング』というイベントを展開している。特に若者が二輪車に触れる機会を提供している。二輪車離れは業界全体の責任ではないか。業界として外(二輪車に乗ってない人)に向けて訴求する努力が足りなかった。努力を怠ったことのツケが今に回ってきた状況だろう。業界としては既存ユーザー対象の安全運転などの イベント展開を実施してきたが、新規ユーザーの創造では手薄であった」

──中短期計画や販売網の見直しについては。

「着実に成長して行かねばならない。3カ年計画をベースとして、我々は現在、2025年までを視野に入れ事業計画に取り組んでいる。新販売網の取り組みの背景では、これまでも行なってきた「ことつくり」、「おもてなし」のレベルアップに取り組み、今後もお客様を創造して行かねばならない。過去7年間販売店対象のマネジメントトレーニングを実施してきたが、この内容が全ての店舗に浸透していない。これが新販売網のスタートの理由だ。これをしっかり店舗で実施してもらうことが、互いの持続的成長になる。これをやらねばどのように生き残っていくか。徹底するにはどうすればいいかを考えた。店舗は顧客接点のため、販売の役割としてここを強化する必要に至った。

現在の販売流通経路は一つだが、17年からは今の正規取扱店とは別に、新たな販売チャネルとして新販売網を追加し、2つの販売チャネルとする。17~19年の3年間を新販売網整備への準備期間としている。20年以降は新販売網でカワサキ全製品を取り扱い、正規取扱店で400ccまでのカワサキ製品を取り扱う。新販売網では各地域担当としての商圏を確保しており全国100~120店を計画。特に東京や神奈川、大阪など需要が高い地域はそれに見合う店舗数を予定している。

また、新販売網ではマネジメントトレーニングの内容を徹底してもらうことは勿論、『販売店経営者と我々とで新しいお客様を獲得し着実に成長して行きましょう』という考え方だ。従って新販売網では『ことつくり』と『おもてなし』を掲げ、新しい顧客開拓の活動を重点にして行く。また、ショールームでは新車を所狭しと陳列するのではなく、お客様に商品として見て触れてもらえる空間と演出を行う」

──新販売網の基本的な店舗面積にも規定があると聞く。また投資に対する採算は。

「地域により異なるがショールームで基本的に50坪としている。車両やカスタムパーツ、用品関連のほかにカワサキのライフスタイルが提案でき、女性客も来店しやすい店づくりを考えている。

また、店舗への投資に対し新販売網向けには、商圏を確保した上でマージン体系を輸入車各社と同等レベルに設定。年間販売台数やカワサキ車の該当市場の保有台数などで専売店として採算の合うように検討した。具体的には車両販売とパーツ、用品、アフターサービスを徹底すれば十分販売店経営は成り立つ。二輪車販売店として当然の行い、基本的なことをやるだけだ。

特にアフターサービスでは点検などで、比較的に安定した大きな 収益源になる。新販売網設立の理念である『安心』『安全』が担保されたモーターサイクルライフをお客様に提供するために、販売店は積極的にお客様へ点検実施を呼びかけねばならない。マネジメントトレーニングでもこれを言い続けてきた。今は楽をして儲けられる時代ではない」

──顧客との長期的関係を続けるCRM(顧客維持)システムが必要になるが。

「そうだ。さらに基本的には新規のお客様に買ってもらうための施策や、家族などで二輪車に興味がまだない人が集まる場での展示などを展開し、CRMシステムと連動させていく」

──新販売網では指定工場の取得を条件にすると聞く。

「取得は大変だと聞くが、取得することで格段に販売店収益が高まる。先にも挙げたが、カワサキ車の保有台数は小型二輪だけでも35万台あり、増加している。車両を販売しただけ数年後には確実に車検到来車が発生し、増えて行くはずだ。さらにその間には点検機会も生まれ車両を販売することでアフターサービスの収益は掛け算されていく。

指定工場の取得は時間がかかるだろうが、取得のゴールを定めていく必要がある。指定工場の取得は将来的に必要不可欠であり、今から取り組み将来に向けた準備が必要だ。販売店も技術面、収益性のほか、顧客からの評価も高まり、何より『安心』と『安全』が提供できる」

──既存店での新販売網への反応は。

「昨年の正規取扱店ミーティングで発表して以来、もっと早くやって欲しかったという声もあり、具体案が欲しいという販売店も多数ある。一方でなぜそこまでやるのかという声もあり、既存店の中でも温度差がある。今の正規取扱店契約の前に、特約店制度時代から40年以上の付き合いがある販売店もある。ただ勘違いされては困るが、既存店との契約を止めるわけではない。大きくは扱い商品が変わるだけだ。

また、新販売網では長期的な取り組みのため、契約事項に後継者の明確化を定めている。」

──販売店への徹底も重要だが、その前にKMJ社内の徹底がカギとなる。

「すでに専門部署の準備室を設けており、この準備室で具体的に進めて行く。人員も現在は3人だが増員を図っているところだ。従来の営業スタイルとは異なり、180度変えていく。すでに直営の既存のカワサキプラザ6店があるため、販売店経営については、理解もできる。」

画像: カワサキモータースジャパン 寺西猛 社長/「新販売網」、「社内改革」も

紙面掲載日:2016年6月24日

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