二輪車用品販売・開発を行う㈱ナップス(神奈川県横浜市)は今年2月、4代目社長に若き35歳の望月真裕氏が就任した。創業家の家系に当たり、ナップス代表に就く一方で、起業した不動産会社も経営する。望月社長にこれまでの経験や今後のナップスの経営などについて聞いた。

──不動産会社を経営していると聞く。経歴は。

「大学在学中に、在庫を持たない利点が活かせる仲介業の不動産に興味を持ち、起業を視野に宅地建物取引主任者資格を取得。卒業後は大手不動産会社へ入社し経験を積み、24歳の時に不動産会社を起業しました。今は11期目です。不動産会社の傍らナップスには2012年に社外取締役、同時にナップスの事業承継される立場で関わってきました」

──経験で得た教訓は。

「物事に対して人と頑張って取り組むということは、業界が異なっても差はないということです。心に留めていることは『禅』ということです。『全機現』ということばがあり、現在の自分や人、組織の能力を最大限に引き出すということを意識して仕事に取り組んでいます。社内『一人ひとりを全機現で能力を高める』というスタイルで経営してきました。

不動産会社の起業時は24歳で社内最年少、当時は苦労しました。話を聞いてくれない人が悪いのではなく、聞いてくれないのは自分が悪いと思うしかありませんでした。辛い時は海を見に行って心を落ち着かせることもありました。おかげでほぼ離職率はゼロ、今は話も聞いてくれています。

経営経験はまだ浅いですが、何とかやってきたのでナップスの経営も違和感はありません。経営は基本的に同じで、二輪業界はニッチですが、業界に経営の焦点を合わせるのではなく、社内の皆で働き、向上して皆が業界で能力を発揮できる方向にコミットしたい」

──社内体制について。

「ナップスに関わった当時は『過去のナップス』『過去の成功にしがみついた』意識や印象が強く、将来の大きな壁を倒すナップスではなかった。まずスタッフには『健全な危機感』を持ってもらうことが大事だと思いました。そこで第三者の会社に市場調査を行ってもらい、ナップスの「直面する危機は何か」をデータ化し、全スタッフに公開しました。健全な危機感を認識して個々に積極性を持ってもらい、少しずつ変革を始めました」

──組織運営の考えは。

「社内の平均年齢が35歳位で、私は真ん中の年齢ですので、引っ張っていくよりも、渦の中心になって渦をどんどん巻いて、皆を巻き込んでいくようなイメージで考えています」

──人にフォーカスを当てているが、人として重要なことや両親からの教訓を挙げるとすれば。

「誠実、素直といったことだと思います。親から幼少期からよくいわれたことは『普通になるな』です。大勢が行く方向に行くな。自分が正しいと思う方へ進め。『流されるな』でした」

──3年後の売上高1・5倍、用品で業界1位の3カ年計画を挙げた。

「明確な数字を掲げ第3期創業の意味で『3・0』、売上高140億円を目標に挙げています。経営幹部だけではなく各店のピットスタッフまで、皆で数字に落とし込んで言葉でいえるほど浸透するようにしたい。今、まさに取り組んでいる最中です」

──計画ではネットでの取り組みも視野に。

「ネットの世界では現実的に正解が見えづらい。ただ間違いなく確実にウェブ市場が拡大し伸びるでしょう。リアルである店舗を持つ我々はネットと共存する道を選んでいきたい。ECビジネスと店舗での垣根をなくし、長所と短所を補えるように活用したい。その意味で柔軟なナップスにしたいです。ウェブでも店舗でも発見があるナップス。買う楽しみを提案したいです。店舗については増やす考えでいますが、正しい戦略が見えてきた上で拡大したい」

──今の二輪車市場をどのように分析する。

「パワーゲームのよう。我々は財力が強いわけではないので、同じ土俵に乗らないようにしっかり見極めたい。ただ業界全体では車両メーカーでの競合同士のようなアライアンス(協業)がカギだと思います。競合であっても互いの長所や短所をうまく組み、互いに伸びていくことが重要です。社内については『人』、社外では業務提携を強く意識して成長させようと思います」

──店舗の課題に、ピットスタッフの技術向上が挙げられるのでは。

「業界全体での難題でもあるが、当社では今年から外国人スタッフを採用。今は一部の店舗でベトナムからのスタッフを増やしています。また業界を俯瞰するとスタッフ給与が低いことも気になります。給与水準を高めることで人も集まり仕事でのプライド、技術も向上できると思います。

社内では技術向上のため資格支援制度の利用や年配者が若いスタッフに技術を教えるなどで評価していきます」

──今後の課題は。

「人の確保が挙げられます。離職率を下げると同時に新規募集が必要です。それにはナップスで働くことが好きで楽しんで働ける職場にし、それにより責任感が高まり給与も上がるようにしたい。特に新規スタッフ募集では、二輪業界以外の異業種からの採用を積極的に取っています。また今後は仕事のスピードを上げて、どんどん前に進むようにしたいと思います」

画像: ナップス 望月真裕 社長/「全機現」渦中心で経営

紙面掲載日:2017年4月14日

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