デルタ・エンタープライズが製造・販売しているキッズ用ロードレーサー「74Daijiro」。ポケバイレース出身で、WGPなどで素晴らしい功績を残した故・加藤大治郎さんの「子どもたちにレースの楽しさを伝えたい」という意志を継承し、幼少期から安全にバイクに親しめるよう細部にまでこだわって開発されたスーパーミニバイクだ。
74Daijiro事業の担当者、デルタ・エンタープライズの村上裕二さんは、「元々車の運転やレストアが好きで、メカニックの仕事ができるという単純な動機でこの仕事を始めましたが、気付いたら僕たちがレースを始めさせたご家族が数え切れないほど増えました。今は、バイクや大治郎というヒーロー像を通して子どもたちに夢を与えるというところにやりがいを感じています」と話す。
村上さんが携わっている仕事は、74Daijiroの組み立てや整備などのメカニックな分野だけでなく、販売や広報活動など、多岐に渡る。車両をイベント会場などに運ぶ際はトラック・ドライバーという前職の経験が役立っている。
近年、同社が力を入れているのが、74Daijiroの試乗会だ。今年7月29・30日、8耐開催中の鈴鹿サーキットで「ぽすくまの親子バイク教室」という名称で実施されているところを訪れた。
74Daijiroにまたがった子どもの正面には保護者がそれぞれ立っている。講師の合図で恐る恐るアクセルを開けて進む子どもたち。保護者は「こっちだよ。頑張って」と声をかけて導く。その一連の様子を、村上さんが真剣な表情で見守っていた。
「僕の仕事は、あくまでも車両や装備品を用意するまで。できるだけお父さんやお母さんにやりかたを教えて、親御さんから子どもに教えるというスタンスを取っています」と、親子のコミュニケーションを図る場であることを強調する村上さん。
また、この試乗会の狙いは、子どもたちにバイクの楽しさを体験させようというところにあり、74Daijiroの販売とは分けて考えているという。
村上さんは、「バイクに初めて乗った思い出が楽しいものになることで、将来バイクが好きになるかもしれないし、乗らなくても、車やバイクは当たり前の趣味のひとつとして受け止めてもらえます。それが、業界への恩返しにつながると信じています」と話す。
こうした活動に賛同する人は年々増え、この日も全日本選手権などで活躍している現役ライダーが手伝っていた。昔74Daijiroでレースを始めたライダーが、講師として戻ってくることも多いという。
今後の目標について、村上さんは「色々な二輪車メーカーさんに、親子で楽しんでもらえるコンテンツとして74Daijiroを活用してもらえるようにしたいです。外装を変えることもできますし、ゆくゆくは、MotoGPに参戦しているメーカーのものを全部つくれたら面白いですね」と話す。
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▼㈲デルタ・エンタープライズ(74Daijiro事業部)
埼玉県戸田市美女木7-12-2(℡048・424・0174)▽http://www.daijiro.net/
◆村上裕二さんプロフィール
埼玉県出身。2003年デルタ・エンタープライズ入社。趣味は古い車のレストアや、ギターの演奏など。ギターは、最近は弾くことよりも、弦の張替えや磨くことに時間をかけている
紙面掲載日:2017年10月6日