経済産業省や自動車工業会(自工会)で「オートバイ2020年100万台回復プラン」が検討されている。ある程度その内容を詳しく読んだが、遺憾ながら私にはその実現可能性に確信は持てなかった。これに対し現実は厳しく、17年のオートバイ市場は、全体としてはむしろ縮小がさらに進んだ印象が強い。また、オートバイ販売店数は確実に減っている。

しかし、ここにきて多くの内外バイクメーカーでは、この状況を「現地・現物・現状」主義に基づく現実的な「三現主義の視野」で考えて、おそらくはラストチャンスかもしれないタイミングと捉えて、高質な販売ネットワークの構築に乗り出す動きを展開している。

各社は販売店の数は追わず、むしろ整理して「高質で、顧客にとって好ましい購買環境を提供できる販売店網の再生」を目指し始めている。その場合、販売店には後継者を明確にするように求め、独立の法人を設立し、自社製品の専売店とし、サービス工場資格にも厳しい条件をつけて、ブランドを生かした「売れる売り場づくり」、ユーザーの「買い場づくり」実現の努力を強く求め始めている。 

併せてメーカーは車両・部品・アフターサービスともに、販売店との基本取引条件も見直し。価格設定にも気を使って、販売店の収益性の向上に努めて、店舗の改革を実現できる条件を提供しようとしている。同時に商品としては未だに全体市場が縮小傾向にもかかわらず、クラスによっては需要増加さえ確信しうる大型バイクや登録車の市場領域で品揃えを充実している。

さらに新しく再編する販売店に対しては、今まで以上に販売店との連動を重視して、プロフィットセンターの多様化や深化に向けて真剣に検討を始めている。

自社製品にも「カスタム」の楽しみを充実せんとして、外部メーカーへの開発依存から脱却して、自社開発のカクタム用パーツの販売数を増やしたり、ライフスタイル充実のためのファションアイテムの増加も進めている内外メーカー各社も多い。メーカーとしてのオートバイリースのネットワークの構築すら始めている。

今までとは異なるこの様なたのしいビジネスモデルを店頭で実現できる店舗を構築するために、販売店に対する応分の投資を求めている。「LOW OF HARBEST」(=収穫を上げるための必要な先行投資)は行い、早くこれを行ったものに先駆者利益が多く果実する。という先行投資の薦めということだろう。

各社のCRM(=顧客管理マネジメントシステム)も導入されているが、日本人の考えるCRMは目に見える、手元にデータのある既存客を、きめ細かくフォローアップするために使われており、まだ見ぬ潜在顧客を自社の顧客として顕在化させる、「需要創造」の領域での活用モデルを持たないところがいかにも多い。この点を実現したところが、結果的には市場NO.1になるのではないか。

この時代に必要なことは何よりもまず「新規需要の創出」である。市場の継続的な凋落の中で、投資に見合う持続的な成長を「HARBEST」として享受するためには、この辺の販売促進の基礎システムとなるCRMに対する意識改革が、最重要な課題であろう。併せて今後は必要なデータを収集し・整理し・分析して・メーカーと販売店が、真に共有して活用できる「データベースドマーケティング」として展開できるようになると、オートバイの販売活動の効率化もかなり進むだろう。受注活動の効率化も実現できるだろう。やはりそれを実現するメーカーが市場NO.1になることだろう。

こうした意味で、18年から20年はオートバイ業界最後の大変革の年になるだろう。

※2018年1月1日付け号「一字千金」掲載

プロフィール

奥井俊史氏 (おくい・としふみ)
1942年大阪府生まれ。65年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。75年より東南アジア市場の営業を担当し、80年トヨタ北京事務所の初代所長に就任。83年より中近東市場で営業担当。90年にハーレーダビッドソンジャパン入社、91年に同社社長に就任し、19年間に数々の施策を展開し日本での大型二輪市場でトップブランドに育て上げた。09年より現職。

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