「成長」が重要かつ必須であることは歴史上もはっきりしている。人類全体にとってそうだ。世界史は世界各国が成長を求めて時に共存し、時に激しく争った過程だ。各国はより進んだ「成長」を求めて技術を発達させ、武力を強化し、生産を拡大させて生きてきた。 
画像1: 「GROW  OR  DIE」
 (成長か、さもなくば死か)

現在もそうだ。米国、EU、中国、アジアなど、その資源、生産力、経済力、技術力などをもって成長達成に努力している。しかし、今や「成長」の実現は段々と困難になってきている。中国は7%以上の成長をながらく誇ったが今や下降している。米国は3%を実現できれば好景気とさえ言われている。EUは2%の成長も定かでない。

日本も同様だ。「成長」の重要性は人間の組織にとっても同様だ。代表的な人間組織である会社では、経営陣は日夜、増収・増益に知恵を絞って「成長」の実現に努めている。失敗すれば株価は下がり、悪くすれば企業は倒産する。

依然こんなことがあったことを思い出す。日本法人の社長に就いていた時代、本社で新しく就任したCEOが、就任演説で全関係者に対して「GROW OR DIE」と宣言したことは、ごく自然だった。しかし、彼はこのことばを、当時すでに日本で15年間一貫成長を達成していた私にも、個人的に訓令した。「成長なければ、お前は首だ」と宣言されたのだ。露骨なこのことばには正直頭にきたし、気分も害した。

そこで一計を案じて、扇子の表に彼の似顔絵を、裏には毛筆で「GROW OR DIE」と印刷し本社訪問時の土産として沢山持参した。ユーモアを生かして皮肉を効かせたのだ。彼は表の意味を理解してくれ、それ以後、親密な関係になれたし、私自身も兜の紐を締め直してラストスパートをかけたので、足掛け20年間、死ぬことなく一貫成長し、予定通り08年末に退任できた。その後リーマンショックにより世界中で多くの企業が苦しんだ。

画像: ユーモアと皮肉を効かせた扇子

ユーモアと皮肉を効かせた扇子

画像2: 「GROW  OR  DIE」
 (成長か、さもなくば死か)

奥井俊史氏 (おくい・としふみ)
1942年大阪府生まれ。65年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。75年より東南アジア市場の営業を担当し、80年トヨタ北京事務所の初代所長に就任。83年より中近東市場で営業担当。90年にハーレーダビッドソンジャパン入社、91年に同社社長に就任し、19年間に数々の施策を展開し日本での大型二輪市場でトップブランドに育て上げた。09年より現職。

2016年10月7日付け号「一字千金」掲載

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