自動車業界においては、メーカーが数多ある自動車販売店などの中から、自社の基準に合致する店を選択し、基本的には自社製品の専売を目指して、正規の自社製品の販売店を選択・指名して“正規販売店”に指定する。

自動車販売店では資本・店舗が同じで、その中で複数のメーカーの製品を取り扱っている併売の自動車正規販売店はまずない。正規販売店は“一つの資本・一つの店舗・一つの商品・一つのブランド”として構成されている。

ここで正規販売店というのは、特定メーカーと特定の販売店が何らかの形(一般的には契約書を共有する)で、商品の取り扱いを正式に同意している場合を指す。もちろん、販売店側にあるブランド選択の意向とも合致しなければ、その指定は意味をなさない。

メーカーによる販売店の選択、自社正規販売店としての指定の主たる目的は、自社製品の持続する拡販体制つくりと、その内容の実現のためだが、それに必要な要件として、販売店はメーカーの展開する店舗・店頭条件に従った販売ショールームの設置と、商品の適切な展示販売(店舗・売り場造り)が求められる。

それ以外にも、求められる要素は数多くある。正しいメーカーブランド展開、自社製品に対する正規のトータルなアフターセールスサービスの提供、そのために必要な純正部品の取り扱い、保険など関連商品の販売、正規のブランドオーナーズクラブ組織の運営、メーカーマーケティングの随時の実践などだ。また最近では、メーカーと販売店に共通する、顧客名簿管理の実践なども求められる。

そのためには、やはり特定メーカー製品の専売であることが重要になる。 

しかし、日本の二輪車販売店においては、歴史的な経緯やその企業規模の弱体さなどから、特に国産メーカー製品の取扱店では、国産4社の製品を併売している店も多い。販売店側からすると、一社のみのブランド製品の取り扱いだけで、企業としての十分な利益を確保位できるか否かの基本的な問題も存在する。各メーカーの販売政策やそれに基づくマーケティング政策の内容が一致することはまずない。従って、多くのメーカー製品を、同一の店舗内でマーケティング展開していくことは難しい。

メーカー各社の製品に対するプロダクトポリシーは当然異なるが、一方、新製品は各社から、ほぼ同じようなタイミングで市場に導入される。バイクシーズンは、天候条件やビジネスカレンダーの共通性などから、その導入展開時期が集中するので、同一の店舗の中で、しかも同一のスタッフで、ほぼ同時に店頭展開せざるを得ないことになるが、それには本来大きな限界が伴う。

しかしながら、日本の二輪車販売店においては、そのような状況が圧倒的多数であるのが実態だろう。これでは、最高のバイクシーズンにおいても顧客満足の高い販売環境には極めてなりにくい。大手の二輪車販売店は、ブランドごとに販売拠点を別々に用意し、そこにブランド専任のスタッフを整えているが、そのような体制をとれる二輪車販売店は実際には多くはない。

また、バイクのような比較的簡単な機械製品であっても、各社の製品には特有の仕様があり、特性があるために、プロとしての修理サービスをメーカー設定の基準に照らし提供していくためには、情報吸収はもちろん、メーカーが準備するかなりのサービストレーニングを受講する必要がある。専用修理工具も準備しなければならない。修理に使用する部品の在庫の保持も当然必要となる。街に溢れる汎用部品だけでは、とても修理できない。

このような内容を確保するためには、やはり選出された販売店を販売網として持ち、それらの店々に必要な情報や商品を提供し、トレーニングしておくことが重要である。しかし、それらの条件をメーカーとの踏み込んだ関係性がない店に対して要求することは難しい。

安定したビジネス継続の保証を相互に確認して、正規販売店と理解しあったうえで実践していく。

このようにみていくと、メーカーにはそのための正規販売店選択の一定の条件が必ず存在する。販売店の独自の経営方針だけでは、その内容がいかに立派であっても、自ら名乗り出ても、メーカー指定の正規販売店にはなれない。

プロフィール

画像: プロフィール

奥井俊史氏 (おくい・としふみ)
1942年大阪府生まれ。65年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。75年より東南アジア市場の営業を担当し、80年トヨタ北京事務所の初代所長に就任。83年より中近東市場で営業担当。90年にハーレーダビッドソンジャパン入社、91年に同社社長に就任し、19年間に数々の施策を展開し日本での大型二輪市場でトップブランドに育て上げた。09年より現職。

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