リバークレイン 小川裕之氏
個人スポンサー募り海外参戦
学生時代にスタントライダーとして糧を得ていくことを決心し、2010年から17年まで8年間、海外の試合へ参戦をはじめた小川さん。17年には北米のバイクスタント競技で3位に表彰と、輝かしい成績を収めたのだが、参戦時はリバークレインに所属したまま〝実業団選手〟のようなポジションで活動をしていたという。
「知り合いからリバークレインの事を教えてもらい入社以降もプロのスタントライダーを目指すべく、日々スキルを磨いていたのですが、実は一度、退社を告げた時がありました。当時は会社と自宅、それにスタント競技を練習する場所までバイクでの往復を日課としており、競技者としてスキルを磨くことが出来る環境でした。しかし、ある日、会社から別場所への異動を命じられたことで、その日課が崩れて練習時間が取れなくなってしまうのと、海外へスポット参戦を続けていた状況だったこともあり、悩んだ結果、退社を決意したのです」と打ち明ける。
だが、直属の上司が社長へ掛け合ってくれて、社長と二人だけで話し合いを経た結果、会社に所属するアスリート選手のような社員〝実業団選手〟のカタチで雇用を続けてくれたという。以後、年に4~5回開催される海外の大会へ参戦のため毎日練習に励むことに。ちなみにリバークレインへ入社する前、信濃社長と会って面談していたことがあったことも明かす。
「スタントライダーとして活動するために当時、スポンサー向けの企画書を持って信濃社長へプレゼンテーションをするために会っているんですよ。会った時のことは良く覚えていて、緊張して全くしゃべれませんでしたね。でも、社長がちゃんと話しが出来るように言葉を引き出してくれて、最後は『お願いします、だろ!』と、言わせられました。まさか後日入社するとは思いませんでしたよ」と振り返る。そうして、12年からはリバークレインの所属選手として海外のスタント競技にフル参戦。競技車両にはWebikeのロゴをしっかり表示してきたことで、海外でもWebikeの名前をしっかり訴求してきたという。
しかし、所属選手という立場ではあるものの、渡航にかかる費用や車両の制作費など出費は膨大で、普段の給与だけでは賄えない。そこで一計を案じ、国内で開催されるイベントに招待され、スタントの演技を披露した後にマイクを借りて海外への参戦活動をPRしたという。
「その時に自分がデザインしたTシャツを買ってもらい個人スポンサーになって欲しいとお願いをしました。当時で一回のイベントで大体、100枚以上は買ってもらいましたね」と明かす。後年には、海外にも招待選手として呼ばれ、ギャラももらえるようになり最終的にはイベントの収入だけで遠征費を賄えるようになったという。
リバークレインに恩返ししたい
なお、費用についてはシビアな考えを常に持っていたそうで「プロである以上、持ち出しが多くなって赤字にならないようにしてました。赤字になった時点でゲームオーバー、参戦は不可と思ってましたから。なので、少しでも収支がプラスになるように計画してました」と話す。そうした活動を認めてくれた会社に小川さんは感謝しかないという。同時に、ベンチャー企業として会社が成長をしている様子を一社員として肌身で感じてきたと話す。
「入社当時はベンチャー企業として物流システムも発展途上。気合いと根性で仕事をするような会社でした。それから年々規模も大きくして物流センターも設置するようになり毎年、売上げを伸ばしてきました。創立から20年の2019年には、年商は100億円を超えました。定期的に『社長会』と呼ばれる社長の考えや心意を聞く機会があるのですが、経営者の言葉として琴線に触れる所も多く、社員ではあるけど、個人でライダー業を運営していることもあり、自分に置き換えられることも多々あり勉強になります。また、社員も英語が不得手な人が多かったけど、今は海外の取引先が数多くなってきたこともあり、意思の疎通が出来るレベルまで話す人も増えてきています」と述べ、社員一人一人の勢いに力を感じているという。
プロライダーとして方向性示したい
また、会社には二輪車を楽しむ文化が根付いているそうで、「社員の間でもロードレース部やオフロード部があり、プライベートではあるけどみんなガッツリ参加しています。社長も筑波サーキットで開催される旧車のレース〝テイスト・オブ・ツクバ〟に毎年、参戦してますよ」と説明する。
自身のスタント活動も一区切りを打ったという小川さんに今後について聞くと「会社にはこれまでの恩返しをしたいですね。動画作成をメインに業務を続けていくのですが、その一方で『プロライダー2.0』というコンセプトで、プロとして糧を得ているライダーたちに、動画で自分をプロデュースする方法を示していきたい。現役時代はスタントのプロライダーとしての定義を確立することが目標でしたが、今はSNSや動画サイトを駆使してセルフプロデュースが出来る時代。世界に向けて発信できることを見せていきたいです」と結んだ。(終わり)