東京都板橋区の二輪車販売店「ホンダキャピタルオート」は、『首都』や『中心地』を意味する
〝キャピタル〟を由来とし、お客さんが数多く集まる販売店でありたい思いが込められた、地域の人々に親しまれている店舗である。そこで代表を務める足立幸司氏は、店長として勤務していた会社を譲り受けてオーナーになった経営者だ。販売店の社長になって20数年、業界について最近強く抱いている思いがあるという。
画像: 「お客さんを育てるのは販売店の役割」

ホンダキャピタルオート 代表取締役 足立幸司氏

画像: 中央が代表の足立さん、右が下山幸雄さん、左が片柳正幸さん。3人とも「幸」が付くラッキーマン揃い

中央が代表の足立さん、右が下山幸雄さん、左が片柳正幸さん。3人とも「幸」が付くラッキーマン揃い

「来客あっての商売、小さな困りごとでもすぐに対応」

ホンダSF(サービスファクトリー)出身で、本田技研工業の狭山工場で自動車の製造などを経験したあと、従業員として今の会社へ入社。そこから二輪車人生が始まったという足立さん。ホンダキャピタルオートは以前、別の場所で営業しており1987年に現在の店舗へ移転と同時に店長へ就任したという。当地は東京都と埼玉県の都県境であり、台地と低地が入り組んだ地帯でもある。また、二輪車や自動車を使う人が多い特徴的なエリアでもある。今では同社とメーカー系の大型店のみが所存しているのだが、かつては二輪車販売店も数多く存在していた地域だという。

当時の様子を足立さんに聞くと「このあたりは坂道が多いので、原付一種を買うお客さんも多い。以前は二輪車販売店だけでも8店舗くらいあった」そうで、今でも当地ではホンダ車のシェアは高いとのこと。店長から代表取締役になったのは2000年で、会社のオーナーから事業譲渡で譲ってもらったというが、直後は資金繰りに悩まされたという。

「店長として会社と取引のあった金融機関とも繋がりを持てていたと思っていたのに、代表になった途端に融資をしてくれずに困ってしまった。どこにいっても融資が下りずに、あの時は本当に大変だった。でも、当時はバブルの時代で景気も良く、新車や中古車が数多く売れて、それにともなって整備する車両の回転も良く、それを会社の運転資金に回していた」と振り返る。

その後、実績を積んだことで融資も始まり売上げも伸びていき、20年以上オーナー兼店長兼販売スタッフ兼整備士として、今も現場で活躍している。現在はレンタル事業も忙しく、問い合わせも頻繁にあり毎週末は車両の空きがない状態が続いている。

「教習所が近いこともあり、卒業生がお客さんとしてよく来る。女性はやっぱり足付きの良さでレブル250を選ぶ子が多い。男性だとCB400スーパーフォア、年配の方にはCB1300SFだね」

画像: レンタルバイクはホンダ・CB1300SFからヤマハ・MT-07、カワサキ・ニンジャZX-25Rまで豊富に用意する

レンタルバイクはホンダ・CB1300SFからヤマハ・MT-07、カワサキ・ニンジャZX-25Rまで豊富に用意する

従業員として勤めていた頃から大事にしていることがあり、それは〝お客さんあっての商売〟だという。「人と人とのふれあいでこの商売は成り立っている。常連のお客さんが原付のオイル交換で来てくれるのだが、ピットで車両が立て込んでいてもすぐに対応するし、お客さんにも喜んでもらえる。なによりそれが嬉しい。仕事の原動力にもなっている。どんな小さな困りごとでも対応するよ」と話す。また、車両を預かるのは時間がかかってしまうので、極力預からないようにしており、飛び込みのお客さんも断らないという。

「そうした対応を続けることで、社員たちには手間をかけさせてしまうのだけれど、それがウチの商売」と続ける。

最近、特に気になっていることがあるという。「若い男女で車両をレンタルに来て、バイクの扱いに慣れた男の子が、初心者である女の子をツーリングへ連れて行くのだけど、不慣れな場所やいきなり遠方に連れて行くことで、転倒事故を起こして戻ってくることが少なくない。そうした場合は男の子がちゃんとエスコートしてあげるべきだよね。

ただ、そうした事が起きてしまうのは、我々バイク屋さんにも要因があると思う。初心者がバイクに慣れるために育てていくのは本来、バイク屋さんの役割だよ。以前は、初めての人向けのツーリングや講習会といったイベントへ頻繁に連れていくことで、常連さんになってもらうことができた。今はウチも人手が足りていないので、しっかり面倒を見られていないのもあるけど、それが出来ていないのは不本意ではあるよ」と打ち明ける。

「若い子が入りやすいように取り組まないと…」

人手不足は今に始まったことではないが、とりわけ整備士の不足は二輪も四輪も業界共通の問題だ。実はそのおかげで、店舗にも影響が出ていると足立さんはこぼす。

「近くの販売店では、整備士が足りず、タイヤ交換でも1~2カ月くらい待つことがあるようだ。その整備内容についても、定期点検やリコールなどが中心と聞いている。販売店の収益源でもあり、ノウハウともいうべきカスタムや修理についても、お客さんの予算や時間を勘案して、いくつかの例や修理方法を提案すると、相手も納得し満足してもらえるのだけど、メンテナンスやリコールばかりに対応していると、それらのノウハウも蓄積されない。

そうしたメンテ待ちや、愛車の相談対応に不満を持ったお客さんがウチへ依頼して来るので、予定していた作業がどんどんずれ込んでしまう。最近では付き合いのあるお客さんの応対やメンテを待たせてしまうことで、接客がおろそかになってきていることが、申し訳ない。さらに言うとメンテも診断機が必要になって、それの習得が必要で複雑化していく一方。人を増やせば良いと、仲間からは言われるけどそんな簡単に人は集まらない」と嘆息する。

「メーカーも店舗の営業政策などに関しては以前と比べると手を差し伸べているようにみえるけど……。組合(全国オートバイ協同組合連合会)も、販売店も、若い子たちが入りやすいように業界を挙げて取り組んでいかないといけない」と危機感を露わにする。AJ東京(東京オートバイ協同組合)の理事でもある、足立さんの業界を俯瞰した発言ではある。

そんな悩みを抱えている足立さんだが、最近は息子が仕事の手伝いにきてくれるといった明るい話題もある。「自分もバイクが好きで今までやってきた。なので『好きなことをやれ』とは言っている。息子は生まれも育ちも東京なので、日本の中心である東京ではなく海外へ行くと良い、とは言った。実際、少し前に海外へ留学していたのだけど、昨年、一時帰国した時にタイミング悪くコロナで海外への移動が出来なくなってしまった。今はウチでアルバイトをしているよ」という。

実は足立さんは店長時代、青年海外協力隊に応募をして受かったことがあったという。しかし、当時は仕事も忙しく自分が会社を辞めてしまうと会社にもお客さんにも迷惑を掛けてしまうと思い、断念した。そうしたことあったので、息子には好きなことをやらせてあげたいという思いがあるようだ。

「彼(息子)は日本でラグビーのW杯が開催していた時、会場で外国からの客を相手にビールの販売をしており、その時も英語で対応していた。ビールを沢山売っていたみたいだよ」と目を細める足立さん。自分も好きなことばかりやってきたけど、海外で働くことだけは叶わなかった――。その想いはきっと息子さんにも伝わっているに違いない。

画像: 「若い子が入りやすいように取り組まないと…」

◆ホンダキャピタルオート ▽所在地=東京都板橋区高島平1-84-1
▽営業時間=9時~19時
▽定休日=火曜日※月1回不定期の火・水連休有り
▽☎03・3550・0570
http://www.hondacapital.co.jp/

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