2021年は5,866台という過去最高の登録台数を記録したBMWモトラッド。その新たなかじ取り役に、BMWグループジャパン生え抜きの佐伯要氏が着任した。05年の入社後、四輪部門のカスタマーサポートや営業企画などの職務を経験し、21年12月1日付で二輪部門本部長に。いま二輪車業界でどのように活躍したいと考えているのだろうか。

学生時代はSR400でバイクライフを楽しんでいたという佐伯氏。BMW入社の経緯はインターンシップだった。

「大学で私は法律学を専攻していたのですが、その過程でリサイクル法立案に携わった方の授業を取っていました。ちょうどその頃、BMWでは同法に対応するプロジェクトを立ち上げており、インターンを募集していたんです」

そうした縁があり、インターンを経て05年に正社員となる。カスタマーサポート担当部署でリサイクル法対応に従事した後は、09年よりセールスやマーケティングの現場へ。やがてマネージャーとなり、カスタマーサポート、営業企画、商品企画と幅広い領域において昨年まで腕を振るった。

ここまでのキャリアは四輪事業であり、二輪事業は今回が初挑戦。「家族ができて私生活でも二輪車から離れていたけれど、大手を振って乗れるようになりましたよ」と笑う。BMWディーラーを訪れることはもちろん、他社のディーラーで試乗を楽しむことも。積極果敢だ。

「BMWグループにそういった文化が根付いているかもしれません。失敗してもいいから何かアクションを起こせ、という。必ずしも成功していなくとも、挑戦することが評価される文化があります」

そうしたマインドは、ディーラーに対しても期待されるのだろうか。

「いろんなことを意欲的に試していってくださると、マネジメント層からはありがたい存在と映ります」

もちろん一方的に期待するばかりでなく、BMWモトラッドとしてディーラートレーニングの充実化も図る。過去4年ほどは「メカニックとしての技術向上」のみならず「販売プロセスの改善」も重視してきた。例えばテコ入れしたいディーラーがあれば、二輪車業界に精通した契約トレーナーを派遣。顧客への対応法、満足度を上げるノウハウなど会得する機会を提供してきた。

イケイケドンドンで売るだけでなく、顧客からのクレーム案件など、見直しては対策を練るといった営みを、BMWモトラッド全体で積み上げてきた。そうした取り組みの結果として、21年には過去最高の登録台数5866台という数字がある。そして22年はいよいよ6000台達成を見据える。

「ただ、私としては6000台をゴールに位置付けてはいません。当然ながら通過点であるべきです。ここまで世界的な二輪ブランドがひしめく日本市場。まだまだポテンシャルはあるし、二輪車市場が熱い状況でグッと伸ばして息切れしてしまうのは不本意です。いつか現在の好況期が落ち着いたとしても、我々は成長あるいは維持していけるように、販売網も販売台数も、皆さまの満足度を下げることなく伸ばしていくことが私の使命かなと考えています」

目に見える数字や効率だけを追うことが成長への道ではない。その思いは、グループの思想に通じているようだ。BMW AGでは補修部品の保管期限を定めている。車体の生産が終了しても「一般部品は15年、一部装飾系の部品が10年」という。よりクラシックなモデルについても、BMWグループ クラシックというウェブサイト上に修理・認証を行う専用窓口が用意されている。

https://www.bmwgroup-classic.com

モーターサイクルショーではCE04への注目度が

今年3月には、二輪部門の本部長として初めて東京・大阪モーターサイクルショーに臨んだ。

「印象に残っているのはCE04の注目度です。来場者の注目もさることながらメディアの関心も非常に高く、世の中の電動化への興味の強さを垣間見た印象です。CE04が多くの新しいお客様に選んでいただけたら、うれしいなと思います」

画像: 東京モーターサイクルショーのプレスブリーフィング(フォトセッション)より。佐伯氏とCE04

東京モーターサイクルショーのプレスブリーフィング(フォトセッション)より。佐伯氏とCE04

佐伯氏自身、やはりCE04に大きな可能性があると感じている。

「スペックもデザインの質もすごく高いし、社会的な意義も含めて考えればなおさら選択肢として魅力的では。あとは駐輪・充電の環境さえ整えば……」

また、いますぐ実現できるものではないかもしれないが、と前置きした上で、全国のディーラーにおいて車検・修理時の代車としてユーザーに体感してもらえれば、よりチャンスは広がるのではないかと期待する。さらに言えば「BMWがバイクを造っていることをご存じない方々にも訴求していきたい」とも。

21年の販売台数を振り返ると、R1250GSアドベンチャー(本紙推定646台)、S1000RR(同497台)、R1250GS(同465台)がBMWの稼ぎ頭となっていた。加えてモーターサイクルショーでは前述のCE04に加え、1800ccのボクサーエンジンを搭載したクルーザー「R18」シリーズ、1600ccの直列6気筒エンジンを持つツアラー「K1600」シリーズにも数多くの人たちが触れて乗っていた。

「普通自動二輪免許やAT限定普通自動二輪免許で乗ることができるモデルも含め、フルラインアップをそろえていることがBMWの強み」

大型・普通自動二輪免許の取得費用を一部サポートする、新ライセンス・サポート・プログラムの利用も促進し、モデル層の厚さを活かしていきたいと佐伯氏は語る。

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