本紙4月29日付で既報のとおり、MOTUL Japan㈱では、日本独自企画として「MOTULタンク・マネジメント・システム(MTMS)」を展開している。パートナー企業である京都市の㈱FUKUDAのオイル・マネジメント・システムをベースとしつつ、中小企業庁の「ものづくり補助金」交付を受けて完成させたMTMS。他国への展開も視野に入れており、実際にタイなどアジア各国のMOTUL輸入元から問い合わせが届き始めているという。このシステムはどのような思考から生まれ、どんな効果が期待できるものなのか。MOTUL Japan、FUKUDA両社に聞いた。

画像: MOTULタンク・マネジメント・システムについて語るMOTUL Japanのパートナー企業・FUKUDAの福田喜之社長

MOTULタンク・マネジメント・システムについて語るMOTUL Japanのパートナー企業・FUKUDAの福田喜之社長

創業53年目のFUKUDAは、近畿地方2府4県で潤滑油の卸売り販売を展開してきた。MOTULとの付き合いも長く、日本上陸以来約40年にわたるという。「液体配送システム」として既に特許も取得しているオイル・マネジメント・システムを手掛けた動機について、同社の福田喜之社長はこう語る。

「エンジンオイルは消耗品であり、必需品。現場で使い切ってしまってから『すぐに持ってきて』とご発注いただくよりは、お客様のところ(販売店等)に何リットル残っているか、我々が把握できているのがお互いにとって効率的」

従来FUKUDAのスタイルは顧客に在庫を持たせず、自らの在庫から量り売りするもの。顧客が使った分だけ補充・請求していく。オイル・マネジメント・システムでは、顧客のもとをFUKUDAの営業担当者が訪れ残量確認することなく、把握できる。顧客側はオイル切れを気にすることなく整備作業や販売に専念でき、FUKUDAとしても営業業務を効率化し、ひいては余暇を生み出す。働き方改革だ。

「そのために地元の京都商工会議所、京都府、京都市、さらには近畿経済産業局の支援を得て、お客様の在庫量を把握できるオイルマネジメントシステムを構築した」

ここでFUKUDAが得た気づきは二つ。

①まず自社事業に使える補助金があると知ること自体が、大きなアドバンテージになる。

②公的な補助金が交付されることで「国や自治体の補助金が付いている事業」としてお客様の信頼を得られる。

同社はこれまで他の案件を含む4件の交付を受けている。そのぶん申請に関するノウハウも蓄積されており、MOTUL Japanが同社のシステムを導入する際にも活きているのだ。笠原大佑マーケティングディレクターは振り返る。

「システム導入の話が具体化したのは2020年9月。取引銀行傘下のコンサルティング会社からも『ものづくり補助金を活用しては』と勧められており、チャレンジすることに。とはいえ正直なところ申請書類の作成には苦労した」

画像: MOTUL Japanの笠原大佑マーケティングディレクター

MOTUL Japanの笠原大佑マーケティングディレクター

申請にあたっては、例えば250もの販売店等に設置したオイルタンクの詳細情報なども求められた。窓口となるものづくり補助金事務局サポートセンターとしても、大規模な施設や装置を手掛ける案件はあっても小規模施設を多数チェックするというケースは初めて。戸惑い、混乱も生じたという。FUKUDAを通じ、京都の職員から助言してもらう一幕もあった。20年から準備を進め、正式に交付が決まったのは22年4月だ。

「弊社社員が奔走したことはもちろん、施設の撮影などお客様にもご協力いただいた。思った以上に四苦八苦したが、こうした前例のないケースに補助金が交付されるということは意義ある一歩。同じように『補助金さえあれば』と考えていらっしゃる企業様の参考になれば」(MOTUL Japan・笠原氏)

一方、FUKUDA側としても克服すべき課題はあった。MTMSでは様々な人がシステムに触れることになるため、セキュリティ面で複雑な設定管理が必要となった。

「MTMSの要件は、MOTUL Japan様だけがお客様のオイル残量を把握できれば良いというものではない。利用するお客様がチェーン展開している場合など《運用本部》と《各店舗》それぞれのアクセス権限を用意し、付与しなければいけなかった。そこがFUKUDAのシステムよりも複雑ではあった」

福田社長はそう振り返る。ただ、これは「ありがたいチャンス」でもあったという。近畿地方だけで運用していたシステムを全国展開するきっかけとなり、また社外にソリューションを提供する道が開けたのである。

「今後はどの地域の、どんなお店で、何月にどれだけ減るのか。そういったデータを活用する方法をMOTUL Japan様と共に検討していきたい。オイルという重いものを、いかに効率よく、適時に供給するか。潤滑油業界が生き残るカギでもあるし、同時にお客様の効率化、二輪車・四輪車業界全体としてのSDGsにつながっていく」(福田社長)

2022年9月現在、MTMSの導入は全国の二輪車販売店や整備工場など250拠点で進められている。MOTUL Japanとしては、これを「2024年を目処とし500拠点に提供したい」という。そしてまたFUKUDAとのタッグで、より最適なものを最適なタイミングで供給するためのコミュニケーションツールも練り上げていきたいとも。
「システムは運用してみて初めて見える部分もあるが、FUKUDA様とは近い距離でスピーディーに開発を進めていける関係が出来上がっている。これを活かし、プロダクトとサービス両方を提供できる会社としてお客様の要望に寄り添っていきたい。そして引き続き業界発展に寄与していければ」

MOTUL Japan営業部の筧法仁ディレクターはそう語る。

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