ヤル気がある社員は大歓迎ですが、張り切りすぎてトラクションがかからないことはしばしば。他のスタッフとの調和力も欠かせません。
ちなみに、ある業界大手のA社とB社の入社試験の面接事例を挙げてみます。
ドアをノックして面接室に入ったらダークスーツで決めた男性面接官が5名。端から順番に質問を出して、的確に返答し、その圧力に耐えうる人のみ入社できるのか、という感じのA社。
一方のB社は真逆。ノックしたらドアの向こうから気軽に「どーぞ!中に入って?」という声。気さくな男性1名が面接官。ありがちな緊張状態をほぐして、人となりをちゃんと把握しようという手法。
バイクという趣味の世界。緊張はむしろ敵でもあるわけですが、ここではあえてA社とB社の両方を、というのが私なりの提案です。もちろんネクタイをビシッと締めて対話し、次はスーツ姿ではない普段着で、ありのままをお互いに見せ合う。
忙しいのにそんなことできるか!とお叱りを受けるかもしれませんが、時間と費用のロスを考えたらむしろ効率が良いかもしれません。
コミュニケーションを取れるスタッフこそが財産
効率といえば、面接の前か後でもよいから、作文を書かせます。「もしもこの会社に入ったら、何をやりたいか」というテーマが効率を生むかもしれません。明確に意思を言えることこそ大切。そして具体的なビジョンを文字化することで、入社後のやる気維持に有効利用できるかもしれません。
入社希望者を不採用にする場合でも、丁寧なお礼文で返信すれば会社イメージは決して悪くならないでしょうし、個人個人を大切にしているという誠意がきちんと伝わるかもしれません。つまり、新たな顧客になるかもしれないのです。
しかもその作文は、社外からの声として販売店を経営する上で貴重なヒントが、たくさん詰まっているかもしれません。
新しいスタッフ、あるいは入社に縁がなかった人、いずれもその先まで大事です。
学歴や学力などでの、とりあえず選定よりも、将来に向けてコミュニケーションがいつも自由に取れるスタッフこそ社の財産。風通しの良い社風作りという意味でも、人材確保はとどのつまりこれからも「人と人とのつながり。心のつながり」に尽きると思います。
プロフィール
柏 秀樹(かしわ・ひでき)
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。