56Designと価値観が一緒
我々のやろうとしていることと合致する
──コロナ禍もあり海外渡航もままならなかったと思います。何年ぶりの来日となりますか。
リゴリオCEO 56Designとのコラボレーションを始めた2017年10月以来、5年半ぶりです。
──今回は東京モーターサイクルショー会場でインタビューの機会をいただきました。日本でのショーは初めてかと思われますが、ご感想は。
リゴリオCEO メーカーのブースでもXSR900などレトロなデザインのバイクに人が集まっていますよね。欧州ではもっと新しいデザインのネイキッドバイクが人気を得ているように感じますが、3
〜4年後にはネオレトロの潮流が来るかもしれません。気配はあります。
──リゾマ製品について言えば、日本での売れ筋はイタリアと異なりますか。
リゴリオCEO とても近い印象です。もちろん別の市場であり違いは存在するのですが、ライダーの好むデザインが似ているところはあるのでは。これが例えばアメリカだと全く違う傾向があります。
──日本での代理店56Designとの連携はスムーズでしょうか。
リゴリオCEO 価値観が一緒なので、実にやりやすいです。デザインへのこだわりがあり、我々がやろうとしていることと合致するところが多い。まるで同じ会社であるかのようです。
──息の合うパートナーと協業できるのは頼もしいですね。リゴリオCEOご自身についてもお聞かせください。過去一番好きなデザインのバイクといえば?
リゴリオCEO ははは。どれも良いところがあります。イタリアのベスパにも、日本のヤマハにも。立場上遠慮しているわけではありませんが、それぞれに好きな製品があります。
──リゴリオCEOが二輪車の仕事に携わった経緯は何でしょうか。
リゴリオCEO 何事もそうだと思うのですが、期せずして自分の中から生まれ出ることがあります。私の場合は、ミラーを創作したことがきっかけでした。たまたま友人の依頼を受けてミラーを作ったことが始まりです。それまでデザインを学んでいましたし、オフロードのレースなどしていたのですけれど。思えば01年にそのミラーを作ったことが、現在あるリゾマ社のスタートでした。
──偶然受けた依頼が道を決めたのですね。それから生み出してきた製品の中で、最も思い入れのあるものといえば?
リゴリオCEO やはり最初に作ったミラーかな。その時、誰も持っていないようなモノを作りたいと思ったのです。女性の靴のようなものを作ってやろうと。
──やはりアルミ製でしたか?
リゴリオCEO もちろん、アルミ削り出しです。とても高価なものになりました。最初の顧客となった友人に値段を言ったら『高過ぎる!』と。それも片方の値段だと言ったら二度驚いていましたよ。もっとも今となっても製品価格は大きく変わっていませんが。
物事を注意深く見聞きすることが創作の源泉
模倣しきれぬ何か生み出したい
──今後新たに作ってみたいものはありますか。
リゴリオCEO モーターサイクルのパーツ作りについてはノウハウも蓄積され、概ね何でも出来るようになってきました。今度はその技術を生かして何かライダーのためになるものを創出できれば、という思いはあります。
──アルミ造形技術がどのように転用されるか、非常に楽しみです。いま世にある製品の中で、リゴリオCEOの琴線に触れたもの、デザイン哲学を共鳴させたものといえば何でしょう。
リゴリオCEO はは、これは難しい質問。例えばダイソンのモノづくりには驚きがあります。掃除機という生活家電にインテリアデザインの要素を盛り込んでしまったのだから。以前は掃除機というものは、物置に隠しておくものだったでしょう。
──なるほど、在り方を変えてしまったと。そうした視点から日々インスピレーションを得ているのでしょうか。
リゴリオCEO インスピレーションね、どうでしょう……。確かに私は物事を聞き取る力、見聞きした物事から感じ取る力に恵まれているのかもしれません。
──見聞きした物事から何かを得る、いわばセンスでしょうか。
リゴリオCEO 例えば日本に来て桜を見ることもその一つ。人の行動でもいいでしょう。注意深く見聞きしていると、思わぬ素材に出合うことがあります。それらをシェフのように選び、何かを作り上げる。そこにインスピレーションが発揮されるのだと思います。
──ライバル視する存在はありますか。
リゴリオCEO ライバルとは少し違うかもしれないけれど、優れた製品を作る企業は多くあります。モーターサイクル関連に限らず。やはり優れた製品から刺激を受けるとモチベーションが上がるものです。いいものを生み出すとすぐ模倣品が出てくる。ただしそのソウル(魂)はコピーできるものではありませんよね。自分の夢としては、いくらコピーしても追い付けないような何か。そんなものづくりを目指したいと考えています。