2021年に群馬県北軽井沢周辺をレンタルバイクで巡る女性限定の「公道デビューツアー」が誕生。旅行会社が販売した1泊2日のツアーで、今も定期的に開催される人気のツアーとなっている。それを企画したのが、モトツアーズジャパン。社長の原田美和さんは23年1月に就任したばかりなのだが、スタッフの体験がきっかけでツアーを生み出したという。そのきっかけとは。

モトツアーズジャパン 取締役社長 原田美和さん

画像: 二輪車業界のキャリアも長い原田さん

二輪車業界のキャリアも長い原田さん

女性限定のツアーとして販売された『公道デビュー応援ツアーin北軽井沢』は、2021年10月に群馬県の北軽井沢を拠点に、周辺を巡る宿泊込みの旅行プランとして初開催された。当日は女性9名が参加し、初心者やリターンライダーを対象にしたこともあり、二輪免許を取ったばかりの人や『20年ぶりにバイクに乗ります』(当時の参加者の声)という人が集まったという。

ツアーを企画・販売した旅行会社のモトツアーズジャパンは、レンタル819やドゥカティ販売店を抱えるKIZUKIグループの1社で、使用する車両はレンタル819で女性ライダーにも人気の足つきのよいモデルを用意。コンテンツも観光周遊のほか参加体験型のモノもあり、趣向を凝らした内容となっている。

「学生時代は二輪車に対して良いイメージは持ってなかったんです」と話す同社社長の原田さん。かつて10年以上勤務していた輸入二輪車メーカーでは、二輪専門誌やジャーナリストへの対応に当時は苦労していたと打ち明ける。

「車両の技術説明や開発経緯など専門誌の方や二輪ジャーナリストとやり取りするのに苦手意識があり、試乗会を開催していた時は毎回ドキドキしていました。また、バイクの乗り方も社内に体育会系の人がいて、ハードに教えられていました。なので、乗る方もちょっと……」と苦笑する。

そうした二輪車への苦手意識の克服で生み出されたツアーなのかと思いきや、きっかけは上長からの“おもてなし力”に満ちたツーリングや、スタッフの“初心者をもっと大切にしたい”という、熱い思いによるものだったという。

女性ライダーにとって嬉しいツアーを企画

おもてなしツーリングは遡ること4年前の6月、北海道への社内ツーリングだったという。プランを企画したのはよいが、参加者は全員女性でツーリングの経験がある人も少なく不安があったそう。それを傍らで見ていたKIZUKIグループの松崎一成代表が「僕も一緒に行こう」と、同行することになった。

特に道中で懸念していたのが、目的地への道案内や立ち寄り地の駐輪場へ停めた後に行う車両の転回など。そこで、松崎氏が先導して案内したほか、車両の転回が不慣れな人に代わり行っていたという。「なんだかその様子に執事みたいだなと感じました」と笑顔で振り返る。その後、参加者のガソリンが足りなくなりそうだと気づくと、夜間にもかかわらず数十㌔離れた給油所まで燃料補給に向かうなど、本当に執事のようだったと話す。

当時の松崎氏のサポートについて“女性だから”行動していたわけではないと原田さんは言う。「松崎はホンダの販売店で事業をスタートした当時から、初めてバイクに乗るお客様に操作方法や乗り方などを教えていたそうです。わからなくて困っている人には教えてあげる。そういうことを当たり前にすることって中々できることじゃないと思います」と説明する。

その哲学はスタッフにも受け継がれているが、それは社外ではなく、社内にも向けられている。“初心者の女性ライダーでも、もっと楽しくバイクに乗ってほしい”というスタッフの熱い思いをモトツアーズジャパンでサポートをすること。それが、公道デビュー応援ツアー最大のきっかけだったという。

さらに“女性がやって嬉しかったこと”もヒントにした。「参加者に安心を提供するのはもちろんですが、女性ライダーにとって嬉しいツーリングやツアーに需要がある」と想定し、プランを勢いづかせた。

おかげで『公道デビュー応援ツアーin北軽井沢』は“女性に優しいツアー”へ。女性が苦手としている状況をサポートするべく、先導を務めるアテンダント車が常に帯同し、初めて走る道でも不安のないツアーとなっている。また、手荷物を身につけて乗車するのも、初心者にとっては煩わしいもの。サポートカーに積んで、滞在先でそのつど荷物の受け取りが可能に。さらに、観光地への訪問や地元の名物を味わうだけではなく、朝ヨガなど体験企画もあり、充実したコンテンツとなっている。

画像: デビューツアーでは参加者を丁寧にレクチャーする(写真提供:モトツアーズジャパン)

デビューツアーでは参加者を丁寧にレクチャーする(写真提供:モトツアーズジャパン)

一方、ツアー終了後には嬉しい出来事もあったという。「参加した皆さん、絆が深まるんです。最初は自己紹介から始まり、よそよそしい雰囲気だったのが2人から3人と、話をする人が増えて最後は、皆さんに一体感が出てくるんです。直近でもツアーを開催したのですが、遠方から再び参加してくれた方もいたんですよ」と破顔する。

最近ではホンダの二輪販売会社である、ホンダモーターサイクルジャパン(HMJ)と協業した「HondaGO 女性限定公道デビュー応援ツアー」も販売した。同ツアーでは同社代表取締役の室岡克博社長もレブル250で同行したという。ツアー中、雨が降る場面があったのだが、参加者と一緒にレインスーツを着用してツーリングを楽しみ車両を転回するのを手伝うなど、販社の社長としてユーザーから直接得るものも多かったという。

「3月に開催した東京モーターサイクルショーで弊社はブースを出展し、会期中に室岡社長を招いて当時を振り返りながらトークショーを開催しました。室岡社長は『とにかく楽しかった。ツアーの手応えを感じた』と、振り返っていただきました」と話す。なお、HMJとは女性以外にも、男性のリターンライダーに向けた協業ツアーを実施している。

画像: 今春開催した東京モーターサイクルショーでブースを出展。会期中に室岡社長(右)とトークショーを開催した

今春開催した東京モーターサイクルショーでブースを出展。会期中に室岡社長(右)とトークショーを開催した

今では、公道デビュー応援ツアーだけでこれまでに110人が参加。女性の初心者ライダーに特化したツアーにもかかわらず大勢の人が利用している。一方、海外からの旅行者に向けたツアーもあり、1カ月滞在して全国各地を巡るプランを用意しているという。

「日本には春夏秋冬の四季がハッキリと体感・体験できます。そこが海外からの旅行者に人気のようです。ガイドが同行するツアーや宿泊先だけこちらで手配して、各地を訪問しながら日本を縦断できるようなプランもあります」と説明する。ただ、ツアーの問い合わせや参加者が増えて、運営で困っている事態だと吐露する。

同行してくれるスタッフを増やしたい

「アテンドするスタッフの数が足りなくて困っているんです。今、アテンドスタッフの資格制度を立ち上げている最中です。資格を取得することで一定のスキルがあることを証明することが出来ます。バイクの楽しさを伝えるだけでなく、接客が出来て細かいところにも気が付く。何より参加者に楽しんでもらおうという気持ちのある人がいいです」と、スタッフを募る。

「大勢の人にバイクの楽しさを伝えたいです。それにはツアーを通して知ってもらうことが最適な手段のひとつです」と、続ける原田さん。社内でおもてなしを体験し、スタッフの気持ちに応えたことで、今では大勢の笑顔をツアーで生み出しているのだ。

◆モトツアーズジャパン=https://www.mototoursjapan.com/ja.html

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