常連さんがバイクを新しく乗り換えてくれる場合は、店から多くの説明は不要かもしれませんね。しかし、初めて来店され、初めてバイクに乗ろうとするまさに完全初心者やリターンライダーは、かなりの緊張状態だと思います。

最適なアドバイスで、お客様の満足度を上げる

しかも、ライディングテクニックだけではなくウエア選びやバイクの基本整備についても、何からどうやれば良いか分からず、大きな不安をお持ちです。もちろん大型バイクを手に入れたばかりの大型二輪免許取得済みのライダーでも、バイクを扱う能力格差は非常に大きいです。ですから、近距離を走るだけで一気に疲れるのが普通。ショップとしてはそんなお客様をできるだけケアしてあげたいところですね。

ところがです。そんなお客様にはバイク仲間がいる場合もありますが、これが実にいろいろなのです。ライテクに関すること、装備に関すること。初心者にしてみれば実にありがたいと思う場合もあるにはあるのですが、逆にトラブルの原因になる場合もあります。

実際に遭遇した例を挙げますと、1000ccのスーパースポーツを買われたお客様が、ブランド品の前後サスやブレーキ、人気の社外マフラーほか、総額3桁万円以上の改造費を投入。友人のアドバイスでそこまでやったのはいいのですが、その方はUターンはおろか、スムーズな発進や停止さえ怪しい状態でした。改造しなければならないのは、まず運転技術ですね。

ここ数年盛り上がりを見せているオフロード系もこんなことがありました。サスペンションはこれ、タイヤはこれなどと、当の本人は何も知らずに仲間に勧められるままに人気のパーツを取り付けたのです。仕上がったバイクを見たら、あらビックリ。エンデューロバイクかトライアルバイクか、あるいは大型リアキャリアをセットしてツーリングバイクにしたかったのか、ありとあらゆるものをセットしているわけのわからない1台が出来上がっていました。

後日オーナーに聞いてみたところ、純粋にトコトコと林道ツーリングをしたいだけだったのです。

さらに怖いのは素人のライテク伝授。フロントを使うと危ないからといってリアブレーキだけでいい、という教え方をしたり、ワインディングでスピードを上げて引っ張ったり、獣道へ連れて行って崖から落としてしまったり。

具体的に危険な場所やタイミングを教えて、そのための必要な技術を伝授する、という当たり前なことは簡単そうで難しい行為です。飛ばすだけのライダーが行うライテクアドバイスは、気持ちはわかりますが、実はやってはならないNG行為だと思います。

本人が望むのは何か。バイクを売るだけではなく、お客様の満足度を上げるのに最適なアドバイスとは何か。慎重に事を進めていきたいですね。

プロフィール

柏 秀樹(かしわ・ひでき) 
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。

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